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2012年10月 4日 (木)

無差別【柿喰う客】121003

2012年10月03日 HEP HALL

濃厚な作品とでも言えばいいのだろうか。いい言葉が見当たらない。
言葉のリズム、韻を踏むセリフのテンポの良さ、優れた身体能力による心情・状況描写。
前作品と少し異なり、全体的に落ち着いており、華やかな演出が抑えられた感じなのでより際だってその凄さを感じる。
緩急の付け方がうまい。鬱蒼としている雰囲気で進めながら、急にコミカル要素を入れ込んだりする。だから、笑えたりする。緊張と緩和か。
深刻、かつ壮大で重々しいテーマを扱っており、それなりに集中して色々と想いを馳せながら観るが、本当だったら集中が途切れるはず。公演時間は7周年にちなんでか77分と短めではあるが、本来だったらもっと疲れそうなところだが、比較的、気楽に観れた。観る側の視点でしっかり考えて創られている証拠だろう。
これで今年は321本目の観劇。
魅せる演劇作品。
その意味では、今年観劇した中でも片手に入る作品だと思う。

赤犬を殺して食用に加工することを生業にする一族のイヌキチ。
村人たちはそんな彼ら一族が加工した肉を食って生きながらも、彼らをヒトとは認めない。
犬を殺して食らう彼は自分自身を穢れた存在だと思っているが、ヒトとして死にたいとも考える。
ある日、妹のイヌコが生まれる。
彼は、妹には仏を彫らせ、経を写させて、穢れ無きヒトとして育てようとする。
自らは地獄に行くが、妹は極楽浄土へと旅立てるヒトとして命を全うさせたいようだ。
同時に自分自身も浄化されようとしているのだろうか。
妹は彼が殺した犬を売ってできたお金で買う米を食って穢れなく育つ。

時は経ち、戦争が始まる。
イヌキチはヒトとして死にたいと兵に志願する。
彼をヒトとして認めていない村人は、山の神木であるオオクスの枝を取ってくれば、お国のための兵になることを許すと言う。
イヌキチは神を殺してヒトになる決意をする。

イヌコは、イヌキチが5匹の子供を身籠った犬を殺した際に1匹だけ生き残った雌犬を育てる。
育てられた犬は、ヒトであるイヌコを母と思い、自らもヒトの子として彼女のために尽くしたいと考えている。

一方、山奥のめくら達が暮らす村。
神木のオオクスにはかつては人であり、神になったテンジンサマにより、オオグスノコダマという神が宿っている。
その生贄に村人はめくらでかたわの女をささげようと、神木の下にある大穴に女を閉じ込める。
生きたいと願う女は、村人を大穴に連れ込み、性的な誘惑を繰り返し、そのたびに大穴をさらに広げさせる。
その結果、穴は大きくなり過ぎて、神木は倒れる。
そして、女はテンジンサマの手により、新たな神となる。
ヒミズヒメの誕生である。

倒れたオオグスノコダマ。
やって来たイヌキチの手によって、枝を取られて息絶える。
大木の残骸は邪魔なので、テンジンサマは雷をもって、それを粉砕する。
やがて、そこからキノコが生える。
何度でも生まれ変わる恨みの塊であるキノコ。

新たな神となったヒミズヒメを村人たちはあがめる。
その姿・声を聞けるのはイヌコだけ。
神は自らを奉るために、舞を求める。
村人たちの舞では納得できない。
イヌコは、自分が育てた犬に頼んで命の籠った舞が出来る舞人を連れて来させる。
自分と同じめくらである舞人に恋心を抱き、自分だけの者となるように大穴に閉じ込める。

戦争は激化する。
恨みの塊であるキノコも大きくなり、やがて爆発する。
あらゆる物を消し去り、黒い雨を降らせる。

戦争から生き残って戻ってきたイヌキチ。
村人たちはいない。全て消えてしまった。
イヌコを見つける。彼女の体は・・・
2人は神木の傍らに横たわり、新しい世界の神になろうとする。

あらすじは覚えている限りではこんな感じ。
ところどころ、時系列がおかしかったり、違うところはあると思います。
全体的にはカムイ伝みたいなイメージを持ったけどな。

筋はともかく、話としての最大の魅力は、非常に重たく、場合によっては通常触れてはいけないタブーなテーマが、そこだけを単体で見せているのではなく、うまく一つにまとまっているところにあるように思います。
パッと思いつくだけで、部落・障害・被爆という差別に絡むキーワードが出てくる。
村人と犬殺しの非人。非人の中でも健常と障害。ヒトと犬畜生。被爆者とそれから逃れた者。
人の業というのか、運命に翻弄されて今を生きる者たち。
それは人だけには留まらない。神ですら同じ。かつては人だったのだから当然か。
人は核という神までも創り上げる。
生まれてきた運命で虐げられる者、崇められる者。
そんな命あるもの全てにその神は無差別に襲いかかる。そして、そこでも差別される被爆者と差別する逃れた者を生み出す。

時代背景としては戦争前後あたりの一時なのだろうが、神などが登場するので古代も感じさせ、短い時間で長い日本の歴史を語っているようにも感じる。その中で私たちはいったいどう生きてきたのかを探っている感じだ。
繰り返される差別の構造。
これは、人が生きる自然の中で、どのような者に対しても、そして自らにすら無差別に襲いかかる神が作り上げたようにも感じる。古代から科学が発展して神をも超える強大なエネルギーを作り出すようになった現未来ですら、神は形を変えてそれを続けている。
最後、全てが消えさり、新たな世界の幕開けは、日本の神話での創世記が描かれているようである。
繰り返される歴史への不安を感じながらも、何度でも立ち上がる命の強さを思わせ、そこに生きるということの一つの答えが隠されているように思った。

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