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2012年12月23日 (日)

ワナビガ!【大阪大学劇団ちゃうかちゃわん】121221

2012年12月21日 大阪大学豊中キャンパス学生会館2階大集会室

少々、都合のいい展開でラストにもっていっている感はあるが、軽快なテンポでうまく作品のメッセージを伝えている。
きっと優しい子が創ったんだろうなと思わせるような、夢を描いた作品。
その夢は、愛する人から受け継いだ、仲間と共にみんな幸せになって欲しいという願いから生み出されている。

突然、電波ジャックで女神がテレビ画面に現れる。
二人の勇ましい守護神を連れた美しい女神は呼びかける。
私のところまでたどり着いたなら、あなたの夢を叶えると。

少年でありながら、あらゆる科学分野に精通した天才発明家、シノノメは女神の居場所を独自に突き止め、会いに行こうとする。
彼の夢は何だろう。
自分をかばって、事故で死んでしまったサイノメを生き返らせようと思っているのか。
彼女は、みんなが幸せに生きれるような世の中を願い、自らが神になりたいなんて本気で思っている、明るく前向きな女の子だった。
そんなシノノメを冷静に振舞いながらも心配する助手のヤクモ。

シノノメは独自でたどり着くのは困難と判断し、仲間を集める。
サイノメと同じように、神様になりたがる男、セイヤ。自分のことより他人のこと。それで幸せな世になるなら、身を呈することも厭わずという熱い男だ。まっすぐ前を向いて、直感で行動してしまうところがあり、それが後輩のツバキは心配でたまらず、いつも冷たく接しながらも温かく見守っている。
どこからか現れた紳士風貌のオタク。普段は家賃すらまともに払えない厳しい生活をしているみたいだ。女神に一目惚れ。

面子は揃った。
各々の夢を胸に秘め、この仲間たちは女神の下へと向かう。
そこで知る、女神の正体。
隠されたこの事件の謎が明らかになる・・・

謎を書いてしまうと、女神はシノノメが作ったアンドロイドであり、この技術をベースにサイノメを再生させようと考えていたみたい。
しかし、所詮、アンドロイド。自分が知っているサイノメの情報しかアンドロイドには組み込めない。これでは単なるサイノメの姿をした自分の意の通りに動くロボットでしかない。彼女はもっと自分には無い大きなものを持っていた。そのため、サイノメと同じような強い意思を持つセイヤに白羽の矢をたて、その魂を組み込もうとたくらんだようだ。

その計画を知り、それがシノノメの幸せにつながるならと自らの命を投げ出そうとするセイヤ。そんな、バカみたいに人のことを考える姿に、あの時、自分を助けようとしたサイノメの姿が浮き上がったのか。
セイヤを真摯に想い、その夢をいつでも応援しながら見守っているツバキの姿に、自分にもヤクモという助手が身近でいつも見守ってくれていたことに気が付いたのか。
深い感情の真なるところは分からないが、少なくともシノノメは、今の自分の幸せを見つめ、彼が成そうとしている夢は、周囲の人たち、サイノメ、そして自分自身ですら望んでいるものでは無いことに気付いたみたいだ。
ラストは、これまでの贖罪も兼ねて、シノノメは世の中に幸せをという、本当の夢に向かって動き出す姿が描かれる。もちろん、共に行動した仲間たちも、彼に少しでも協力できればと、各々の行動を起こしている。

結局はサイノメの願っていた夢へ向かってみんな動き出したといったところか。
それを叶えるのは、きっと天才的な能力を世のために発揮するシノノメであり、神になりたいと願う人たちの本当の真意を叶えてくれる神様はシノノメだったということだ。
そして、女神が守護神を連れていたように、その守護神は自分の想いを共に叶えようとしてくれるヤクモをはじめ、仲間たちなのだろう。

シノノメ、最内翔さん。ずっと少年のような無邪気な狂気を漂わせており、実のところ、このキャラが本当に何を考えているのかよく分からない。単純そうに見えるこの作品の奥深い難しさのほとんどは、この役にあるように感じる。影を残し、見透かせない巧みな演技だ。サイノメを本当に再生するつもりだったのだろうか。天才だから、その限界も分かりそうなものだが。このあたりは、くだらない武器を作ったりする抜けたところもあるから、まあそんなものなのかなあ。セイヤにサイノメを見出した彼は、もう一度、その口からサイノメが描いていた本当の想いを引き出して、自らの進む道、人のために生きる道の覚悟をしたかったのかもなあと思ったりしている。
ヤクモ、岩崎未来さん。終始、不機嫌そう。最後にシノノメが平和へ向かって進み始めてようやく笑顔が出る。後になって分かるが、それもそのはず。シノノメのことを想う彼女は、シノノメが狂気に満ちてきていることは心配だわ、自分のことを振り向かずにいまだサイノメを見ている嫉妬心もあるだろうし。冷たい中に感じるけなげさが微妙に出ていていい。
サイノメ、佐原瑞貴さん。登場して、すぐ死んじゃったからなあ。笑顔が飛び切り。すごい、柄悪いけどね。人の幸せを想いながら生きれる人の素敵な表情なのでしょう。
セイヤ、川原啓太さん。一番、目を惹いたなあ。このあまりにもバカみたいに純粋に前を向いている姿。サイノメの魂は既にこの人に入っているのかも。シノノメのために命を投げ出す覚悟を語るシーンはサイノメの姿が浮き上がってくる。シノノメも、そりゃあ撃つことは出来まい。
ツバキ、高濱裕子さん。何とまあ、男心をくすぐる、ツンデレキャラ。私は、女神のところにたどり着くなら、こういった彼女が欲しいと願うと思うな。まずは、自分の幸せという狭い考えが情けなくもあるが・・・
紳士風のオタク、石原光昴さん。シノノメはヤクモ、サイノメ。セイヤはツバキ。女神は守護神。みんな、想ってくれる人がいるのに、このキャラだけ寂しい。その悲しさを滲ますような自虐的な感じも漂わせての面白キャラに扮されていました。最後に得た夢もはかなき幸せで憐れみを感じさせる。
女神、須藤郁さん。美人を活かしたいい役どころだね。アンドロイドかあ。よくよく考えれば、最初からそのイメージで振る舞われていた。
守護神、橋詰隆一さん、伊藤佑治郎さん。かっこいい要員かと思ってたら、笑いもとる面白コンビだった。どこか母性をくすぐりそうな可愛らしいキャラの橋詰さんに、どっしりいかついんだけど、どこかボケてる伊藤さんの微妙な空気の掛け合いが楽しかった。殺陣はお二方ともさすがに、この役を任せられるだけあってキレのある動き。
あとは、警備員とか店員とかいらっしゃるんだけど、申し訳ないですが省略で。
メガネかけてるセイヤの友達、小林隆史さんかなあ。キモ面白かった。同じく、女性の友達、大家さんもやってなかったかなあ、葛本祥子さん。ちょっと痛い感じの女子高生と貫禄あるおばちゃん大家さんの雰囲気が面白かった。

話の展開のテンポがやや緩く軽いタッチなので、単純に表面的に筋を追って観ていたが、各々の登場人物の心情には複雑なものがある。
その中で、共通する夢。誰もが願いたい夢。みんなが幸せでありますように。
この本当に叶うとは思えない壮大な夢を信じ、その一歩として人のことを想って生きるという姿を貫いたサイノメ、そしてセイヤの真摯な姿が結局は多くの人を動かし始めたということか。
この世界はきっと変わる。そんな希望溢れる想いが詰まったラストであった。

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