これまでの時間は【空晴】121206
2012年12月06日 HEP HALL
劇団10回目の記念公演。
これで6回目の観劇なので、けっこう観てるな。
DVDも2本ほどあって鑑賞した覚えがあるので、ほぼ全部観てるのか。
それだけ、お気に入りの劇団。
それは、いつ観ても、必ず期待を裏切らない心温まる作品であること。
この日は、この観劇の前にも、なかなか素晴らしい心温まる作品を観劇。
心ポカポカ。優しい気持ちになっている自分が嬉しい、素敵な一日となった。
(以下、ネタバレ注意。公演が東京もあって、12月中旬まで続くため、白字にすると戻すのを忘れるのでそのままにしています。ご注意願います)
舞台はある家の倉庫。
撤去するらしく、荷物整理中で、中はぐちゃぐちゃ。古いタンス、鏡台やら、ダンボールの箱が積み上がっている。
この家に住んでいるのは、父と娘。母親は、祖母の看病で実家に戻っているみたい。
よくありがちな、父は妻がいなければ薬の場所も分からん状態みたいで、しっかり者の娘が今は世話を焼いている。
娘は手に何か封筒を持っている。重要な書類が入っているみたいだ。父に渡して話をしたいみたいだが、なかなか切り出せない。
やがて、父は倉庫を後にする。
残された娘は独り言を言いだす。いや、独り言ではない。タンスの中に人がいる。
高校の吹奏楽部の先輩。
どうやら、進路のことを父に打ち明けるのに不安で隠れて見守ってもらっているみたいである。
これはもう少し後で明かされるのだが、東京の大学に娘は進学したい。でも、今のような状況で父一人を置いて家を出ることにためらっているのだ。
一人の男が訪ねてくる。
父の兄だと言う。娘にとっては伯父さんということか。
でも、会ったことが無いのでどうにも怪しい。
実は、父と伯父さんは幼い頃に生き別れになっている。
祖父と伯父さんが家を出ていき、残された祖母には父が付いて、この家に住んでいたみたいである。
倉庫整理するから、一応、父が手紙を出していたらしい。もっとも、父ですら30年振りぐらいらしいが。
これも後程、明らかにされるが、胸には封筒。中には国鉄時代の青春18切符が入っている。今回、ここに来るときに祖父から手渡されたらしい。それは実は、別れ別れになった時に祖母が、祖父に渡していたものだったようだ。
そんな中、いつも怪しい隣人がやって来る。
ややこしいことになると困るので、とりあえず、伯父さんをどこかに隠す。タンスはダメ。鏡台の後ろにでも。
大阪のおばちゃんそのものの強烈なキャラの奥さん。旅行の日なのに、それを忘れるダメ亭主に愛想をつかせて、家を飛び出してきたみたい。手には、封筒。本気では無いようだが、中には離婚届を持っている。
旦那が探しにやって来る。急いで隠れる奥さん。タンス、鏡台の後ろはダメ。とりあえず、ダンボール箱の中にでも埋もれてもらうか。
さらに来客。
今度は母の弟。娘にとっては叔父さんか。
昔、この家に下宿したりしているのでみんなとは顔見知りである。
今日は、実家に行く前に少し寄ったみたいだ。
ちょっとお調子者みたいで、驚かせようなんて思ってか、倉庫のすだれで身を覆って、人が来るのを待ったりしている。
これも意味は後でわかる。胸には封筒。中には辞表。姉がこの家を出ているから、色々と迷惑をかけている。自分が実家に戻って、そこで再就職すれば全ては丸く収まるんじゃないかと思っているみたい。
かくして、全員が倉庫にこんな感じで揃う。
もちろん、演劇らしく、入れ替わりをタイミングよく、巧妙に仕掛けながらの展開。
テンポよく、コミカルな展開を笑いながら楽しむ。
そして、途中で大問題が起こる。
離婚届と大学の進路案内がすり替わる。
父がその離婚届を見てしまう。何も知らないので、母から突き付けられた離婚届だと思う。それも、娘に間接的に手渡して。
娘を問い詰めるが、娘もそんなことは露知らず。進路案内を見ていると思うので、昔からずっと考えていたことだなんて言うから、もう父は愕然。吹奏楽部の先輩までもが、娘の真剣な気持ちを分かってあげてなんて言うから、赤の他人にまでこんなことを言われてと大パニック。
話はそのパニック状態の中から、各々が持つ封筒に込めた想いを明らかにしていく。
そこには、人が人を想う優しい気持ちが含まれていた。
そして、最後にはとんでもない勘違いだったことが分かり、話は収束。
起承転結がしっかりしており、前半で好きなだけばら撒いた伏線を、全て、そこには真摯な気持ちがあったんだという形で回収しながら、ハッピーエンドを迎える。
娘はいつでも父のことを想って、自分の人生までをも考えていた。
そんな娘を、先輩として純粋に応援してあげようとしていた男。
祖母のことを想い、母が実家で暮らすことを許す父。父と娘で頑張ることは、昔、母と二人だけで暮らした自分のつらかった時期を思えば、大変なことだと分かっているが、母を思いやって、それで何とかやっていこうと考えた。
そんな父の姿に、母の弟、叔父さんは自分が出来ることは何かと一生懸命考えた。
父の兄、伯父さんは、昔、別れ別れになった時に母はいつでも帰って来れるように父に切符を渡してくれていた。
祖父は少し痴呆が見られるようになったらしい。そんな、今、伯父さんは父と名前をよく間違えられるらしい。幼き頃、別れても、祖父はずっと父のことを想い続けていた。
後、どこまで関係しているのか、似た者同士のおかしな隣人夫婦の絆。
全員が、自分の道を進む時に、自分のことだけ考えるのではなく、その周囲の人のことを想いながら生きてきた人たち。そんな人たちだからこそ、優しい絆がこんなにまでこの家を中心に育っていたみたいだ。
最後のシーンは、それから少し時が経ち、娘がこの家を出発する日となる。
ちょっと寂しそうな表情であるが、満面の素敵な笑顔でお別れする父と娘の姿が映し出されている。
いつでも、この家に戻ってくればいい。そこには、あなたのことを想う人たちがきっと待っている。
これが、この劇団のココに来たらコレがあるという考えを積み重ねて作品を創ってきた姿と一致させているのであろう。
確かに何かつらいことがあったら、戻りたいなと思わせるような劇団であり、そんな作品をいつでも用意してくれているように思う。
父、上瀧昇一郎さん。何とも言えない味のある姿。娘を溺愛してそうな感じ、厳しく父の姿を見せる感じ、幼き頃に別れた兄に反発する感じ・・・様々な心情描写がどれも優しくとても素敵だった。
娘、古谷ちささん。新人さんらしいが、気立てのいい世話女房みたいな感じから、やはり幼き高校生といった感じまでこれまた多彩な姿を見せる。
先輩、上田康人さん。ずっと隠れていたからなあ。最後に、真摯な説得を父とかわします。歳離れても、一人の女性を想い合う男同士の真剣なぶつかりみたいでかっこよかった。
伯父さん、稲荷卓央さん(劇団唐組)。いでたちが凄く迫力あるのだが、実はけっこう可愛らしいコミカルな感じで演じられる。しっかりしてそうで、どこか抜けている。父とやっぱり兄弟だなあなんて思わすところも。
叔父さん、平本光司さん。キャラがぴったり。弟の方のおじさんって、すごくひょうきんでどこかおどけた感じの人が多くありませんかね。そのイメージです。頼りなくて要領悪いけど、一生懸命頑張っている感が伝わる姿でした。
隣人の旦那、小池裕之さん。いつも面白いなあ、この方は。今回もちょっとデリカシーの無いKY感漂う姿で場を盛り上げたりしらけさせたり。
奥さん、岡部尚子さん。貫禄の演技。喜劇王みたいなくらいにおばちゃんキャラでガンガンやられてた。
前回もそうだったのだが、謎解き要素がすごく巧妙になってきて、笑っていたけど、いつの間にか泣かされそうになるといった形式が確立してきたみたいである。
謎解きと共に、その人の心も探って、その温かい気持ちに触れるような観劇が出来るようになっているからだと思う。
10回を迎え、今後がますます楽しみ。
次回は来年8月。ちょっと長い。さみしい。
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