バードウォッチングダイアリーズ【イッパイアンテナ】121213
2012年12月13日 スペース・イサン東福寺
通常の公演とは異なり、大崎けんじさんに代わり、クールキャッツ高杉さんが作・演の作品。
ワンシチュエーションコメディーの王様といったイメージとは大きく異なります。
散りばめる伏線を、あっと驚く計算高さで回収するところは似ているかな。
話としては兄弟の恋愛話を語った半生記です。
ただ、その語り方は奇抜で、大げさに言うと人生論や宇宙論になんか行き着くような壮大な感覚を得るようになっています。
その中で、バカらしいくらいの小ネタもふんだんに散らしていますが。
(以下、筋は分からなくとも、ネタバレ要素があるので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで)
舞台には大きな鳥かごが一つ。上にカモメがぶら下げられている。その中が屋内。その外が、屋外のシーンとなります。
小嶋家の次男、海平がストーリーテラーとなって、物語が話される。
海平、そして、その兄であるカモメの恋愛物語である。
大学生時代、小嶋は、同級生の朴、葉子と一緒に赤いカモメ、ジョナサンを見る。
小嶋はマラソンの選手だった。
それから時は経ち、小嶋は結婚する。
身重の妻と海で空を眺めていた時、またあのジョナサンが。
その日、二人に羽根の生えた男の子が授かる。カモメと名付ける。
朴は孤児院を営んでいる。
葉子は結婚したが、うまくいかなかったみたい。
二人の子供がいたが、長男は孤児院に、妹は小嶋家に捨てて立ち去る。
それから、小嶋家では、新たに男の子が生まれる。
羽根の生えたカモメ、ヒバリと名付けた長女、普通に海平という名の次男。もちろん、ヒバリが捨て子であることは言っていない。
カモメが中学生になった頃、羽根が生えていても飛べないカモメを兄に持つ海平はいじめられる。カモメ自身は楽観主義で全然平気みたいだが、やはり気にして夜に飛ぶ練習なんかしたりしているみたいだ。
そんな苦労が実ったのか、リレー大会の時に、突風を受けたカモメは偶然にも空を飛んで一躍ヒーローとなる。
もっとも、その時以来、一切飛ぶことは無かったのだが。
海平は、どうも自分だけ家族に好かれていないように感じているらしい。ヒバリに自分のことが好きかを聞いてみたりする。
孤児院では、長男はアキラと名付けられ、すくすく育つ。
お金集めの募金を手伝わされたりする。
お情けをもらうために、リコは足が不自由、シズカは喋れない、ミキは色素性乾皮症なんて設定にして。洗脳されているのか、子供たちは本当にそうだと信じている。
カモメが高校生になった時、アキラと同級生になる。互いに陸上部でマラソンをしている。
そんな中、カモメは赤い鳥の着ぐるみを着た演劇部の女の子、アグリに恋をする。
その子は転校ばかりしていて、すぐにお別れがやって来る。
いつか、飛んで迎えに行くという約束をして、淡い恋は終わる。
海平はカモメの出場するマラソン大会をヒバリと応援に行くが、ずっとヒバリに目を奪われていた。
孤児院では、リコとミキがいい仲になっているみたい。
アキラはシズカとキャッチボールを無邪気にして遊んでいる。
葉子が突然、朴の下に訪れ、子供を返せと言ってくる。
葉子のことが気にかかる朴は、それを小嶋に伝えるが、我が子だと言い張り、了承しない。
小嶋と朴は、マラソン勝負をして決着をつけるが、小嶋が勝利して、子供はそのままとなる。
一方、孤児院ではシズカが真っ赤な車を盗み出し、暴走して孤児院を逃亡。途中、小嶋の妻を轢き殺してしまう。
この時、輸血で長女だけが血液型が違うため、あっさり血がつながっていないことがバレる。
さらに、アキラは孤児院に火を放ち、逃亡。小さい頃のトラウマで放火癖が現れたみたいだ。
孤児院は全焼。ミキは焼死する。立ち尽くすリコ。
父は血のつながりがあっさりバレた罰なのか、突然失明する。
カモメは母の死をきっかけに羽根を取る手術をする決意をする。
そのため、高校を中退し、どこかの資産家の家に住み込みで働く。
そこには、兄妹と犬が。
妹は幼き頃のなまはげの性的虐待が原因で喋れない。だから、赤に異常に怯えます。さらに、心臓も悪く余命はあまり無い。
その中で妹と仲を深めるカモメ。
海平はAV会社で男優のマネージャーをしている。男優はシズカだ。よもや、我が母を轢き殺したとは知らない。
シズカは気が付いたみたいで、罪滅ぼしか、SEXのテクニックを伝授する。
そして、流れで、女優に筆降ろしをしてもらうことに。これも、海平は知らないが実は葉子。
ヒバリは実の母親を探している。アキラは放火の指名手配犯となり、変装して逃亡し、どこかで働く。
そこである女性と出会う。アグリ。
海平はヒバリの実の母親が葉子であることを知る。
葉子と会わせるためにヒバリを連れて、会社に。
そこには、リコがシズカを追い詰める姿が。ミキを殺したアキラの居場所を突き止めるために脅している。
海平はそんな無茶苦茶な状況の中、葉子の住所を聞き出し、ヒバリをここから逃がす。
ヒバリは葉子の住むマンションに向かうが、そこは火事。
アキラはアグリに恋心を抱き、プレゼントを買うが、その場でアキラに刺される。
資産家の家の妹についに死が迎えに来る。
最後にカモメは望みである海に連れて行き、そこで永遠の別れとなる。
悲しみと怒りで、カモメは極限に達し、空を飛べるようになる。
そして、アグリと出会い、長きにわたる約束を果たす。
ヒバリは海平の下に向かう。
無事だったみたいだ。
葉子とは会えなかったことを伝える。
そこで、海平はヒバリに告白。
ヒバリもそれを受け入れ、二人は結ばれる。
空には赤いカモメが何匹も飛んでいる。
火事とも相まってそれは美しく輝く。
そんな中、空を飛び立つカモメとアグリ。抱き合う海平とヒバリ。なぜか目が見えるようになった父・・・
覚えている限りではこんな感じです。
順番や流れはちょっと違うところがあるかもしれませんが、と言うかどう考えても覚えきれないのでありますが、まあざっくりはこういった単なる海平とカモメの半生を描いた物語となっています。
で、何なのかと言われると答えに窮するような作品です。
ただ、こんな稚拙な文章にするから面白味が無くなるのですが、実際に観てると、絡み合う人間関係が巧妙に仕掛けられており、非常に面白い話となっています。
ジョナサンは何でしょうか。しかも赤い。
赤い着ぐるみ、真っ赤な車、火事、なまはげの赤・・・
何か分かりませんが、そんな数々の試練を乗り越えたり、ダメだったり。
そんな限りのある中で、自由に人を愛し、楽しく人生をみたいな感じでしょうか。
海平、ヒバリはずっと兄であるカモメを見て生きてきた。羽根の生えた人。鳥。
そして、カモメは、ジョナサンと共にずっとこの半生を過ごしてきた。
明らかに異質でも赤く堂々と空を飛び続けるジョナサン。異形でも熱い気持ちを胸に秘めて人生を走り続けるカモメ。
そんな人達が、襲いかかるたくさんの試練とぶつかり合いながらも、自分なりの生き方を貫き、最後に自分だけの愛を手に入れたといったところでしょうかね。
鳥かごという閉鎖空間と海のような完全な開放空間の対照なんかも、人生なんかを表現しているのかなあ。
カモメ、山本大樹さん。羽根の生えた異常な姿を憶ともせずに自由気ままに生きる。とても山本さんらしい自由で楽しい雰囲気を醸していました。走ったり、ビンタされたりと大忙し。
ヒバリ、川北唯さん。海平にとっての姉としての姿が強く出てるかな。時折見せる、自分の存在の不安みたいなものを感じさせるところがぐっときます。
海平、小嶋海平さん。半生を日記にしたような形でのストーリーテラー。淡々とした独特の語り口調が、奇抜なキャラが多い中で物語の真実味を浮き上がらせています。
父、クールキャッツ高杉さん。奇才だけあって、奇抜な設定で不可思議な作品を創られる。なるように生きようみたいな大雑把ないい加減なところと、その中で色々な感情を胸にして必死に生きている人の姿も感じられて、不思議な感覚を得る。
母、小林由実さん。ちょっととぼけたこの役と、薄幸の美少女役として資産家の家の妹を演じる。共に死んでしまう、変えられない運命のようなものを感じる役どころ。だからこそ、その時を精一杯生きるのか。
朴、ピンク地底人3号さん(ピンク地底人)。初めて、役者さんとして拝見したと思う。孤児院の管理人のこの役、そして、資産家の家の兄とどちらも穏やかな雰囲気。その中に、何か隠し持つ怪しさも漂わせる。
リコ、村松敬介さん。この役より、資産家の家の犬の方が目立つかな。思ったように生きられない苛立ちや復讐の憎しみを持つ不幸な人生を匂わす。
シズカ、阿部潤さん。個性を活かした役どころ。障害者から、いかがわしすぎるAV男優まで味がある演技が見れます。その他のサブキャラでもちょこちょこ面白いことされてました。
アキラ、野村侑志さん(オパンポン創造社)。トラウマを引きずり、楽しくワイワイやっている時も、アングラ精神を強く漂わす演技。自劇団でも見せる男の生き様みたいなものが感じられる。
ミキ、三鬼春奈さん。葉子もこの方。幼さを残すこのミキという役と、酸いも甘いも知り尽くしたような大人の女性を対照的に演じる。共に火に包まれてしまうような数奇な運命のキャラ設定なのかな。
アグリ、渡辺綾子さん。観たら分かりますわ。このキャラ、凄く可愛い。外観はもちろん、その性格とかも。男心をくすぐりますね。サブキャラで学校の生徒とかの時は、ちょっと優等生設定にしているのか、みんなと少しノリを異にする抑えた感じにしていました。
深く掘り下げるともっと作品の本質も見えるのでしょうけどね。
なかなか、カモメをどう捉えればいいのかが難しく、そこまでは分かりません。
ただ、キャラの絡み合いの仕掛け方が非常に面白く、人生って出会いの積み重ねだなあなんてことを感じさせられたりします。
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