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2012年12月17日 (月)

MISSION_101【関西大学劇団万絵巻】121216

2012年12月16日 芸術創造館

2003年の劇団赤鬼の作品。
ちょうど、同じ週にその赤鬼が新作を公演。それにぶつけてくるとはなかなか度胸がある。

赤鬼の作品の魅力は、シーンをめまぐるしく切り替えながら、スピーディーにテンポよく進む話の展開。ライブシアターと銘打った照明・音響を駆使した迫力ある舞台。
笑いの要素を盛り込んだエンターテイメント色を濃く見せながら、最後には感動して心震わせて涙するような、熱く真摯な心情の表現。
この点で言うなら、同等と評価しても文句は無いぐらいに立派な仕上がりだと感じます。まあ、所詮、素人の判断ですが、本当にそう感じます。少なくとも、前日に赤鬼の公演も観てますからね。同じ土俵で比較は出来てると思います。

脚本の力か、卒業公演ということで、経験豊富なメインの卒業生の役者さん方に、それを盛り立てる後輩の役者さん方、そしてスタッフの皆さんのチームワークがいつも以上に発揮されているのかはよく分かりませんが、非常に力強く、凄いと思わせる作品でした。

時間旅行が可能になった未来。
タイムパトロールの最終試験に6人の精鋭が挑みます。
成績優秀、亡き父の言葉を胸に真面目に勉強し続ける優等生、クラウド。
お嬢様であるが、それなりに苦労して頑張っているしっかり者、クリス。
憎まれ口ばかり叩いているが、リーダーシップを取って賢明な判断が出来るルースター。
屁理屈が少々多く、頭でっかちだけど情熱家、リンタロー。
スラム育ちで口が悪く、勢いで動いてしまう女性、ナナイ。
少々軽く、女好きだが、無邪気ながら明るくまっすぐに生きているプリスキン。
試験の内容は、二人ずつペアになり、過去の時代に時間転移して、100のミッションをクリアするというもの。

ルースターとリンタローはロンドンへ。将来、有名なダンサーになる女性の過去のエピソードを入手する。
その中で、時間を超えたダンサーとの淡い恋と、悲しい変えられない過去の歴史を体験する。
ニューヨークでは、ナナイとプリスキン。お色気と巧みな軽口で、カードギャンブルのイカサマをして記念硬貨を手に入れる。
クラウドとクリスはインド。王様の娘の結婚相手探しの中で、緻密な作戦の下に、月の涙という貴重なネックレスをゲット。

3組は決着をはっきりつけるために、Sクラスのミッションに挑むことに。
ナチスがはびこる時代のパリ。
そこで、機密文書を手に入れるミッションに挑む。
クラウドとクリスは中立国のスイスの外交官となり、身の安全を確保する。
ルースターとリンタローは、ナチス高官に。
ナナイとプリスキンは、なぜかアメリカ連合軍になってしまい、危険な状態に。でも、レジスタンスを名乗る一人の女性ソルジャーと共に行動をする。
結局、機密文書は手に入るが、それは単なる家族へ宛てた手紙の様なものだった。
そして、女性ソルジャーは歴史どおり、捕まり・・・

歴史の中で存在した数々の悲劇。人の死。それは自分たちが知らなかっただけで本当にあったこと。
そこから歴史を学ぶ。それがタイムパトロールの宿命。
神ではないので、歴史は変わることは決して出来ない。
つらく厳しい任務を目の当たりにして、試験に挑む者たちはどうしようもない想いを募らせていく。
無力である。しかし、そこから新しい未来を自分たちは創らないといけない。

そんな中、この試験にトラブルが生じる。
クラウドが、ミッションとは全く関係ない時代に向かったみたいだ。
後をクリスも追っている。
そこは、オーストリア。

一人の紳士と、その子供。
時計台に向かう。
この時代のオーストリアの社会状況は悪い。
世の中を変えるために、選挙に立候補し、より良い社会を築こうとしている。
クラウドは語る。
今から、一時間後に市民の暴動が起きて、その紳士は死んでしまう。そして、子供は・・・

クリスは気付く。
クラウドこそ、あの紳士に連れられた子供。
彼はその時、時空の中を飛ばされ、タイムジプシーとして時空を彷徨う人になっていることを。
そして、今、クラウドは紳士を救い、歴史を変えようとしている。
そんなことをしたら、今の世界は消滅してしまう。
歴史を変えようとするクラウド。残された時間で彼を止めようとするみんな。
それぞれの101番目のミッションが始まる。

劇団赤鬼の作品としてDVDが販売されているので、詳細はそれを購入しましょう。
ラストは、ちょっと悲しい結末を迎えます。
クラウドは全てを覚悟しており、歴史を消滅させるのではなく、自分だけが消えて、もう一度振り出しに戻って歴史をやり直すことが出来る、犠牲的な最善な選択をしています。
当時、今でもそうですが、赤鬼は時間軸をいじる作品が好きみたいです。
同系統でシリウスに向かって撃て!とか、Silent Knightなんかもよく似た物悲しい結末になっています。
歴史の中には悲しみが蓄積している。それは、事実として捉え、その過ちを繰り返さぬように新しい未来を創っていく。そうではあるのでしょうが、どうしても、その悲しみを取り去らないと先へと進めないこともあるのでしょう。それが、自分を消滅させるという、悲しみの代替であっても。

役者さんが、まあ多い。
27名。
やっぱり経験って大事なんだなあと思わせるような4回生の方々の味のある演技に、芸達者が多く、卒業公演なのに、それを喰ってやろうとしているくらいに抜け目なく活躍する後輩の役者さん方。
4年間の集大成を見せていただくとともに、これからもずっと続くこの劇団としての魅力を高らかに宣言し、足跡を残したことを証明するような公演になっています。

今、パンフレットと照らし合わせて、JOBで役者さんと書かれている人で作品に登場した卒業生を調べているのですが、お一人、出演されてないかなあ。それと、どうしてもお一人、どの役だったか判別できない人がいます。申し訳ない。シーン切り替えの時や、ミッション中に強烈なキャラでおかしいことたくさんするからいけないんだよ。

クラウド、みゅうぽんさん。原作では副島新五さんだから、やっぱり男前を持ってきてるね。誰にも止められない強い信念オーラを後半出されます。
クリス、ぽりもと(fin)さん。( )の中、季節が入ってたりしてたけど、これで最後か。真面目な優等生だけど、ちょっと悪ふざけも出来るようなチャーミングな女性を演じる。
ルースター、こーへーさん。何かと対抗意識を出して噛みついていく若々しさがあるキャラだが、実の役どころを知っているからか、冷静な一面もずっと垣間見れたので、うまく隠し持つなあと。
リンタロー、タカシさん。このキャラ、好きですね。頭の中の知識だけで物事を捉えていた人が、実際の経験を踏まえたことで、本当の知識を得る。死んだ人の数を、その中に自分と関わる人がいるから、もう数字としてだけで見れないなんてセリフが心に残ります。
ナナイ、坂本えりこさん。相変わらず、たたずまいがとても凛としていて綺麗です。初めて拝見した時は、確か巫女とかで清楚な美人さんイメージだったけど、結局、その後は、今回の様な柄悪い女性ばっかりだったなあ。
プリスキン、次元さん。このキャラも好き。まあ、ミッションの中で、愛する人の死を体験してしまうということで、リンタローとオーバーラップするのでしょう。こちらは、リンタローと違って、頭で整理できるタイプでは無いので、感情をむき出しにするところが、また人間らしくていい。

ナビエ、袴屋へむさん。上記あらすじには書いていませんが、ミッション中に試験進捗を伝える電脳少女みたいな役。原作に比べると、えらくキャラを痛くしています。不思議な可愛らしさがあるけどね。
ロンドン、ダンサーの女性、まんちゃんさん。普通に夢見る素朴な女の子だったので、死が痛々しい。どうにもならない物悲しさを大きく引き出します。
クラウドのお父さん、つじりばーさん。何の公演だったか、ちょっと中性的なイメージで覚えていたんだけど、今回は、おとなしい紳士に。全てを知った時にクラウドを見る目ね。ここがとてもいいです。
レジスタンスの女性ソルジャー、マオさん。まあ、そのまま、ソルジャーでしたわ。プリスキンにありがとうって軽くキスするシーンが原作でもこちらでもあるんだけど、孤独な戦いの中で、本当に一瞬だけ戻る女性の姿がぐっときます。
松本英祐さん。本当に申し訳ない。判別がつかない。エジソン、クレオパトラ、ベートーベンの小ネタオンパレードのどれかを担当されてた方ですよね。多分。変装しているから分からんのですよ。

で、一応、卒業生の役者さんはコメントできたと思うのだが。

全体的に綺麗にまとまり過ぎているぐらいの感じかな。
その中で、学生劇団らしい、面白キャラを登場させて、展開に緩急をうまくつけているように思います。
しっかりと力をこめて、熱く盛り上げるところは、この劇団らしい魅力が感じられました。
まあ、卒業生の方々、お疲れ様でした。
多分、3年前から拝見させていただいている人もおり、もう、こちらで拝見できなくなるのは、一般客とはいえ、ちょっと寂しくもあり。また、劇場でお会いできるなら嬉しい限りですが、そのまま引退される方も、素敵な人生を歩まれることを祈ります。
何と言っても、今回拝見して一番嬉しかったことは、まだ在籍される方々にいくらでも魅力豊富な力を秘めた方々がいらっしゃることを再確認できたこと。
まだまだ、ここは来年も楽しめるでしょう。頼もしい後輩方を残していただいたことにも、卒業生の方々に感謝したいと思います。
ご卒業おめでとうございます。

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