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2012年12月 2日 (日)

妖怪探偵くまげら【しろみそ企画】121201

2012年12月01日 芸術創造館

共存共栄みたいな話。
相容れられない宿命を持った人と妖怪が共に生きれる世界。
難しいけれど、やはりそこには互いへの想いが必要になってくるんだろうなといった感じの作品。
妖怪探偵という、ちょっと風変わりで味のあるキャラを主人公に置き、絡み合う人と妖怪の関係をほぐしながら話を進める。
ほぐした後に残る物は、きっとそんな世界もやってくるかもしれないという希望みたいだった。

(以下、一応ネタバレ注意。あらすじを書いていますが、悲しいことに読み返してみてもほとんど意味が分からないので、白字にはしません)

話はくまげらという男がまだ、老師の下で修業をしていた頃に、雪女と出会ったことから始まる。
くまげらと雪女は恋に落ちる。
くまげらは雪女のために笛を吹く。雪女は自分のために吹かれるその笛の音が大好きだった。
が、やはり人間と妖怪。
雪女が喋れば周りが凍り付いてしまうような状況ではなかなか生活がうまくいかない。
雪女はやがて、くまげらの下を去る。
その時、雪女がくしゃみをして飛んだ鼻水の針のような氷がくまげらの心臓に突き刺さる。
くまげらは、妖怪が見えるという特殊な力を身に付ける。そして、笛を吹くとその妖怪に力を与えたり、倒したり出来るようになる。
ただ、そのたびに心臓の針はどんどん突き刺さり、男の心臓を傷めつけるようだ。

時は経ち、くまげらは診療所で働いている。
そばには、猫娘、ダイダラボッチ、いったんもめんの妖怪の面々も。
時折、お菊さんと呼ばれる女性がやって来て、町を騒がす妖怪のネタを持ってくる。
くまげらはそれを解決して、わずかなお金を手に入れて生活しているみたいだ。
最近では落ち武者の亡霊が出る騒ぎなんかも解決している。

町には悪巧みをする人たちがいる。
山の狐が住む場所を手に入れて一儲けしようと考えているみたいだ。
この計画を遂行するためには少々の犠牲はやむ無し。
町で猟師をしている親子の息子がその手にかかり死んでしまう。
幽霊になったその男は、成仏できず、くまげらの仲間になって、日々を過ごす。
息子を失った父は、その憎しみを増大させる。
その憎しみを利用して、かまいたちは男に憑りつき、狐を虐殺する。
かまいたちは、山に住む雪女の手下みたいだ。

悪巧みをする人たちは、役人をも使って、そんな父親を幽閉する。
息子は何とか父を助け出したい。
くまげら一行は幽閉されている屋敷に向かい、救出を試みるが、屋敷が火事になり、くまげらは瀕死の状態に。
いったんもめんもすっかり燃えてしまった。
一方、父親は幽霊となった息子と出会い、火事から救われる。息子はこれで成仏。
老師の下に行き、くまげらは何とか命をとりとめるが、笛はもう吹けない。これ以上、吹くと本当に針が心臓を突き刺してしまう。
笛を吹かないように監視役として、辛唐子の妖精をくまげらのそばに置くことにする。

山に住む狐の妖怪は大けがを負っている。
子狐は幼いながらも、この状況を何とかしたいとくまげらに相談する。
この事件には、人間の欲望が渦巻く悪巧みも絡んでいるが、山の雪女も関わっているみたいだ。
くまげらは放っておくことが出来ない。
一行は雪女の下へ向かうことになる。
雪女と再会したくまげらは・・・

あらすじ、難しい。
けっこうごちゃごちゃしています。
要は、人と妖怪が共に暮らせる世界は出来ないのかみたいなことです。
雪女、狐の妖怪、悪巧みする人間の三者が絡んでいるので、複雑な様相となっています。
妖怪は妖怪の生き方がある。それは人間を食らったり、人間とは生活様式が異なったりで人間とは必ずしも相容れるものではありません。
狐の妖怪も、山での食物連鎖の中で弱肉強食の世界で生きており、みんな仲良しで生きるなんていう甘い考えが通じるものでもない。
人間も悪巧みとはいえ、自然を犠牲にして生きていくのは悲しいかなそれが生きる手段でもあり、必ずしも完全否定されることではない。
各々の立場で生きなくてはいけない。
そこに、何か調整点を見出し、共に生きる道は無いのかということを描いているような感じです。
だって、人間だろうと妖怪だろうと、想い合うことは可能であり、くまげらと雪女のようにそれを一時は愛にまで発展させることも出来たし、今の診療所のように妖怪と共に暮らすことも出来ているわけですから。
最後、そんなことを全て解決したような形では終わっていませんが、診療所で共に暮らした妖怪たちのくまげらへの想いや、雪女のくまげら、人間への想い、狐の妖怪の人間と同じような親子の情愛などを描いて、人間も妖怪もきっと一緒になれるという願いを浮き上がらせています。

ダンスやアクションを盛り込みながら、不思議なキャラと共に話を進行。
この劇団らしい、ちょこちょこ挟み込まれる小ネタに笑いながら、ちょっぴり切なくも心温まる話に仕上がっていました。

くまげら、青木道弘さん(ARTIST UNIT イカスケ)。なんか妖怪探偵くまげらシリーズでもやって欲しいくらいにはまり役でしたね。どっかの名士みたいに品のある雰囲気。人、妖怪と分け隔てない優しさ。ちょっとおとぼけ。とても、味のある役でした。
猫娘、中山明菜さん。いつもながら、可愛くもあり、気が強そうでもあり。イケメンにすぐ恋しちゃったりする飄々としたところも見せながら、自分が妖怪であることに葛藤したりする姿も演じられます。最後、猫となり、くまげらと一緒にラストを迎えるのですが、きょとんとした表情が何とも言えず、素敵。あの表情で色々あったけど、これからきっといい方向に向かうなと思わされました。
猫又、前田夏季さん(劇団吹田市民劇場おむすび座)。猫娘に潜む妖怪部分。人間を食らったりする本来の化け猫の姿を演じる。人との共存を否定するかのような寄せ付けない迫力オーラを出されます。声もドスが効いていてけっこう怖い。でも、けっこう人のことを想ってたりする、お得意のツンデレっぽいキャラの魅力はいつもどおりか。
ダイダラボッチ、山本雅貴さん(ホネつき数珠's)。ちっちゃいダイダラボッチ。でも、肉体美を活かして大きく見せる。動きが大きく固い感じに見えたのは役のイメージなのかな。
いったんもめん、玉岡マサノブさん。でかいいったんもめん。鬼太郎とかで見る同一キャラとはちょっと違うかな。気弱でとても優しい感じ。
落ち武者、堀真也さん(劇団暇だけどステキ)。町の娘に惚れて、自分をPR。情けない落ち武者なのに。個性的でとても面白いキャラになっています。最後の方では、武者魂を見せてかっこいい男気を出されます。

お菊さん、姫乃かおりさん。ぞくっとするような美人さん。ぞくっとするのも最後に納得。さすが、よく考えて創られていますね。
猟師の息子、野中大輔さん(劇団暇だけどステキ)。父、関本成朗さん。火事の中、倒れる柱を幽霊の息子が支え、父を助けるシーンがあるのですが、少ない会話で親子の絆を醸し出しているいいシーンでした。また、その時、息子は悪い人たちの手にかかって殺されたのですが、父が心配するから、自分で滑り落ちたとか嘘をつくんですね。息子の優しい嘘がまた良くて。関本さんは、本当に昔話に出てきそうな猟師の親父さんの姿でした。
悪い人たち、あかさかさくらさん、川村和正さん(ARITIST UNIT イカスケ)。いかがわしい悪コンビを熱演。どっからどう見ても悪いことしそうなキャラを徹底的に作られていました。そして、頭悪そうなので、それが絶対うまくいかないようなことも感じさせます。
その悪い人たちに巧みに利用されてしまう役人、初沢タケシさん。なんか真面目で律儀で曲がったことは出来ませんみたいな、本当にいい公務員みたいな感じの方だった。役に徹しているのか。
もう一人の役人、圭吾さん。こちらは役人としては、最後に狐を銃で撃つように命じられ、怖くて逃げだしてしまう情けない役どころ。途中、町で威勢よく声を出す物売りとしても登場されます。この劇団は、途中必ず、お遊びの役者さんのネタ披露コーナーがあるのですが、その結果をうまく活かしたアドリブで笑いを取られます。頭の回転速いですね。

老師、なかしまひろきさん。いつもながらのおふざけっぽい老人で登場。場の空気を一瞬で変えてしまわれます。
辛唐子の妖精、南勇樹さん(芝居処味一番)。この方にチケットお願いしたので、注目して観てました。なんちゅう役どころだ。不可思議なキャラの割には、冷静沈着。冷めた感じであらゆることを冷静に処理しちゃうみたいな感じ。なかなかアクションも動きが切れるんだなあと。

狐の妖怪、中野智佳子さん。大胆な演技。さすがに何年も生きた妖怪だけあって貫録たっぷり。母親としての愛情を醸し出す力強い表情が印象的。
狐の娘、石澤純子さん。こちらはお母さんとは比べ物にならにくらいの、まだまだ頼りない姿を見せます。でも、自分も狐の妖怪として生を全うしなければいけないという強い覚悟も感じられる演技です。

雪女、幼い頃が丸小野真穂さん、大人が石田ゆきこさん。幼き頃の純粋で人間と共に暮らせないという悲しみを秘めたところから、大人になってそれを人の裏切りへの憎しみに形を変えてしまった感じとなります。最後に大人の雪女は、幼き頃の雪女である自分自身と対面し、もう一度、人を信じて、いつかまた暮らせる日が来るのかもしれないという希望を抱いたみたいです。丸小野さんは、実年齢幾つなんだろう。本当に中学生ぐらいに見えたが。とても可愛らしい子供の様な笑顔を見せる反面、たたずまいは落ち着き払った凛とした姿で、とても貫録のある女性としても見られ、年齢不詳である。石田さんは、くまげらとの会話の中で、これまでの間に凍り付いてしまった心が溶け始めていく感じがよく出ている。
かまいたち、あっくん。豪快なアクションは言うことなしでしょう。ガンガン回転して、体そのものが武器みたいな凄い動きされます。憎しみを吸い取り、その力だけで生きようとする悲しい生き方でもあります。

猟師の息子の死を描く前半部分と雪女、狐の妖怪も絡む後半部分が関連はあるのだけど、少し分断されてしまっているような気がする。
もう少しうまくまとめてスムーズに話を展開すると、もっと分かりやすいように思うが。
とはいえ、個性的なキャラが色々と活躍する中で、人と妖怪の種を超えた絆の存在を感じさせる面白い作品であった。

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