朝日のあたる家【DanieLonely】121223
2012年12月23日 カフェ+ギャラリー can tutku
チラシにも、当日チラシにも、Twitterとかの感想にもどんな話なのかの情報が全く無く、始まるまでどんな作品なのかさっぱり分からないまま観劇。
男4人。
どこか愛らしく、それでいて力強さを感じる男たちが織りなすちょっと心温まり、勇気づけられる様な話だった。
演技が巧みで、味わい深いものを感じさせながら、楽しくおかしく進むストーリーに魅入った。
(以下、ネタバレ注意。公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで)
ダンボールを張り巡らせた屋敷。光は一切、入ってこない。
入口も狭く、隠れて人が住んでいるみたい。
高山という男は妻に手紙を書いている。自分は元気でやってます。必ず会いに行きますから。
なんて、新婚みたいだ。訳あって、今は会いに行けないみたい。
その傍らに大本という男。ソファーに寝転がりながら暇を持て余している。たまにハーモニカを吹いたりする。普段はブラブラ近所を散歩して時間を潰している。
俺にために悪いね。なんて言ってるところをみると、どうも高山が妻に会いに行けないのは、大本に原因があるようだ。
部屋に入ってくる若い男、大島。今が楽しくて仕方がないみたいで、ハイテンションな男。近所のコンビニに可愛い子を発見したらしい。一緒に行こうと誘っている。
仕方なく、大本が付いていく。
真っ暗の部屋。と言っても、外は昼間のようだが。
コンビニの店員はなかなかの可愛さだったらしい。
興奮冷めやらずで大島は二人に話しかける。
眠たい二人は、いさめて寝かせようとするが、なかなか話を辞めない。
そんな中、外から話し声が。
侵入者。
ここが例の屋敷だよ。ハーモニカの音が聞こえてくるんだって。真っ暗だあ。幽霊がいるんじゃない。
さんざん騒いで、怖くなったのか一目散に逃げ出した。
そう、ここは幽霊屋敷と噂される場所。
そして、それは事実でもある。
この三人、本当に幽霊。
どういうわけだか、気づいたら、この町にいて、ここに住みついているらしい。
と言っても、ずっとここにいられるわけではない。
四十九日という制度がある。
過去、ここにいた人もその日を境に消えてしまった。
大本は後数日、高山は20日程度、そして大島は最近来たばかりでまだ40日以上残っている。
そんな中で、自分がまだしておきたいことを、その日が来るまでしているというわけだ。
ダンボールは光に弱いのが理由。昼夜逆転の生活をしている。
そして、生きている人にはその姿は見えない。
ここも幽霊屋敷なんて噂されるようでは、落ち着いて生活できない。
引っ越し。いや、もう少し様子を見よう。
高山は相変わらず手紙を書く。大本はブラブラ散歩の毎日。大島はコンビニ店員には彼氏がいたみたいで落ち込み気味。
いったい、何がしたいのか、よく分からない無駄ともいえる生活を過ごす。時間は限られているのに・・・
そんなある日、一人の男が屋敷にやって来る。
高山と大本はその場にいたが、当然彼には見えない。
カセットテープレコーダーでラバーズコンチェルトをかけて、天井に紐を吊るす。
そして、そこに首を。
慌てて止める二人。
でも、見えないので彼には意味が分からない。勝手に体が抑え込まれる。怖くなって逃げ出す男。
再び戻って来た男。今度は大島がその場にいる。
驚いて部屋を飛び出す男。
見えてる?
なぜかは分からないが、大島だけは見えるみたい。
大島は男と話をする。
彼の名前は桜田。人生につまずいて、自殺しようとしていたらしい。
自分は幽霊。そして、他に二人仲間がいることも説明するが、当然信じてもらえない。
でも、見えるようになるある方法が発見される。
大島と接触していれば、見えるみたいだ。
狭いソファーに窮々になって座りながら、みんなでお話をする。
死んだのにはそれぞれ理由があるみたいだ。
高山は水死。大島は病死。ずっと病気で病院暮らしだったらしく、だから、今の自由な生活が楽しくて仕方が無いらしい。
桜田は友達の借金を肩代わりして首が回らなくなったらしい。
生きていてもいいことなんてない。でも、死んでしまえば、もう・・・
大本は交通事故死。助手席には祖母がいた。きっと、彼女も死んだ。事故はこの町で起こった。だから、この町に祖母がやって来るのを待って、日々探していたらしい。
高山はそんな彼の事情を知っており、彼の最後の日まで付き合うことを決めていた。
でも、祖母は本当に死んだのか。
ずっと現れないのは、もしかしたら生きているのでは無いか。
そして、ある事実が発覚する。生きている人には高山の文字は見えていない。
ずっと送り続けていた手紙は妻の下には届いていないようだ。
大本は、もう後数日しか時間が無い。高山だってもうそれほどゆっくりしている間は無い。
大本の時間切れの日はクリスマス。
最高のクリスマスを迎えるために、彼らは大本の祖母、そして高山の妻のところに勇気を持って向かうことを決意する。
最後に屋敷で過ごす彼ら。
もう、みんな揃うことも無いだろう。
壁に記念に名前でも刻もうか。
それはさすがにこの屋敷の持ち主に悪い。
いや、大丈夫。だって、この屋敷は実は桜田のもの。
幼き頃に住んでいた屋敷らしい。
優しい両親と共に過ごしていた。
カセットテープレコーダーのラバーズコンチェルトは母が好きだった曲。
ここでその頃を思い出して死のうと思ったが、こんな出来事をきっかけにまた生きていく気になった。
当時から、この屋敷はボロボロでいいところなんか何も無かった。
でも、唯一、日当たりが良く、いつも朝日がさ~っと窓から部屋に入り込んで来た。
出発の時。三人の男たち、いや幽霊たちは桜田に伝える。
帰って来たら、ダンボールを全部剥がしてくれと。
けじめをつけて、成仏するつもりなのか。
そんなことを分かってか、桜田は両親に幸せに生きていることを伝えるように彼らにお願いする。
大本は祖母を探すと言いながらも、普通は一番最初に向かうであろうその家には行っておらず、散歩の中で見つけようとしている。
高山もいつでも妻に会いに行くことは出来るのに大本を理由に行動に移さず、手紙で、間接的に接触しようとしている。
大島は、青春時代を病院で過ごした。自分がしたかったことは、死んだ自分が今出来ることは何も無い。彼女一つにしても、付き合うことは死んだ自分には出来ないのだから。生き返るしかない。でも、日々、今を楽しむかのように過ごしている。
桜田は、その気になれば借金という問題はクリアできるはず。屋敷も車も持っているのだから。借金をした友達と話をすることだって可能なはずだ。この苦境を人生から逃げ出す理由にしているような感じである。
みんな、自分がしなければいけないことの核心部分を避け、それでもしないのは嫌なので回り道をしながら、しているつもりになっているように感じる。
批判する気は全く無い。むしろ、ものすごく同調する。
決して逃げているわけではなく、色々なことを想いながら、不安と戦い、弱気な自分を必死に奮い立たせながら不器用に生きている男の姿が浮かんでくるからだ。
そんな強くてかっこいい男ばかりじゃない。しなければいけないことをばっちり決めてやれるヒーローみたいな男はそれほど存在しない。
それでも弱くていいなんて思ってないから、逃げたらダメだと思ってるから、みんな懸命に少しでもいいから前へ進もうとしてるのだ。そんな等身大の男が描かれているようだった。
それでも、最後に男だからばっちり決めてる。
たまたま出会ったこんな友と想いを通わす中で、互いの勇気を奮い起こさせて、真正面からぶつかる決意をしている。
けじめだってきちんとつけるつもりだ。
ずっと自分たちの砦となっていた屋敷。
そんな屋敷を一番輝く姿に戻して、去ることも忘れない。
そして、そんな輝く屋敷を彼らが去った後もずっと守り、彼らと過ごした時を刻み続ける覚悟をした男が残っている。
弱くもあり、強くもあり、不器用だけど熱い想いを持つ素敵な男たちが舞台にいたように感じる。
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コメント
本日はご来場、本当にありがとうございました。ギリギリの公演案内にも関わらず、お越し頂けて本当に嬉しかったです。そして、お心遣いありがとうございました。もう泣いちゃいますよ、こんなのされたら!笑
稽古も本番も何度も何度も観てるのに、SAISEIさんの感想を読んで、改めて気付く部分がたくさんありました。
関係者だけど、お客さんとして、明日もまた楽しみたいと思います!
あたしの大好きなDanieLonelyをこれからもよろしくお願いします。
投稿: 奥田夏実 | 2012年12月24日 (月) 04時12分
>奥田夏実さん
コメントありがとうございます。
単純な話ですが、なかなか登場人物の心情を色々考えさせるいい作品だと思います。
光を遮ったりしてるのも、幽霊だからと言ってるけど、本当はお天道様に顔向けできないみたいな漠然とした罪悪感みたいなものをイメージしてるのかなあと思ったり。
それを取り払って、堂々と光り輝く朝日を浴びれるようになった。そんな感じかなあ。
きっと何回も観る中で、芯が見えてくるのだと思います。
残りの回で、そこにどんどん近づいてみてください。
役者さんとして、男として、とても魅力的な方々でした。
多分、30歳前後なのだと思いますが、若くも老いてもいない微妙な時期の多感なところが描かれていて、とても素敵な作品に仕上がっているように感じます。
また、次回も観に行きたいと思っています。
お疲れ様でした。
就職活動も悔いなく頑張ってo(*^▽^*)o
投稿: SAISEI | 2012年12月24日 (月) 11時27分