« ギア -GEAR-【ノンバーバルパフォーマンス】121229 | トップページ | 2012年度 観劇作品ベスト10 その1 »

2012年12月30日 (日)

前略、ママ上様【夢ノ島企画Rプロデュース】

2012年12月29日 人間座スタジオ

今年の観劇納め。
これで本当に良かったのだろうか。
奥深いのだか、単なるバカなのか、非常に微妙なラインで攻めてくる作品。
豊富なネタと個性的すぎる役者さん方の力で豊富に笑いを盛り込みながら、演劇らしいテーマを巧妙に追及している。

(以下、あらすじ書いていますが、多分、読んでも分からないと思うので白字にはしません。本日、千秋楽です)

まず最初によく分からない走れナロスという短編映画を見せられる。
なぜ走るのか。考え始めるナロス。なぜ考えるのか。考え始めるナロス・・・
作品に通じているような、意味の無いような。

続いて人形劇。
よくありがちな、二つの異次元の物語を交錯した複雑な話であることを説明。
その中で、子供誕生。
子供はすくすく育ち、ある日、綺麗な姫と出会う。
姫は呪われているという理由で、悪い王様に監禁されている。
姫を救い出さなくては。
勇者の冒険が始まる。

一方、どこかの会社の忘年会。
営業成績トップでOLからモテモテの桐島という男。
あるOLとの結婚を発表。
自分とも付き合っていたのに。そのOLと幼馴染の女性は嫉妬心を燃やす。
密かに想いを寄せていたのに。出来の悪い男、浦は自分の中に渦巻く悪意を蓄積する。
そんな中、金属バットを持った男が桐島を連れて行く。浦はそれを傍観する。他の人を見回す。誰も見えていないのか。

桐島は金属バットで殴られて、重傷。
浦は容疑者にされる。あの男ではないのか。刑事に話は通じない。
捜査が進むうちに、ホームレスの目撃者が現れる。痴話ケンカ。嫉妬による女性の犯行か。
でも、浦の写真にも反応を示す。

姫は城から逃げ出したらしい。
姫の呪いを解いてあげたい。
勇者は姫を探す中で、その追手と戦う。
いつの間にか迷いの森へ。
魔女に出会い、呪いを解く方法を教えてもらう。弟子の魔女を仲間にして、姫の下へ。
しかし、姫は呪われた姿で、殺人鬼となっている。

桐島の看病で疲れきった婚約者OL。
幼馴染のOLは、それを励ます中で、彼女へのイラダチ、嫉妬を膨らませていく。
同僚OLに連れられて、おかしな新興宗教のようなところで、その不穏な想いを昇華させようとする。

桐島の事件の捜査は難航する。
そして、いつの間にか、その捜査は浦が創り出した勇者の世界へと向かう。
勇者の正体は。姫の呪いとは。
そして、桐島事件の本当の犯人は・・・

抱えるトラウマからの脱却。
現実世界で行き詰った者が、勇者の架空世界で仮想の敵を創り出して、それと戦うことで、そのトラウマを昇華させているような感じの話。
産み落とされた時から、走り続ける人間。背負うものを蓄積しながら、そこから逃げることも出来ずに走り続ける。いつの間にか、制御できなくなる自分の中に渦巻く感情。でも、そんなものはみんな持って生きている。架空世界を創り出しても、そこでも同じように苦しみながら生きている人が生まれ出す。
考えても仕方ない。その苦しみを人と分かち合い、共に悩みながらも走るしかないのか。
要はソイヤーの気合の一言で頑張るしかないのかなといったところか。

これも丁寧に作り込んだ作品と言っていいのだろうか。
笑いのネタが細部に渡って散りばめられているのだが、笑わせ方がとても巧みで色々な趣向を凝らしている。
ただ、その反面、なかなか面白い設定のストーリーを犠牲にしているところがあり、話の展開はスムーズとは言い難い。
多くの個性的な役者さんの持ち味を存分に見せようとしているのか、現実世界と架空世界のキャラの連動がいまひとつ見えにくい。楽しく笑いながら見せるためには必要であるが、展開上は不要なキャラや、役者さんの数を絞った、もう少しスマートな創り方も考えられるような気がする。
まあ、それよりもこの年末に大騒ぎできるような突き抜けた作品として公演したかったのだろう。
その点は、こちらの想像以上に面白い作品として仕上がっている。

役者さんは女優さん方がとても目立つ。
姫、OL、語り手などなど、最初の登場シーンでは、皆さん、ちょっと可愛らしかったりするのだが、話の中で、全員壊れる。くだらん幻想を崩すみたいな意味合いでも持たしているのかと思うくらいに、目を覆いたくなるようなお姿に。特に、ヒラタユミさん(劇団紫)の破壊力は目を剥く。
やはり、先日、無理してでも劇団紫は観に行くべきだったと後悔の念が押し寄せる。

|

« ギア -GEAR-【ノンバーバルパフォーマンス】121229 | トップページ | 2012年度 観劇作品ベスト10 その1 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 前略、ママ上様【夢ノ島企画Rプロデュース】:

« ギア -GEAR-【ノンバーバルパフォーマンス】121229 | トップページ | 2012年度 観劇作品ベスト10 その1 »