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2012年12月23日 (日)

SANTA×CROSS 2012【劇団SE・TSU・NA】121223

2012年12月23日 HEP HALL

2009、2011年に引き続き観劇。2008年はDVDで拝見しています。
(2011年の感想:http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/santacrosssetsu.html
(2009年の感想:http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/santacrosssetsu.html
(2008年DVDの感想:http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/dvdsantacross-2.html

今年度の感想を書くにあたり、過去の感想を読み返してみましたが、こういうのを残しておくのもいいものですね。
その時の自分の状況が、作品の感想を通じて蘇ってくる。
2011年度の感想なんて、これは自分の思い悩んでいることを作品に救いを求めるかのような感じになっている。
そうだね。そんな時だったね。あれから一年後には、もう立ち直ってるから大丈夫だよと過去の自分に声をかけてあげたいですわ。

今年の作品は、少し設定が変わっていますが、基本的な部分は同じ。
ただ、サンタの悲しい宿命がより自然に浮き上がるようになっている感じがします。
その中で、かけがえのない優しい想いに溢れた心温まる話となっています。

今回、大きく異なるところは、サンタとトナカイペアが4組じゃないところ。
3組と残りはトナカイだけの設定です。
これが実はサンタの悲しい宿命を浮かび上がらせる大事な要素となっています。
それに伴ってか、サンタを見守るトナカイというところはこれまでと同じですが、これまで以上に頼りない子供のような見習いサンタを親のように優しく見守るトナカイという姿になっています。

クリスマスの夜、子供たちにプレゼントを配達する見習いサンタとトナカイ。
これが一軒の家でバッティングします。
互いに譲らず、誰がプレゼントするのか揉め始める。
事務局に聞いても、待機しろとしか言われない。それどころか、もう一組のサンタがやって来るのを待てと指令が。

やって来たのは一匹のトナカイ。
通信教育でトナカイの座を射止めた成績優秀の一期生。
このトナカイ、ここで相棒のサンタの到着を待つように言われているみたい。

ごちゃごちゃとしている間に、一人のサンタがあることに気付きます。
この家、子供以外誰もいない。しかも、その子供はまだ生まれたばかりの幼子。
調べてみたら、両親は昼間に事故にあって、家に帰って来られない状態になっている。
寒さのため、子供の心音はかすかになってきている。
そう、サンタは生まれて一度もプレゼントをもらえなかった子供の魂の生まれ変わり。
やって来たトナカイの相棒は、今、死のうとしている子供の魂ということなのか。

愕然とするみんな。
自分たちは神ではない。だから何もしてあげられない。これがこの子の運命と割り切らないと仕方が無いのか。
サンタたちは決心します。
自分たちが出来ることはプレゼントを渡すこと。
だったら、この子にまだ生きる力をプレゼントしようと。
そんなことは出来ないし、してはいけないとたしなめるトナカイ。でも、その見習いサンタたちの純粋で真摯な気持ちに負けて共に力を合わせて、そのプレゼントを袋から出そうとする。
大きな想いをみんなで共有して、袋の中に手を突っ込む。
電撃に体を痛めながらも、みんなの想いが形となって、袋から・・・

このシーンはこれまでも同じで、ダメでもあきらめずに何度も何度も必死に袋から体を痛めながらもプレゼントを引き出そうとするサンタ。それを必死に応援するトナカイの姿に感動させられます。
ここに至るまで、サンタは頼りなかったり、クソ生意気だったりとまだまだ幼いところばかりを見せて、互いに仲違いしてばかりなのですが、心に秘めるサンタとしての想いはやはり一緒で、それが大きな力に変わっていくところを見せています。
自分たちが、悲しい死を経験しているだけに、その願いは誰よりも強いものなのでしょう。

今回、感動してしまったのは、このシーンはもちろんですが、プレゼントが出てきた後に、トナカイがサンタたちによく頑張った、どこか体を痛めていないかと、親のように優しい姿を見せるのです。
特に、まだまだしっかりせず、自分で積極的に行動できないような見習いサンタ、山本禎顕さん(スクエア)の痛めた腕を、優しくさするトナカイ、升田祐次さん(遊人A)の姿が一番印象的で、一瞬で涙ぐんでしまった。
生意気で自分のことばかり考えて行動してしまうサンタ、ひおき彩乃さん(舞夢プロ)には、母親のように人のために力いっぱい頑張ったことを褒めるように抱きしめるトナカイ、平本真弓さん(劇団Gock-Luck)。
いつも理論先行でその優しい気持ちを行動にすぐ起こせないサンタ、坂口ゆいさんには、父親のように自分の思いのままに行動してみた勇気を褒め称え、誇りに思っているかのように嬉しそうに微笑むトナカイ、西田政彦さん(遊気舎)。

サンタは、親から愛情を注がれること無く、一度もプレゼントをもらえずに、死を迎えた悲しい子供たちの魂。
なぜ、サンタになるのか。
生前に受けることが出来なかった尊い愛情を、サンタとなった今、こんなトナカイからたくさん受けるためなのかもしれません。
時には厳しく、そして頑張った時には力一杯、最高に褒め称えてもらう。
悲しいことに、生前には味わうことの出来なかった大切なことを、今、こうして得ながら成長していくもう一つの人生なのでしょう。
そんな喜びを、世界中の子供たちに、出来ることなら生きている間にたくさん得て欲しいと願いながら、プレゼントを配達しているように感じます。

今回の作品でトナカイのことも少し分かった気がします。
相棒を待つトナカイ、木下朋子さん(彗星マジック)。無邪気で純粋で、この作品で描かれる中では、トナカイよりもむしろ見習いサンタといった感じです。
でも、他のトナカイたちもきっと最初はこんな感じだったのかもしれません。
見習いサンタと共に行動して、ケンカしたり分かりあったりする中で、トナカイ自身も成長していくのでしょう。
それは、もしかしたら、親になることに似ているのかもしれません。子供であるようなサンタに愛情を与え、与えられ、一緒に人を想う優しい心をはぐくんでいく。
そんな素敵なつながりがこのサンタの世界に存在しているようで、とても幸せな気持ちになります。

観るたびに、何かを感じ、温かい気持ちが芽生えてくる。
素晴らしい名作。
ずっと、ずっと観続けたくなる素敵な作品です。

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