ウィンドミルバレー 最後の三日間【林遊眠一人芝居】121215
2012年12月15日 船場サザンシアター
劇団ショウダウンPRESENTS。林遊眠さん一人芝居の第二弾作品。
劇団史上に残る最高傑作だと唄われているだけあって、圧巻の名作だった。
観終えて、言葉無くなる・・・
皇帝ラルフが統率する大陸最強のラルフ帝国。
隣国との境には広大な湖、山脈が存在しており、国の砦であると共に、侵略への障害ともなる。
帝都、ハイエンドには最強の騎士団2万人が備わる。
これは、この帝国のベルという軍師が、自らの信念に基づいて大切なものを必死に守った、たった3日間の戦いを語る作品である。
始まって10分。
世界観の設定を理解させ、2時間弱に渡る物語の開始を告げる。
もう、この時点で痺れてしまった。林遊眠さんに完全に魅了される。
恐らく、この時点で帰らされたとしても、人に感想を聞かれたら、もうめちゃくちゃ凄かったんだよと自信を持って答えていると思うぐらい。
北方には、魔物が住むと言われる誰も足を踏み入れたことのない未開の山脈。
皇帝ラルフは騎士団に命令する。
隣国を攻めるために、あの山脈を攻略せよと。
ベルは山脈にたった5人の側近を連れて、視察に訪れる。
そこで、1人の謎の少女に導かれるように、ある村へ。ウィンドミルバレー。
そこは、帝国に数々の戦争で追われた人たちが集まる小さな村であった。
ベルは戻って皇帝に報告する。
皇帝の指令は、北方攻略の拠点とするので、その村を制圧せよ。
ベルは心の中で、それに同意できない。
気付けば、再びウィンドミルバレーを目指していた。
それを知った皇帝は追手を派遣する。
ベルは追いつかれてしまい、共にウィンドミルバレーに向かうことになる。
追手の将軍はウィンドミルバレーの人たちに、従属するように高圧的に告げる。
それを村の長老は、ポリシーを持って断る。
武力行使で村を壊滅させると脅されても、屈服することなく抗い続ける。
ベルは思い出す。
幼き頃、自分の住む村が戦争で焼かれたことを。理由は、その村がただ国境に存在していたからという理由だけで。
焼死した多くの村人の中、バラバラになった父の躯を抱きかかえ、歩き続けた。
その後、奴隷のような暮らしを強いられ、もう抗うことを、憎しみを持つことを忘れてしまったのかもしれない。
ベルは大いなる決意をする。
自分はこのウィンドミルバレーの人たちと共に、帝国と戦う。
ここで前半終了。
後半は、この時から帝国との戦争を想定して、2か月間に渡って準備した軍師であるベルの数々の攻略が戦いの中で描かれる。
帝国軍2万人。一方、ベル側はたった400人。
小気味よく数々の罠にはまる大軍。それでも、数の威力にかなわず、もはやこれまでと追い込まれる窮地。昔、自分が体験した時と同じように多くの人たちを失ってしまったベルの苦悩。そこで、爆発する数々の人の想い。虐げられて生きてきた人たちの強い信念が、ベルを勇気づけ、最後まで必死に踏ん張り、この村、山脈に住む者たちのポリシーが塊となって、帝国軍に向かい合う。
下手に書くと、その魅力を汚しそうなので、後はDVDを購入して観ましょう。
ただ、後から、自分が思い出せるようにキーワードだけは書かせていただく。
雪崩、凍結した川に油、谷に追い込む。雇った傭兵のベルの信念に動かされた姿。
謎の少女の正体。危機一髪の時にやって来る山の獣人たち。
もう、ずっとどうなるのかと興奮冷めぬ状態。
一人芝居のスタイルが、もちろん、数々のキャラを林さんが演じるのだが、基本は林さん自身が、私たちにこの話を語るストーリーテラーのような形となっている。
もう、その語りが魅力的で、話に釘づけ。
前半でいったん休憩15分を挟みますが、ご本人は大変でかわいそうだけど、早く続き聞きたいから、休憩5分でもう後半始めようよみたいな感じになる。
第一弾の月下人魚の時も同じことを書いているが、身振り手振りを交えて、実際に動き回りながら、様々な登場人物に扮してもらって、絵本を読んでもらっているような感覚。今回は前作よりかは少し大人向けの絵本かな。
贅沢極まりない時間である。
よくある、眠る前にお母さんに読んでもらう絵本。もっと読んでとせがまれて、仕方なくもう一つ。
そんなことが許されて、じゃあもう一本となるなら、間違いなく残ってもう一本聞いて帰るだろう。
ただ、興奮するから寝れないけどね。
前公演時に3回ぐらいリピーターで観劇されている方がいらっしゃるみたいだったが、その気持ちがよく分かる。
何度も、林さんの手で語ってもらうその素敵な物語を聞きたくなるのだろう。
ベルは自分の心に秘めた強い信念で動く男。大切な自分の想いを貫くために、あらゆる物を一人で背負い込むことを厭わず、戦い続ける。
それは、多くの人たちの想いに支えられて実現する。そして、その姿は多くの人を魅了し、連鎖的に数多くの人の心を動かし、それぞれの大切な想いを気づかせる。
作品中のベルは、この3日間の決戦のために、たくさんの罠を準備しますが、それは単に頭を巧みに使っただけでなく、傷つきながら身を呈して同じ意志を持つ人たちに協力を呼びかけています。
決戦が開始した時、もうベルは立っているのがやっとなぐらいの状態。それでも、自分のため、そして多くの同じ強い意志を持つ人たちのために戦い続けるのです。
これは、まさにこの作品を公演する創り手の姿そのものであるようにも思われ、メタフィクションとして林遊眠さんはじめ、この劇団自身の物語であるように思えます。
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コメント
SAISEIさん。ご来場ありがとうございました★
そして素敵な感想ありがとうございますっv
物語がちゃんと伝わっていて、とても嬉しいです。
戦術、戦略などは、あの狭い空間でどう表現したらいいものかと、随分悩んだところで。
ホール入りしてからも、ステージとステージの合間にも、大幅な変更や若干の変更を加えたりとかで、随分思考錯誤してました。
その中でも、一人一人の登場人物たちの感情や想いも伝わっていたなら、本当に嬉しく思いますv
ベルたちの三日間、私自身の三日間、いつも観てくださっているSAISEIさんにまた見届けて貰えてよかったです★
次回も是非、楽しみにしていてくださいっ★★★
投稿: 林遊眠 | 2012年12月23日 (日) 09時39分
>林遊眠さん
コメントありがとうございます。
公演、終わっても、まだまだ仕事もお忙しいみたいで。
これからの国造りで忙しくなるベルと同じで、3日間の戦いではすまないみたいですね(゚▽゚*)
最高の作品でした。
長々と書きましたが、本当はもう言葉ありません。
素晴らしかったの一言です。
また、色々な作品でお会いできるのを楽しみにしています。
イリーカの力のこもったセリフが鬼気迫って、強い信念を感じさせて震え上がりました。
あのシーンが一番好きです。
投稿: SAISEI | 2012年12月23日 (日) 16時45分