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2012年12月18日 (火)

strange【ニットキャップシアター】121217

2012年12月17日 アトリエ劇研

とりあえず、観劇して、一晩寝てみた。
食べ過ぎた時に、休息して、時間が経てば消化されるように、過剰に、かつ混乱して入り込んできた情報が、寝たら頭の中で勝手に整理されるんじゃないかと思って。

そんな都合のいいことは一切起こらない。
むしろ、一部、忘れてしまった。すぐに書けばよかった。
仕方ないので、振り絞って書いた感想。
ただ、分からなくても面白いという典型的な作品であると思う。

(以下、ネタバレ注意。東京では来年2月にも公演があるみたいです。期間が長過ぎるので、白字にはしませんので、ご注意ください)

作品は三部構成になっている。
と言っても、別にバラバラのお話になっているわけではなく、幕みたいな感じで連続した話である。
その三本にそれぞれ題名を付けており、実はそれが作品を理解するための要素となっているみたいだ。

第一部:垂直移動編

客席からいきなりおかしな、いや可愛らしいと言うのだろうか、そんな恰好をした女の子が舞台に上がり、冷静沈着そうな女性に連れられて案内される。
へその無い男が老婆に靴を渡す。気になりますね、この二人。いったい何者なんでしょう。
さらに上へ行ってみましょうなんて言いながら、エレベーターで上の階に案内される。
こんな感じで、へその無い男と老婆の人物像が描かれていく。
へその無い男は孤児。引き取られるが、へそが無いからうまくいかず、施設に逆戻り。
何かよく分からないけど、おかしな組織に連れていかれ、世界のあらゆる情報を入れ込まれた人に改造。そこで津波に合う。
プカプカ浮かぶ中、靴を拾うが、猫にとられる。この靴は、猫殺しの老婆の物。返すわけにはいかない。
猫の王様と話をして、結局、返してもらう。
そして、それを老婆に返しに行く。

老婆は断食芸人の父の娘。他に7人の兄弟がいる。
断食なんて実はしておらず、ひっそりと隠れて母が父に食事を与えている。
それを見てしまった娘。
その日から、父は本当に食べなくなり、やがて、どんどん小さくなる。
母は死に、父は何と娘の口に中に住みつき、娘の食事を盗み取って生きる。
兄弟たちはそれを知り、娘を監禁。
娘は逃げ出したのか、町中の猫を殺すようになる。
それを王様に咎められ、罰を与えられる。
娘は卵を産む・・・

第二部 平面移動編

ごまのはえさんの下に元劇団員から電話がかかってくる。
義理の兄が失踪したらしい。
時は東日本大震災が起こった後。
ボランティアに向かった可能性があるとか。
その男は、結婚をしている。妻は心の病で家で引きこもっている。
そんな女性を置いて、いったいどこへ向かおうとしているのか。

同じ頃、京都では木屋町に火災が起こる。男と老婆が焼死した? 犯人は男らしい。
自分がその犯人と似ているから追われるのではないだろうかという妄想に憑りつかれながら、義理の兄は漠然と東北方面へ向かう。
ATMの利用状況などからの目撃情報。
福井の武生、東尋坊、ラッパを購入、佐渡島・・・
やがて、東京にたどり着いた男は、腕を掴まれ、どこかの横穴に引き込まれる。
その穴の中を探っていく男・・・

第三部 直角交差編

心の病を抱え、引きこもる妻。
結婚する時には既にそうだった。でも、結婚した。
震災が起こった。
日々、映像で流れる津波の様子を見ていた。
何かに行き詰まった感を払拭しようとしたのかもしれない。
何とは無しに家を出た。
その時に、妻の片方の靴を隠しておいた。

自分の頭の中にいる、様々な自分。
ある者は、物語を創ろうとしている。
自分の過去の記憶と、この失踪劇を交錯させながら。
垂直移動の記憶回顧、平面移動の目的のはっきりしない旅。
現実の問題を物語にしてしまって何かが変わるのか。否定する男は、自分自身に問い正す。
そこから、何かが生まれ、変わっていくものなんか。
自分同士の戦いが始まる。

男は家へ戻る。
隠していた靴はそのままだ。
それを玄関に残っているもう片方靴の横にそっと置く。

覚えている限りのことを書くとこんな感じ。
何か漠然と分かるような気もするのだが、それはあまりにもぼんやりしており、頭の中がぐちゃぐちゃ。

感覚的だが、作品は、あの東日本大震災の日、関西にいた人間の視点で描かれているような気がする。それも、阪神大震災を経験しているという微妙な距離感を持って。

漠然と存在を醸しながらも、いつの間にやらやって来てしまった心の病により壊れてしまった男女と、いつかは来ると分かっていながらも、それは不条理にやって来る自然災害の震災をオーバーラップさせているのかな。
二人がもう一度、歩んでいくことと、震災からの復興を同調させて描いているように感じる。
そこには、何もできないという無力感も漂う。物語を創ること、ボランティアに行くことに、否定や疑問を感じながら、彷徨っているようなところとか。
ただ、阪神大震災のように復興を実現したという希望感も同時に感じる。だから、きっと二人も大丈夫。同時に東日本だってきっと復興へ向けて道が開ける。そこが、関西の阪神大震災から立ち直ることが出来た人だからこそ、与えられる希望なんじゃないかな。

何で靴を片方だけ隠したのかが、アフタートークで言及されており、何かそんな行為はあざといみたいな感覚もあるみたい。
男は、きっとボランティアに行く行かないは別にして、戻ってきた時に何かが変わると思っていたのではないでしょうか。
妻が隠した靴を探して、外に出る。玄関先の靴も一緒に無くなっている。そんなことが起こればなんて願いかな。そのまま、玄関に片方の靴が残っていたら、それはそれで何事も無かったなんてことにもなるし。
その心情はよく分かりませんが、靴をもう一度揃えたことで、二人で再出発するなんてことを描いているのは確かでしょう。
今までは、もしかしたら男自身が、片方の靴を隠して外に出れないようにしたように、妻を知らずうちに閉じ込めていたのかもしれません。その靴を、差し与えることで、きっと妻はまた外に出ることができ、共に歩めるということかもしれません。

第一部は、全てを観た後に考えると、この夫婦のことを比喩的に語っているような感じでしょうか。
へそが無いなんていう、外からは見えないトラウマを背負う男。世間の荒波に揉まれながら、たどり着く行き詰まり。アフタートークで猫について説明がありましたが、路地裏にいるような者のイメージらしいです。そんな行き詰まった場所で、猫に諭されるように靴を返しに向かう。
老婆は家庭環境からくるトラウマの持ち主でしょうか。心の病もそのあたりにあるのかな。同じように行き詰る人を、自らを傷つけるかのように、傷つけていく。咎める世間に心を閉ざすが、一人の男から得た愛情、結婚という行為により、一筋の希望という卵を生み出す。
自分を納得させるためのこじつけではありますが、まあ何となくそんな感じにも捉えれるのでは。

二人の過去の記憶を妄想的な物語の形で立体的に積み上げ、実際に旅をする中で感じる平面的な距離感を交錯させて不可思議な世界を生み出しているようでした。

天井から吊り下げられたマイク、数々の打楽器による音響表現、コンテンポラリー色のあるダンスを組み込んだ迫力ある舞台。笑いの小ネタもチョコチョコ挟まれており、意味不明な話が展開される中でも、舞台から目を離させないようになっています。
カホンというのかな。あの音がドキっとさせられる。意味分からんから、もうお前には無理だろう。思考停止すよと言っている自分の脳を許してくれない。眠らせてくれない。
強制的な観劇みたいだが、不思議とゆったり、流れに身を任せて、この奇妙な世界で繰り広げられる物語を楽しめたと思います。結局、意味は分からんけど・・・

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