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2012年12月 1日 (土)

旅の途中【Nana Produce】121130

2012年11月30日 東大阪市立男女共同参画センター イコーラム

8月に十年希望を拝見して、またすぐに観れるとは思わなかった。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/nana-produce120.html

この作品は、以前、公演数が多い週にぶつかり、観逃してしまった作品。
二度も観逃すわけにはいかない。今回は最優先で初日に拝見。

やはり、ここは上手いなあという感想になるな。
完璧とか上質とかスマートとか。
どこがどうだから上手いなんてことは書けないのだけど、きっと細かなところまで気を配った演出をしているんだろうな。
そして、役者さんの存在感が大きい。
かなりむちゃくちゃなキャラでも、それで目立ってるのではなく、やはりしっかりした演技で魅せているように感じる。

かつて刑事時代に命を救ってくれた恩人の先輩の墓前に、手を合わせる探偵業を営む男。
いやあ、大変だったんですよと、笑いながら語りだして、物語は始まる。
探偵の男が、これまでの事件を回想しながら、先輩、そして私たち客に話す形で進められる。

男の探偵事務所に一人のやくざが訪れる。
色々と仕事を依頼してくれるお得意様。
もっとも、やくざなので、人探しの仕事で見つけた人もどうなってるのやら。
今回の仕事は、組の親分の愛人探し。報酬もなかなかだ。
なんでも、昔の恋人である役者仲間の若い男と駆け落ちしたらしい。
愛人の写真。どうも、どこかで見た覚えが・・・

昔の刑事時代の腕を活かして、調査は順調に進む。
二人は、これまた昔の役者仲間の男のところにかくまってもらっているみたいだ。
女を見つけ出した探偵は彼女と会う。
そこで思い出す。この子は先輩の妹。葬式で出会っていた。サッカーが得意だった先輩の棺にサッカーボールを入れてあげたいと泣き叫んでいた姿が思い起こされる。
恩人である先輩の妹。この子をやくざに差し出すわけにはいかない。きっとひどい目にあうに決まっている。
調査は失敗。やくざにはお金を返して、見逃せばいい。それでお終い。
のはずだった・・・

ところが、このかくまっている男、今は詐欺師。いかにも怪しげで、子分の男もチャラチャラした男だ。
今、やってることは結婚詐欺。いいところのお嬢様に売れっ子小説家として近づき、お金をいただこうとしている。
計画は、男が車で事故を起こし、悪い人に金を要求されているという偽の状況をお嬢様に伝える。売れっ子だけに事件を表沙汰にはしたくない。お金で解決。そのお金を出してもらっていただこうというものである。
そのためには、一芝居打たないといけない。
いいところにちょうど昔の役者仲間がやって来た。
若い男も当面の生活費が必要なので、その詐欺に片腕を貸してしまう。
女は猛反対。
貧乏でもいい。この男を好きになったのは、一生懸命に役者を続け、頑張っている姿に惚れ直したから。
こんなことをする男に対して不信感が生まれる。
でも、逃亡中の身。どうしていいのか分からず悩む。

全てを知った探偵は、事を全部丸く収めるために、ある計画を提案する。
役者が揃っているのだから、ここでも一芝居を打つ。
この詐欺師の男の家にやくざを呼ぶ。
若い男は、観念する。でも、女は拒否する。
そこに、詐欺師登場。嫉妬に狂った異常者の役。拳銃を持って、女に発砲。
女、死亡。
こんなことが世間にばれたら、やくざも大変だ。
この場は私に任せて、あなたは逃げなさい。そして、ここでのことは何も無かったことにしましょうと探偵。
もう追われることもなくなった二人はめでたし、めでたし。
とんでもない三文芝居だが、他に手立てもない。

いよいよ決行。
ところが、とんでもないハプニングが起こる。
お嬢様がこの家にやって来てしまった。教えてもいない住所をどうやって突き止めたのか。
そして、やくざもやって来る。
事態は収拾つかない状態に。
その結末は・・・

典型的な大団円を迎える痛快コメディー。
実はボスは・・・、実はお嬢様は・・・、といったあたりが、オチといったところだろうか。

最終的には、女はやくざとともにボスのところへ戻る。ただし、よりを戻すとか、そこでひどい目に合うとかいうわけではない。
ただ、そこに若い男はいない。
駆け落ちまでしたが、やはりこれから二人で生きていくという覚悟が足りなかったのだろう。
だから、こんな詐欺行為に身を染めて、事件を大きくしてしまった。
若い男は、女にお別れと自分が頼りなかったことへの謝罪の言葉を残して去る。

探偵は、巻き込まれてしまい大変だった事件のあらましをすべて語り終える。
先輩からは、事件に関係する人と深く関わるなというアドバイスを受けていたが、全くその通りだと。
でも、今日、墓参りに来たのは、そんな話をするためだけではないみたい。
手にはサッカーボール。
ついこないだ、あの二人から荷物が届いたらしい。
それを供えにやって来た。そのサッカーボールには女が書いたありがとうの文字が記されている。

最後がスッキリ。
というのも、後半あたりから、どうも女に何となくイラ立ちを感じていて。
そりゃあ、若い男は確かに頼りないし、悪い。でも、自分だって何も出来てはいないじゃないか。詐欺師の男だって協力した。探偵だって。
みんな、みんな応援してくれている。それは、先輩、仲間、若い男とみんながあなたのことを思っての行動じゃないか。ボスややくざだって、本当はあなたのことを思っていた。
そんな幸せに感謝なく、不幸だみたいな感じを醸し出す姿はひどくはないかと。
でも、サッカーボールに刻まれたありがとうの文字。
その言葉が欲しかったんだな、きっと。
その瞬間、あ~、この話は本当にハッピーエンドだと感じた。

旅の途中。
駆け落ちして逃げる旅の途中。それは、大きく見ると、人生の中の一部分。
二人のこれからの人生の長い旅の途中の出来事。
そこで、二人は共に生きる決意をして、これからも旅を続けることにした。
これからも、こんなことを繰り返しながら生きていくのだろう。
そして、探偵も、こんな事件をきっかけに、先輩のことを思い出して、生き残った自分はまだまだ旅をしっかり続けていくという決意を抱いたように思う。

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