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2012年12月 2日 (日)

地獄のアニキ ~命短し恋せよ極道~【よろずやポーキーズ】121201

2012年12月01日 一心寺シアター倶楽

罪人を裁く地獄という場所で、人の弱き心を描くような話でした。
憎しみから罪を犯してしまう人間。
それを裁き、罰を与えるのも地獄ならば、それを救うのも地獄。
人間は愚かだから、人への憎しみは連鎖し続け、罪人が消えることは無い。
でも、自分が想われていることを知った時、その憎しみは消え、いつの日かそんなことから人が罪を犯すことの無い平和な世の中が出来るのではないだろうかという希望を感じるような話です。

(以下、ネタバレ注意。公演終了まで白字にします。日曜日まで)

任侠の道を行く男、竜一。
やくざ者だが、任侠の精神をしっかり持ち、本当は優しい男。
たまたまぶつかってしまった買い物帰りの女の子の卵を割ってしまったりしても、きちんと弁償し、その子を気遣ってあげたりする。
それでも、やくざはやくざ。親分を敵対する組に殺され、その憎しみをつのらせる。
敵対する組の大掛かりな取引現場を掴んだ。
そこで、仇討ちをするつもりだ。
こんな道に進んだばかりに愛する人も失っている。
その人からは私の分も生きて欲しいと言われている。
でも、・・・
兄貴と慕ってくる子分、虎を巻き込むわけにはいかない。
でも、子分の親分の仇を討ちたい気持ちは真剣だ。
二人は、仇討ちのために取引現場に向かう。
そこで、竜一は突然の事故に巻き込まれてしまう。

気付けばそこは地獄。
亡者たちが獄卒と呼ばれる鬼たちに好きなようにいたぶられている。
自分は死んでしまったのか。
やらなくてはいけないことがあったのに。
そこに一人の謎の男が現れる。
閻魔様が篁という男に囚われてしまった。
彼は何が目的なのか分からないが、罪を犯していない人も地獄に送り込んで何かをしようとしている。
閻魔様を救い出せば、生き返らせると言ってくる。
まだ、自分は現世でやることがある。仇を討たねば。
獄卒だが、落ちこぼれの鬼である、虎そっくりのトラという鬼を連れて、その依頼を受ける。

篁の側近には美女と腕っぷしの強い野獣のような男。
獄卒を統率するちょっと頼りない牛頭、馬頭。
何でここにいるのか、源義経、弁慶、ジャンヌ・ダルク、平賀源内なども、刺客として放たれる。
そんな連中と戦いながら、篁の陰謀を暴き、閻魔様を救出しようとする竜一。
しかし、彼のそんな憎しみの心が、自らをも鬼と化してしまう。
どうしても消すことの出来ない彼の憎しみの心。
しかし、トラの竜一を想う心、かつての恋人の言葉が彼の心を揺り動かす。

篁の計画を暴き、閻魔様を救出した彼は現世に戻る。
そこで、・・・

憎しみの連鎖を断ち切るような話。
閻魔様は罪を犯した人を裁く。
でも、そんな罪人は後を絶たない。このままでは世界はダメになる。
罪を起こす前に、地獄に送ってしまう。そんなことから篁は、こんな行動を起こしていたみたいだ。
終わりなき人の罪深さに絶望したのだろうか。形は違えど、それは世界の救済だったのかもしれない。
でも、閻魔様はまだ人間を信じたいという気持ちも持ち合わせていたみたいだ。
人間は罪深い愚かな生き物であるが、それを超える人を想う優しい心も持っている。
それがきっといつの日か世界を変えることを信じているのだろう。
罪を容赦なく裁き、地獄の苦しみを与える閻魔様の一面と共に、同時に持つ人を罪から救う慈悲の心といったところだろうか。

最後はそんな閻魔様の信じる希望に応えるような行動を男は取る。
現世に戻った彼は仇討ちを警察に任せて、自らが傷つけることを断念する。
地獄での経験が彼の憎しみの心を消したみたいだ。
ただ、運悪く、彼は一人の少女を強盗から救うために犠牲となってしまう。
子分の虎には、自分の仇を討つなんてバカなことは考えるなと言い残す。
憎しみの連鎖を自ら断ち切り、少しでも世の中を変えようとする。

地獄に再び戻って来た竜一。
閻魔様の裁きを受ける。
天から一本の赤い糸。
裁きは、この赤い糸をたどって向かえ。
その先には、竜一の最も会いたかった最愛の人が待っている。

話はいつもながらの個性的な役者さんの各々の小ネタをふんだんに盛り込みながら、テンポよく進める。
進行にややくどいところがあったりはするが、まあそのあたりは勢いと、なかなかのアクションで退屈感は出さない仕組みだ。

当日チラシを見ながら、役者さんに簡単にコメント。
何かすごろくみたいになっているので、順番に。
竜一、浜沖龍生さん。任侠の精神を重んじる朴訥な男。要は高倉健みたいなイメージである。アクションもお得意とされるだけあって迫力抜群。
虎、トラ、須藤牧子さん。共に落ちこぼれでお調子者。でも、純粋に人を思いやる一直線の心が溢れ出る。純粋で屈託のない笑顔がとても素敵。
竜一の亡くなった恋人、渡辺みゆさん。彼を真摯に思いやる本当の恋人の姿。だけでなく、鬼が化けた彼を騙そうとする偽りの姿も演じる。清廉な姿と醜悪な姿の切り替え。いい役どころで、最後に竜一と出会うシーンなどは美しく映し出される。
多分、買い物帰りの女の子、藤本真梨子さん(メインキャスト)。実年齢、少女ではないと思うのだが、妙に幼さを醸し出す。普通に可愛い。実は、この作品の未来で真の平和を導き出す子となっている。
謎の男、芦川諒さん(Common days)。ネタバラシになるが、閻魔様のもう一つの顔である地蔵菩薩が正体。淡々と冷静な振る舞いの中で、得意のオトボケも巧みに盛り込んでくる。相変わらず笑える。
牛頭、辻田有美さん。牛を活かしたキャラ設定で、少し気弱な獄卒鬼。
馬頭、穴吹良太さん(メインキャスト)。同じく、馬を活かしたキャラ設定。思ったら一直線みたいな猛進型の獄卒鬼。
5人ぐらい獄卒・亡者の方がいらっしゃるのですが、申し訳ないですが、区別が付いていないので省略。ダンスとかで舞台を盛り上げます。すごくセクシーな方とモデルみたいな若い子がいたなあ。

源義経、中聡一朗さん(激富)。アクションさすがですねえ。切れるので見ててやはりかっこいい。
武蔵坊弁慶、中尾周統さん。当日チラシの写真ではずいぶんとしなやかな感じで写られていますが、実際はかなりごつい感じ。声も太く、弁慶のイメージにはまっている。
ジャンヌ・ダルク、久保田純世さん。中世貴族みたいな感じだが、ちょっと線が細いので、勇ましいっていうイメージはあまり湧かないか。どちらかと言うと可愛らしいジャンヌ・ダルクでした。
篁の側近、美女、美沙香さん。この方、前回公演でも同じこと書きましたが、困る。ある理由で、絶対に目がいくので、集中してセリフを聞き取れなくなる。ナルシスト風の女王様って感じです。
平賀源内、原圭太郎さん(吉田商店)。最初、義経、次にジャンヌ。歴史上のキャラを登場させて、戦わせるのもいいけど、連発するとちょっと飽きがこないかなあなんて思っていましたが、登場と共にそんな考えは無くなりました。さすが、よく考えて創られている。とんでもない源内でした。
篁の側近、野獣、三宅大介さん(演劇集団ワチャチャ丸)。今回は笑い少な目。クールで強い男を演じます。殺陣は凄い。牛刀みたいなものを置きにいったりするのではなく、力強く振り回すので、迫力あります。
篁、杤尾涼さん。中性的で、安倍晴明みたいな感じか。思い悩んだ上での、自らが下した決死の決断。それを遂行するという強い意志を込めたセリフの言い回しが印象的です。閻魔様にいさめられますが、最後まで、自分のポリシーに悔いは無しといった感じで凛としていました。
閻魔様、喜多孝夫さん。前説の変なキャラの方が印象に残ってしまった。しっかりしているのか、ちょっとおふざけがあるのか微妙なラインを彷徨う感じのキャラでした。

エンターテイメント色豊かで、メッセージ性も強く込められた作品。
個性的な役者さんの持ち味を活かしながら、テンポよく進む話を楽しめました。

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