« MISSION_101【関西大学劇団万絵巻】121216 | トップページ | JUKE BOX【ThE 2VS2】121216 »

2012年12月17日 (月)

SWORD OF SPIRITS【STAR★JACKS】121216

2012年12月16日 HEP HALL

王道の殺陣エンターテイメント。
それに加え、男、女問わず、時代の流れで揺れ動く人の姿も丁寧に描いている。
その中で、人の美学を追及しているような作品。
本当の幸せとは。それを迎えるために私たちはどんな信念を持たなくてはいけないのか。
なんてことを考えるような話でした。

江戸時代後期、常陸牛久辺藩。
前藩主亡き後、心優しき国を想う熱い気持ちを秘める名君、稲葉正親の下、より良い国造りが進められようとしている。
身よりの無い者など、身分関係無しに、国に引き入れ、剣の道場で修業をさせる。
そんな剣客集団は、御供番剣士衆と呼ばれ、自らの命を剣に代えて、正親を守る。
その中でも最強と謳われる三人の男。
ただひたすらに剣の道を究める窪田信吾、大胆でまっすぐに突き進む乾八郎、冷静沈着に巧みな戦略を頭に描くことが出来る片岡源五右衛門。

もう直に、正式に藩主として跡を継ぐ。
正室、伊予の方はご懐妊。
剣客衆はじめ、多くの者は正親を慕っている。
固い絆で結ばれた国造り。全てが順調に思えた。
しかし、正親は一発の銃弾に倒れる。

正親の双子の弟、正英が藩主となる。
城から、正親と関わる者を全て追放する。剣客衆はもちろん、伊予の方までも。
その代わりに、城に入って来たのは、側室だった妙連院と一緒に連れられた菱屋という大商人。
正英は、暴政を尽くし、日本を手中に収めるような野望を持つ。
そのために、兄の世継ぎとなり得る懐妊した伊予の方の命を狙う。

剣客衆たちは、旅籠屋に身を寄せる。
追手は迫る。剣客衆の中に裏切り者もいるみたいだ。孤軍奮闘。再起はもはや無理かもしれない。
そこに窪田を慕ってやって来た若き青年、跡部謙二郎。
彼のまっすぐな剣への想いに、もう一度、立ち上がることを決意する。
正親に剣の代わりに預けた命。
己の命を懸けた剣を手に、大いなる敵に向かっていく・・・

ここまででだいたい90分強ぐらい。
もちろん、ここに至るまでも何度も観れはするのですが、残りの30分弱が、この劇団お得意の殺陣が最高に盛り上がるところ。
あまりにもかっこ良過ぎるストイックな剣の道オーラを発散する窪田、浜口望海さん。
巨体に大刀を振り回しながらも細かな繊細な動きで魅せる乾、石田龍昇さん。
キレのある俊敏な動きで舞台を飛び回る正英、ドヰタイジさん。
渋い、渋過ぎる、大人の魅力、片岡、松木賢三さん。
若さ溢れる中、真摯な想いを滲みだして、男を魅せる跡部、銭山伊織さん。
自劇団の鍛練の成果か、めまぐるしいスピードで縦横無尽に剣を振るう、剣客衆の裏切り者、竹村晋太郎さん(劇団壱劇屋)。
同じく、自劇団でお得意とする美しい殺陣エンタメの魅力を発揮する焼酎ステラさん(劇団ZTON)。
・・・
これを待ってたんだよと、興奮冷めやらぬ舞台が繰り広げられます。

前半の90分では、この時代の様々な人の想いが綴られるエピソードが散りばめられ、ラストの戦いにおいて、各々の心に秘めた想いを感じさせるようになっています。
男の忠義。心通わす女への純粋な想い。過去、愛した女を守れなかった悔い。
強い男への嫉妬。虐げられてきた男の蓄積し続ける憎しみ。
時代の中、必死に生きる飯盛り女たち。人情を打消し、シビアに世を見つめて生きる姿。
数々の描かれる想いが、なぜ剣を手にして、それを人に向けなくてはいけないのかという単純な質問に答えを出しているようです。
私たちは戦う。それは大義名分、何かを守る。いや、己の真の想いを魂込めて証明したいのだというばかりに。

ラストは正親は幽閉されていただけだったので、また復帰して、新たな国造りを皆と共に進めるというハッピーエンド。
ただ、そこには、こんな時代の中で、必死に生きながらも、虐げられ、その命を失わざるを得ない者がいた。本当の幸せな国造りとは何なのかを身をもって体験した正親はじめ剣客衆たちが、より良き未来を見つめていることを感じさせます。

剣客衆の中には、窪田の強さに嫉妬して裏切り、剣を向ける者がいます。
彼は国造りがどうとかではなく、男のプライドを優先させているようです。どうしてもけじめを付けたかったのでしょう。
これに対して、正英は正親を殺さなかったんですよね。彼の憎しみは兄では無かったのでしょう。
自分を虐げた社会だったのかな。だから、これを崩壊すればそれで良かった。
仮に、正親ともっと顔を突き合わせ、一緒に社会を変えていくという建設的な道の選択もあったのかもしれませんが、現実はそうはいかなかった。
人の憎しみは、必ずと言っていいほど、破壊的な行動を生み出しますからね。
話だけを追ってみると単純には正親派と正英派が戦い合っているだけなのですが、その登場人物を見回すと実に各々の意志は異なり、目的は同じでもその目指す道が異なっているように感じます。
そうなると、目的達成された後に、またバラバラになるのは目に見えており、そんなことの繰り返しが、いつまでたっても世の中は良くはならないことを意味しているのかなと。
剣の道なんて、男はきっと憧れると思うのです。
目的など何も無い。ただ、それを究めるのみ、なんてしがらみの無いまっすぐな考えがやっぱり好まれるのかな。

多彩なキャラによる、様々な心情表現、そして楽しみにしていた殺陣アクションの魅力を存分に味わえて、満足な作品でした。

|

« MISSION_101【関西大学劇団万絵巻】121216 | トップページ | JUKE BOX【ThE 2VS2】121216 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: SWORD OF SPIRITS【STAR★JACKS】121216:

« MISSION_101【関西大学劇団万絵巻】121216 | トップページ | JUKE BOX【ThE 2VS2】121216 »