ロミオとジュリエット 絶望バージョン【伊藤えん魔プロデュース】121224
2012年12月24日 ABCホール
いつもながらの、ネタをふんだんに盛り込んでの、緩急つけたうまい話の展開。
笑いながらも、最後はやはり感動してしまった。
さすがは名作。
個々の役者さんの持ち味もたっぷり味わえる楽しい作品となっていました。
(以下、ネタバレ注意。公演終了まで白字にします。公演は木曜日まで)
あらすじはそのままロミオとジュリエットだと思います。
原作をきちんと読んだことは無いので、実はよく分かりませんが、ちょっと違うなと思うところもチョコチョコあります。
ロミオがずいぶんと遊び人。貴族の女性たちを騙して虜にし、金を貢がせてモンタギュー家を再興しようとしています。でも、本当はそんなことをするのは嫌で、それでも家のために自分の心を殺して女性と付き合っているような設定でした。ジュリエットと出会い、キャピレット家の令嬢であることを知った時、政略結婚をほのめかして、彼女をものにしようとしています。もちろん、本当は心から愛する気持ちが溢れてくるのを必死に抑えていたみたいですが。モンタギュー家、それに仕える人々を守らないといけない立場なので、個人感情を捨てなくてはいけない。この苦しみ、葛藤を匂わせながら、鼻から悲劇色を匂わすロミオになっているように感じます。山浦徹さん(化石オートバイ)が、その魅力的なオーラを存分に発揮して、苦悩するロミオを熱演されていました。
ロザライン。ロミオがベタ惚れの女性だったと思うのですが、この作品ではロミオに騙されていると分かっても、ロミオから離れられないという逆にベタ惚れしている女性になっています。そして、かなり痛いキャラとなって嘉納みなこさん(かのうとおっさん)が飄々と演じられます。
何と言っても、この作品では悲劇を生み出す原因となる女性として描かれます。
ジュリエットが仮死状態になり、その計画をロミオに伝える文書を、ロザラインは破り捨ててしまいます。女性の嫉妬心が残酷に浮き上がってくる、うわ~と目を覆いたくなるような怖いシーンです。
パリス伯爵がとても情けない、かわいそうな、ある意味、一番悲劇的な人物をなっています。ジュリエットの嫌悪感は露骨で、それにすら気づかない世間知らずのおぼっちゃまといった感じです。哀愁漂う憐れな姿をたかせかずひこさん(ババロワーズ)が、もの凄くいい感じで出されます。
最後、ジュリエットの死を確かめに来たロミオと対決して死んでしまうのではなかっただろうか。この作品では、そのシーンには登場せず、新婦を失い、ただただ悲しみに暮れるかわいそうな人となっているみたいです。
ここが一番、違うと思うのですが、原作は、ロミオはジュリエットの死を確認し、自らも毒を飲むという話だったと思うのです。そして、目覚めたジュリエットは毒死したロミオを見て嘆いて短剣を胸に。
この作品では、ジュリエットの墓に行く前に、ロミオは墓を守るキュピレット家の武人たちと対決し、致命傷を負います。ロミオは自殺することなく、死にます。要はジュリエットがたとえ生きていたとしても、生き返ったとしても、ロミオは必ず死んでしまうのです。これが運命。絶望的な展開ということなのでしょうか。
最後、二人が死んだ後は、両家は仲直りをし、若き二人の死をもって初めて気づいた愚かさなんかも原作では言及されていたように思います。
憎しむこと、戦い合うことのむなしさ。
この作品では、そこは描かれていません。むしろ、最後の方のシーンでは、二人の死をもっても、両家のいさかいはまだ続くといった根深い確執が感じられます。
ロミオを含め、モンタギュー家を心底嫌う暴れ者、ティボルトの鈴木洋平さん。ロミオの友人、熱き男、マキューシオの行澤孝さん(劇団赤鬼)。ロミオの従順なる部下でもある右腕的存在、ベンヴォーリオの大塚宣幸さん(大阪バンガー帝国)。みんなイメージどおり。かっこよかった。
バルサザーという、ロミオにジュリエットが死んだことを伝える人、大西千保さん。本当は計画的な仮死であり、それを伝える文書が届く前にロミオの下へ向かってしまいます。これ、純粋にロミオに言わなくっちゃと思って行ってるんですよね。まさか、知ってたけどわざとではないですよね。一瞬、もしかしたらなんてことが頭をよぎったので。何かそんな不穏な雰囲気を醸し出していたような気がして。
どう転んでも、二人は結ばれない。死で決別する。
確かに作品名のとおり、絶望を思わせる作りになっているような気がします。
希望バージョンではどうなるのか、楽しみです。
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