この中に裏切り者がいますよ【万能グローブ ガラパゴスダイナモス】121117
2012年11月17日 インディペンデントシアター2nd
福岡の劇団なのだが、なぜか名前を知っていた。
どこで聞いたのだろうか。
滅多に観れないのだろうしと、早くから観に行くつもりでチェックしていた劇団。
色々な点で細かく丁寧に創り込んでいるような印象を受ける作品だった。
話の展開を見守る分では、非常に面白い。
ただ、作品名がいかにも思わせぶりだ。裏切り。
これをどう描くのかという点では、少々、消化不良のような感が残る。
(以下、ネタバレ注意。公演は大阪は明日、日曜日まで。宮崎で来週。白字にすると戻すのを忘れるので、気を付けて下さい)
隣町はひらけて、イオンなんかも出来てるのに、わが町は一向に発展しない。
この前、牛丼屋が出来て大盛り上がりしているようでは。
特産品の麩を使った料理を売り込んでみたり、はやりのゆるキャラを作ってみたりしたけど、なかなかうまくいかない。
隣町は最近、美容師を集めたアイドルなんてものもPRしており、マニアックなファンが握手会ならず髪切り会に参加して、着々と町を発展させている。
このままでは隣町と合併なんてことになるだろう。
そこで、町にオカルト伝説があることにして、それを町おこしの材料に使う計画が進められる。
町役場に勤めて、街を盛り上げたいと誰よりも願う女性。
その女性が気になっている男。
隣町から呼んで来て、霊能者として振る舞ってもらう予定の女性。
そんな面々が、テレビ局でADとして働く女性が住む古びた家に集まっている。
さらには、遅れてゆるキャラ製作を途中で放り出して、西海岸に行っていたという男が趣味のジーンズを大量に買い込んで戻ってくる。
家にはお手伝いさんの女性、なぜか押し入れで暮らしている小説家、さらには隠し部屋に何年も引きこもっている兄がいるみたい。
そこに、取材をお願いしていたテレビ局のディレクターが二人、予定日より早くやって来る。
さらには、小説家に脚本を依頼していたという演劇部の二人も。
町役場の女性はとにかく、どんな手段を使ってでもこの計画を成功させたい。
男は女性が好きなので、言われるがまま。
霊能者役の女性は、西海岸帰りの男とは元演劇部で後輩、先輩の関係。と言っても、苦労して発展させた演劇部をこの男が全部つぶしてしまい、恨みを抱いている。
演劇部の二人はとにかく、小説家を掴まえて脚本を書かせたい。
小説家と兄は共にアイドルグループのファンみたいで仲が良い。そして、実は小説はその兄が書いているらしい。
この家に住む女性、つまり妹は兄とはもう何年も顔を合わせていない。
ディレクターの二人は互いに、番組作りの着眼点が異なり、それぞれの方向性でこの家を取材しようとする。
お手伝いさんは何も知らない。とにかく、この複雑な人間関係に振り回される。
各々が好き勝手な思惑で動こうとするので、会話はかみ合わず、いつまでたってもまとまりが出てこない。
そんな中、一向に進まないこの計画が誰かの手でつぶされようとしていることに気付き始める。
この中に誰か裏切り者がいる。誰かが、不利な情報をディレクターに流し、取材を台無しにしようとしている。強いては、この町おこし自体を失敗するように持っていこうとしている。
一体、誰なのか。
その犯人が分かった時、本当の裏切り者が見えてくる。
裏切りだらけの話。
最終的に、町役場の女性の視点からは、全員が裏切り者であるということになる。
でも、そうなってしまうなら、実の裏切り者は、町の総意を無視して、自らの信念だけで動き続けたこの女性が裏切り者ともいえる。
話の中心はこの町おこしだが、演劇部と小説家、兄と妹、元演劇部の二人、その復讐のために利用されたお手伝いさんなど、裏切りがはびこっている。
そういったラストから、何を見出そうとしているのかがよく分からなかったところ。
裏切りの姿は、程度が小さければ、自虐的な笑いにもつながり、それはそれで面白いのだが、単なるコメディーとして描いている作品では無いようにも感じる。
信じていたのに裏切られた。それは、とても悲しくかわいそうなことであるが、この話からは、元々信じるという行為があったのかに疑問が残る。
本当にこの人達は裏切られたのか。相手を信じてではなく、自分の勝手な考えだけで行動を起こした結果、思っていたゴールに行き着かなかった。これは裏切られたのではなく、裏切ったといっても過言ではないかもしれない。
ラストに取り残された町役場の女性が何を感じていたか。自分が執着していた考えに対して、本当は同調していなかった人への恨みだけなら、悲しい話だ。
このあたりに、もう少し考える要素を与えて欲しかったような気もする。
舞台が面白い作りになっている。
部屋の片側には押し入れ。この天井には隠し扉があり、天井裏へと続く。そして、そこに兄が引きこもる部屋がある。もう片側には飾り階段。ここからやはり天井裏に上がることが出来る。
回転扉があったりと、ちょっとしたカラクリ屋敷となっている。
この仕組みが、話の展開と共に明らかになっていく。
裏切りや騙し。登場人物に潜むそんな心情や行為が、話の中で明らかになっていくと共に、部屋のカラクリも仕掛けが見えてくるような構成なのか。
話は分かりやすく、町役場の女性の一人相撲であったことのショックがラストなのだろうが、上述したようにそれで、この作品名の裏切りというものをどう考えるのかという点をもう少し突き詰めてくれると、さらに魅力的な作品になるように思えるのだが。
今のままでは、その筋だけが分かり、それをちょっと面白い役者さんがいる中で、そのドタバタやスレ違いのコメディーを楽しむだけになってしまっているように感じる。
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