ナッチョナリズムⅡ【プラズマみかん】121214
2012年12月14日 CAFE SLOW OSAKA
3作品のオムニバス。
ほのぼの、ブラック、社会風刺といった感じか。
劇団員の方々、各々が創られた作品だけあって、多種多様である。
(以下、ネタバレするので、公演終了まで白字にします。公演は土曜日まで)
・円状レール
ルームシェアしている二人の女の下に、田舎から一人の女が訪ねてくる。
三人は友達みたい。
どうも、部屋の二人はケンカ中みたいで、片方は奥に引っ込んでいる。
おもちゃみたいな台車に手紙をくっつけて、挨拶をしてくる。
今日はもう一人の女の誕生日。田舎から来た子は可愛らしいクッションのプレゼントをしたりする。
奥にいる子は、ケンカ中なのでカップ焼きそばを台車に付けて渡すぐらいしか出来ない。
どこかに食事に行くことになり、田舎から来た子の取り合いで本格的にケンカ。
でも、ケンカの内容が互いに全然傷つけあわない、むしろ普段言えない感謝を述べているようなもの。
もういい加減にしなさいと田舎から来た子が台車のおもちゃを放り投げようとすると、二人は声を揃えて、二人で必死にゲームセンターで取った物だから乱雑に扱わないでと。
あきれるように田舎の子は、こんな物、ドンキで売ってるよと。
オチがいまひとつ分からないのだが、微笑ましい女の子のケンカと捉えていいのかな。
コンビニもまともに無いような田舎の子が普通に知っているような台車のおもちゃを仲良く必死に取って喜ぶ都会に住む二人の女。
そんな二人共同の戦果を大切にして過ごしているように実は仲良し。
作品名は、二人だと直線に行ったり来たりするだけのレールが、旧友の存在で、クルクル回り続ける円状のレールに変わったみたいな感じかな。
・JOKER
夫が久しぶりに家に帰ってくる。
妻の顔は浮かない。
二人は離婚を決意しているのだ。
そして、そのことをまだ、娘に伝えていない。
今日は、はっきりお別れするために夫は戻って来ている。
そこに、娘が現れる。
いつ父が戻って来てもいいように、毎日料理を作ってけなげに待っていた娘。
今日も、得意のハンバーグの残りを準備し、即席でカマボコにろうそくを立てて、簡単なクリスマスパーティーを。
いつまでも、黙っているわけにはいかない。
離婚を伝える二人。
冗談でしょとからかう娘に、答える言葉は無い。
娘は真顔になり、話し始める。
前から分かってた。私も、もう子供じゃないから。
そして、逆に私からも伝えたいことがある。それは・・・
ブラックな作品。
嘘がテーマなのかな。
離婚を言わない嘘。娘を傷つけない優しい嘘であると共に、自分達に都合のいい嘘でもある。
娘にはそこを見抜かれていたか。けなげな嘘の自分を両親に見せて、そして究極の真実を突きつける。
一本、完全にとられた両親。嘘の代償は大きい。
・花畑
父と姉弟が食事。
食事をすれば、もちろんそれに伴い排泄が生じる。
でも、父はそれをしない。
鼻から何かを飛ばし、そこから花が育つ。
要はうんこをしない代わりに、鼻から種を飛ばして花を咲かす。
そんな薬を父は開発したのだ。
そして、それは今や世間で認められ、もう世の中にトイレは不要。トイレ撤廃条例を成立させるまでに至る。
でも、この家族はそれに疑問を感じている。
今や最後のトイレを持つ家となっている。
母は、父の行為が認められず、家にこもる。いや、トイレにこもる。
弟は、トイレの無い外で、今や花だらけになった草むらで用を足す。そのことでひどいいじめを受けている。
そんな中、姉はあきらめたように薬を飲んでしまう。
これは裏切りなのか。
家族の抵抗はむなしく、花に包まれた世界がやがてやって来る。
バカげた設定だが、実は社会風刺が効いた恐ろしい話である。
名のとおり、汚いもの、異なるものを全面否定する汚物・異物排除の概念が描かれる。
また、その理由が花が咲くなんていう、いかにもメリットっぽいものを掲げるから世間は騙されやすそうだ。
花だらけの社会が本当にいいのか。花は綺麗というのは、どんな視点から見てもそうなのか。花粉や植物生態系の問題は議論されたのか。
うんこは本当に汚いものというだけなのか。肥料やエネルギーに利用できる原材料という視点でも見たのか。生物の進化の過程で得られた排泄を代替するだけの作用がその薬に全て備わるのか。
一視点だけから見たメリットで判断する、凝り固まった人から見た意見を一般意見としてしまうというような、これまでも何度どなく繰り返されてきた人の過ちをまた踏もうとこの世界はしている。
何とかなったこともあるが、いつまでもそんなラッキーが続くとは限らない。
いずれ、取り返しのつかない世界になってしまわないか。
そんな恐怖が煽られるうんこの無い世界である。
当日チラシにも書かれているが、選挙に行かねば。こんな世界になってしまったら、もうどうしようもない。
うんこの代わりに咲く花を見て、誰が癒されたり美しいと思うだろうか。
| 固定リンク
「演劇」カテゴリの記事
- 【決定】2016年 観劇作品ベスト10 その3(2016.12.31)
- 2016年度 観劇作品ベスト10 その2(2016.12.30)
- 2016年度 観劇作品ベスト10 その1(2016.12.30)
- メビウス【劇団ショウダウン】161209(2016.12.09)
- イヤホンマン【ピンク地底人】161130(2016.12.01)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント