メルヘン【ロクソドンタブラック×TACT/FEST】121205
2012年12月05日 ロクソドンタブラック
柿喰う客の七味まゆ味さんの一人芝居。
グリム童話の千色皮という話を脚色しているみたいです。
観終えてから、原作を調べてみましたが、かなりの脚色。基本設定だけ残して、完全に七味さんワールドに変えているみたいです。
何とも楽しい60分。
遊園地のアトラクションみたいに、数々の工夫された演出があります。
観劇というかは、本当に一つのアトラクションだと思って、ロクソに楽しい気持ちで入場して、夢の世界に連れて行ってもらえばいい感じです。
(以下、あらすじ、演出がネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は金曜日まで。とても楽しい作品なので気軽に足を運ぶといいと思います)
舞台には10段ぐらいの脚立が二つ。
そして、少し低めの7段ぐらいの脚立。
低めの方を役者さんが色々と動かして、あらゆる場面を創り出していきます。
城の最上階から、地下室。山、森、海・・・
客席奥から七味さん登場。
全身黒色、黒色のフードをかぶり、黒ずきんちゃんみたいな感じ。
この時点では、これが何者かは分かりません。最後に分かる仕掛け。
芝居中はストーリーテラーの役割をしているみたいです。
客の誰かから喉が渇いたとか言って、ペットボトルを一口もらったりして、すっかり客席もこの世界に巻き込まれてしまいます。同時に、飲食禁止、携帯切ってなんていう前説につなげたりするところが、本当に遊園地のアトラクションっぽい。
話が始まります。
みんなで目を7秒つぶって、目を開けてみれば、そこには王女様が。
と言っても、黒いフードを裏返すとちょっと赤くなっていて、それを羽織っただけなのですが。
心の目ということです。
王女様はまだ10歳。
いたずら大好きのおてんば娘。
俺様にかかればなんて言いながら、わがまま放題で毎日楽しんでいるみたい。
幽霊嫌いの兵隊1を驚かせて腰を抜かさせ、ニンジン嫌いの兵隊2には無理やり食べさせて嘔吐させる。虫嫌いの兵隊3には、虫をぶつけて失神させる。兵隊たちもたまった話ではありません。
ちなみに兵隊4は客が担当します。多分、本当は何かネタがあっていじくるのでしょう。何か私がそれになってしまったので、いじらん方が良さそうだと勘が働いたのか、軽くスルーしてくださったみたいですね。
王女のいたずらは兵隊だけに止まりません。
動物や虫まで。
アリンコの道を邪魔したりする、子供らしい規模の小さい嫌がらせなんかも。
触角を抜かれてしまうアリなんかもいます。
明日は王女様の誕生日。
王様からサプライズプレゼントがあるらしいです。
威厳たっぷりに王様からその発表が。
実はこの国の王妃様は亡くなってしまっています。
再婚は、自分と同じくらいに美しい人とするようにと遺言を残しています。
その王様が再婚を決めたというのです。
ということは、サプライズは新しいお母さん。
ワクワクする王女様の前には鏡が。
自分。
えっ、王様の再婚相手は私なの。
グリム童話の裏の一面、近親相姦ですね。
当然、嫌がる王女様。
でも、王様はそれを許さず、王女様を牢獄へ。
何とかしないといけない王女様。
考えた結果、自分と分からなくなるように獣の皮で身を包むことを決意します。
ここもグリム童話らしい、変身ですね。
早速、獣たちから少しずつ皮をいただかなくてはいけません。
冒険の始まりです。
まずはネズミ。子だくさんのネズミ。子供たちの面倒を見る代わりにという約束で毛皮をゲット。
ネズミの子供は全部で10匹。これも、客が担当です。
それぞれに王女様即席で創った子守唄を披露するという形をとります。
ネズミ色の帽子が舞台奥からスルッと出てきて、それをかぶります。
次はカラス。クールでキザなカラス。彼からは黒い羽根を。この回は、それがトラブルで出てきませんでした。残念。本当は腕に何か付ける予定だったのでしょう。
さらにライオン。臆病で腹の底からガオーって言えない気弱なライオン。気合いだとばかりに、吠え声の練習を王女様はさせます。ちなみに、ここも客が全員で吠え声を練習させられます。
どこかからえりまきが飛んできて、それを身につける。
お次は蜘蛛。貴婦人の蜘蛛。紡ぎだされる糸から出来た蜘蛛の巣はまさに芸術品。
蜘蛛からはネット。膝に付けるサポーターみたいな物をゲット。
今度は魚。銀色にきらめく魚。もうムニエルにしたり刺身にしたりしないと約束して、綺麗なスパンコールの付いた腰巻をいただく。
ヤギの角、フクロウの目、ウサギの耳、象の鼻・・・
どこからどう見ても王女様だと思われない変身が完成。
でも、王女様、捕らえられて再び牢獄へ。
そりゃあ、そうでしょう。
化け物ですもの。
必死に自分は王女様だと言っても、聞き入れてもらえません。
この化け物め。きっと王女様を食べたに違いないなんて言われて。
すっかり困り果てた王女様。
ふと気付くと、アリ。
昔、触角を抜いたアリが歩いています。
彼が言うには、実はこの国、危険が迫っているらしい。
七つの馬車がやって来て、国を滅ぼそうとしているとか。
竜巻、黴菌、洪水、毒霧、地震、隕石。一つ、思い出せない・・・
そう言えば、王女様は獣の皮を纏っているので、獣の本能なのか、さっきから何か胸騒ぎがしている。
きっと嘘ではないのでしょう。
どうにかここから出て、国を守らないと。
アリは、自分と結婚しくれたら、ここを脱出する知恵を授けると言ってきます。
この緊急時にプロポーズという何というKY。
でも、背に腹を変えられない王女様はそれを了承。
アリは夜、王様の寝室に潜り込み、仮装パーティーを開けと囁きます。
民や獣、そして牢獄の化け物も参加させろと。
そうすれば、王女様も戻ってくると。
仮装パーティーなら、王女様も怪しまれずに参加することが出来ます。
アリにしてはなかなか賢いことを言います。
仮装パーティーが始まります。
外では何か不穏な空気。
七つの馬車がやって来ているのでしょう。
誰も気付いていません。
いや、王様は気付いているみたいです。
さすがは王様。実は全てお見通しだったのかもしれません。
王女様は、願います。
いたずらし放題で、みんなに迷惑かけていたけど、みんなのことが大好き。
この国を守りたい。民、獣いとわず、みんな。
みんなを包み込んで守れるような物が欲しい。そう、例えばカンガルーの袋のような。
舞台前面下に仕込まれた白い布を引っ張り出すと、大きい布が舞台を覆います。
災難からみんなを守る王女様。
七つの馬車は過ぎ去り、国は守られたみたいです。
倒れ込む王女様。獣の皮は、全部取れてしまいました。
隣にはアリが。
このアリのおかげで救われた。
でも、結婚は出来るのだろうか。こんな大きさに違いあるから。
でも、大丈夫。自分が獣になったように、アリも人間の姿にしてあげればいい。
そんなこんなで、人間の姿になったアリ。
王女様の誕生日パーティーでこうして二人踊れるようになりました。
七味さんの舞台での魅力はもちろんなのですが、話としてもとても面白いですね。
色々な動物達と出会って、変身していく様は、どうなるのかなあなんて話の先が知りたくなって食いついて観てしまいます。
絵本だったら、きっとワクワクしながらページをめくるなんてことになるのでしょう。
わがまま王女様の大冒険。そして、同時にちょっとした成長物語。
何とも心温まる、素敵な童話が舞台作品として仕上がっているようでした。
にしても、この方の人の惹きつけ方は凄い。
とても素敵な60分でした。
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