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2012年12月 8日 (土)

東京ブラストーリー 青組【神戸大学演劇部自由劇場】121208

2012年12月08日 神戸アートビレッジセンター

祝、今年度400本目の観劇。
う~ん、記念観劇だから、シェークスピアだとかチェーホフだとか、頭良さそうな作品を観てかっこつけたいところだったが、こんなのになってしまった。
印刷ミスなんじゃないのと思ってしまうような胡散臭い作品名に、実際のストーリーも下着会社同士が、本当に新型ブラジャーを付けて戦争するという頭おかしいんじゃないかと思えるようなもの。

と言って、バカにするのは早計だ。
この作品は、こんな奇怪な設定の中で、パロった元ネタの純粋な恋愛ストーリーをしっかり踏襲しながら、ふんだんに笑いを組み込んでコメディーとしても十分過ぎるものとして仕上がっている。
単なるおふざけにしないきめ細やかなストーリー展開に、それを演じる魅力的な役者さん方。
クオリティーの高さでは定評のある、この劇団、そして力ある所属されている役者さん方によって見事に創り出された画期的な秀作である。
演劇じゃないとこんな作品は出来まい。そして、向上心・冒険心を豊富に持ち合わせた力ある劇団でないと公演は出来ないだろう。
素晴らしい作品だと思う。
満足な記念観劇となったことに感謝。

(以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は明日まで。これと同じ、青組の公演があります)

東京では、二つの下着メーカー、チャコール社とシュリンプ社が熾烈な開発競争を繰り広げている。
それは、いつしか軍事衝突にまで発展し、東京は戦場と化している。
開演、わずか5分。
二社各々のテレビ放送や国営放送らしきものをテンポよくシーン展開し、あらかじめチラシに簡単なあらすじは書かれているものの、これだけでだいたいの設定をきちんと把握させる。
そして、キレのあるープニングダンスで話は始まる。
とても、綺麗で圧倒させられるスタートである。

少々、劣勢であるチャコール社。
新型ブラジャーが開発される。通称、ヴィーナス。
これを着用した女性特殊部隊の戦地投入により、戦況は一変する。
チャコール社の部隊は、社長でもある長官、特殊部隊を率いる隊長。
特殊部隊の現場まとめ役である頼れるお姉さん、千鶴。
明るく元気であるが、少々、向こう見ずな気の荒いところがあるさとみ。
まだまだ新米、少し間の抜けたところがある保奈美。
あと、2人の特殊部隊と、戦闘はしないけど軍略を練る研究者のみゆき。

一方、シュリンプ社。
神経質そうな厳しい上官の下、父親の仇、会社に尽くすために必死に頑張る洋介、自分のことをあまり語らず、すぐはぐらかすようなところがある裕二、その他3人。
ヴィーナス登場以来、やられっぱなしである。
こちらも、負けじと男性用ブラジャーを開発。ヴィーナスの男性版といったところ。開発は急速に進んだ。どうも、スパイを送り込んで、情報を得ているみたい。

戦闘中、偶然にも保奈美と裕二は出会う。
もちろん、最初は単なる敵同士であった。
でも、互いに敵だと思えない何かを感じたらしい。
集合場所が分からなくて迷っている保奈美を、裕二はそこまで連れて行ってあげる。
民間の怪しげなヌーブラを付けた軍団に保奈美が騙されてヴィーナスを盗まれてしまった時、裕二はそれを取り返してあげる。
保奈美は裕二に会いたくて、国境警備隊に志願したりする女心を見せる。
続く戦争の中での、こんなかすかな出会いが二人の恋心を深めていき、惹かれあっていく。
しかし、戦い合えない二人を双方の仲間は強く非難するようになる。

戦争はますます激化する。
千鶴がシュリンプ社に寝返る。スパイだったらしい。
ヴィーナスを投入しても、依然、劣勢のチャコール社は、戦争を終結させるための最終兵器、いやブラジャーの開発に成功する。その名は、サターン。
ヴィーナスの何百倍もの威力を持つブラジャー。有望な保奈美のサイズに合わせて作られている。
長官は、保奈美にサターンを付けることを命じるが、保奈美は了承しない。
もう、戦いたくないらしい。
そんな、姿を見た開発者のみゆきは、自らが装備すると言い出す。

最後の戦争が始まる。
みゆきはサターンを装備して戦いに挑むが、その力を制御できずに死亡。開発者なので分かっていただろうに。このサターンはあまりにも強力過ぎて、サイズが合う保奈美にしか使えないことを。

保奈美と裕二は、戦火を逃れて出会い、二人で逃亡することを決意する。
二人が初めて出会った場所での再会を約束して、別れて逃亡。
その途中、保奈美は長官に出会い、みゆきが死んだことを告げられる。
このままでは、きっと次はさとみが同じ目に合う。
自分が装備するしかない。
サターンを装備する保奈美。
しかし、その力は想像を絶するもので、保奈美は悪魔の化身、無差別破壊兵器となって東京を壊滅へと向かわせる。
もう誰も止めることが出来ない。

少しだけ残る保奈美の意識がそうさせたのだろうか。保奈美は裕二の下へと向かっている。
出会った裕二は、全てを知る。
そして、悲しい決断をすることになる。
保奈美の暴走を止めるには、ブラジャーのホックを外すしかない。
しかし、それは同時に保奈美の死を意味する。
抱き合いながら、保奈美のホックを外す裕二。

その一年後がラストシーン。
娘のようにかわいがっていた自分の部隊の女の子たちを守れなかった、多くの人を亡くしてしまった悔恨から、チャコール社の隊長は東京を治める立場になっているみたいだ。
東京は徐々に復興へと向かっている。もう、二度とあんな過ちは繰り返されないであろう。
そんな中、保奈美の墓前に花とブラジャーを供える裕二の姿が・・・

舞台では、当然、男女関係無しにブラを付けた人たちが、真剣に戦い合い、そして各々がこの戦争への想いを語っている。
不条理に見えるこの状況が、もう最後の方は、何の違和感も無くなり、普通のラブストーリーとなってしまう。
脚本の力、役者の本気の力であろうか。
パロったおふざけにしても、それが非常に巧みであり、話としても魅力的なものとなっている。

役者さん方は、とても思いっきりが良く、その心情表現がよく伝わってくる。
そして、身体能力が高いというのか、動きのキレがいいので、全体的な流れも、そんなリズム感のあるテンポを感じながらの観やすい観劇である。
何よりも、全員がしっかり笑いを取れるという頼もしさか。中には飛び抜けている人がいたが。

裕二、コセマナトさん。不思議な感じだな。ごく普通の男といった感じなのだが、そこが逆に魅力を醸し出しているのか。そのちょっと素直じゃないようなところや、おどけたり、苦悶したり、思い切って感情をあらわにしてしまうような一つ一つの心情表現が、等身大の男っぽくて、感情移入とてもしやすい印象を受ける。
保奈美、山本やまみさん。モデルさんかなあと書きたくなるような舞台でのお姿。その凛とした外観とは、少し違和感があるどこか天然っぽいおどけたチャーミングな雰囲気が素敵。うん、多分、元ネタの保奈美が確かにこんな感じだったような気がする。

洋介、大原嘉左衛門さん。父親の仇やら、会社に尽くすとかいう執着心が滲み出る。戦争という、遊び幅を持った余裕の生き方がなかなか出来ない環境に設定がなっていることがよく理解できるような演技である。
千鶴、Sakuraさん。面倒見のいいリーダーシップが取れるお姉さん役。最後に、この戦争への秘めた悲しみを持っていたことを語り出す。それだけに、人との絆をとても大事にしているような感じであり、スパイであっても、両社のことを常に考えているようであった。
さとみ、山岸理花子さん。猪突猛進でかなり柄悪いキャラだが、同時に人への情も厚く、非難しながらもやっぱり仲間を手にかけたりすることは出来ない。優しいところも持ち合わせるところを散在させる。アクションはなかなか迫力あり。
みゆき、柔銀行さん。この掴みどころのないほわ~っとしたのは、役作りかなあ。確かに研究者はそんな変わった人多いけど。サターン装備後に、これまでの雰囲気を一蹴したので、少しびっくり。

長官、飯嶋松之助さん。この方が脚本かあ。凄いもの作るなあ。役はちょっと異常性を感じさせる気味悪いキャラ。実際に変態行為もしている。最後に大それたことになって、自分はただ最高のブラジャーを作りたかっただけとか言って、逃げ出していくが、この作品もそんな感じなのかなあ。何気ないおふざけで、ブラなんて面白いといったところが、こんなにまでしっかりした作品になってしまって。出来上がる過程で怖くはならなかったのだろうか。もちろん、逃げ出してないから、こうして観れたわけなのだが。
上官、スーパーボールトモゾヲさん。芸名の意味を知りたいね。ものすごく嫌な感じの上司っぷり。神経質で、自分は特に何もしないのにやたら規律を重視みたいな。何か昔、こういう人の下で働いたことある。将来、そんな人にならないことを願って。
隊長、うえしライダーBLACKさん。色々と書きたいことあるけど、一言でこの方、天才的な役者さんですよね。計算して、色々されてるのかなあ。もう、勝手に空気を読み取って自然に言葉や動きが出てるんじゃないだろうかと。いちいち、面白く、それでいて、最後の方なんかは、深い心情表現をいい表情でされてかっこいいし。他の公演でも拝見したことあり、よく覚えている方だけど、あらためてその魅力に感服。凄かった。

とても面白い作品でした。さすがは名高い自由劇場だ。
出来ることなら、ダブルキャストのもう一つの組も観たかった・・・

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