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2012年9月 9日 (日)

The Believers ~ナナイロ町解放戦線~【ちゃかさん】120908

2012年 09月08日 アトリエS-pace

とても好みの作品でよかったなあ。
分かりやすく、難しくなく、面白く、エンタメっぽくて、熱いのが好きなんですね。
全ての要素が、乱雑ではありますがきちんと入っている作品です。

どこの世界に、我らナナイロ町解放戦線なんて言って、熱く決めポーズする人がいますかね。
でも、日常の大事な勝負事の時、心の中ではそんなことをしている時もあると思うんです。
現実では心の中だけですが、こういう演劇の世界では表にそういうものを出してくれます。
ある意味、恥ずかしい一面もありますが、自分のそんな大事な時とオーバーラップさせて、その熱い気持ちに奮い立たされることも往々にしてあると思うのです。
だから、虚構だと分かっていても、のめり込んで芝居を観るんだということにつながるような気がします。
この作品はそんなことを思わせてくれるようなものでした。

(以下、ネタバレしますが、まあ許容範囲と判断して白字にはしませんので、ご注意ください)

凶悪犯を追い詰める刑事。
凶悪犯は最後の抵抗として、自爆。凶悪犯はもちろん死ぬ。刑事も殉死。

それから20年。
ストリートライブを行う売れないミュージシャンの男。相棒の男と売れそうにないオリジナル性のかけらもない歌を歌っている。
客は彼女と、なぜか応援してくれている留学生の外国人男性。
突然、爆音。
強烈な光と音に呑み込まれる。

気付くと男は一人っきり。みんないなくなっている。
刑事がやってきて爆発事件のことを聞かれるが、さっぱり分からない。

この爆発事件、実は20年前の凶悪犯と刑事が絡んでいた。
共に成仏できず、魂になっても追って、追われの生活。そして、ついに生身の肉体を手に入れようという考えに至ったらしい。

凶悪犯は彼女の体を乗っ取る。彼女の魂は留学生の男へ。留学生の男の魂は、愛読書の本へとなり、男の手元へ。
刑事は相棒の男の体を乗っ取る。相棒の男の魂は扇風機へ。そして、謎の老人に拾われる。
凶悪犯は彼女の体を借りて、再び悪事を重ねる。そして、昔、自分を裏切った相方のところへ向かい、首相を辞めさせ、日本を変える壮大な計画を実施しようとする。
刑事も相棒の男の体を借りて、凶悪犯を追う。
二人は再び対決する。
このままでは、また同じことが起こってしまう。そして、愛する彼女の体、相棒の体が・・・

結局のところは、作品名どおりに人を信じる、積年の疑念も真摯な人への想いで全て消し去ってしまっています。
友情、愛情、ライバルの中に芽生える互いに認め合う気持ちなど、全てひっくるめて信じる気持ちが全てを解消します。
信じるなんてなんぞらしいけど、それでもやっぱり信じて信じられるなんて関係は最高だねみたいな終わり方かな。

一つ思うのは、ミュージシャンの男は何故、体を乗っ取られなかったのか。
主人公だから、乗っ取られると話がややこしくなるというのは設定上、そうなのでしょうが、この人こそ、彼女、相棒、客を心の底から信じていた人だからこそなのかなと思っています。
どんな姿の人であれ、自分の真実の気持ちをぶつけれる、確立した自分を持っている人だから魂も入り込みようがなかったのだろうか。
ある意味では、バカだなあと思いますが、こういう人がいるからこそ、世の中は決して悪意に満ちた世界にはならないのかなと感じます。

簡単に役者さんにコメント。
ミュージシャン、神高大章さん(近畿大学文化会演劇部覇王樹座、以下、さ)。熱いなあ。振り絞ったような演技されるので、体もプルプル震えている。
相棒、チョコ輔さん(さ)。この方、覚えてるな。遠い日の歌で確かしゃべれなくなった子みたいなおとなしい役だったんでは。ちょっと斜に構えたような感じです。乗っ取られた後の刑事も同じく、冷めた中の潜む熱い想いを感じさせる演技です。
彼女、さかいなつみさん(大阪大学ちゃうかちゃわん、以下、ち)。体を乗っ取られた後は凶悪犯の役をします。これが悪そうな嫌な表情される。凶悪です。ギャップが面白いはずなので、かわいらしい顔されてるんだから、彼女の時は、もっとかわい子ぶればいいのに。
留学生、水田篤志さん(大阪工業大学かんき船、以下、か)。出オチかな。動きもしゃべりも面白いけどね。この方も同じく、乗っ取られた後の彼女はもっと気持ち悪く女っぽくすれば面白いのになあ。
凶悪犯、最内翔(ち)。最初に登場した後は、魂として舞台奥で乗っ取った人の役に合わせて動きます。動きはなかなか濃くて大きい凶悪っぷりを見せます。
刑事、大島宏和さん(さ)。どこの国なのかおかしな総理大臣もします。最後、締めないで中途半端に終わらす芸風なのかな。飄々としたところは面白かった。
扇風機、ファン・モーリーさん(さ)。悲しい姿だった。老人に連れられていく哀愁漂う姿なんて最高だった。後半は、他の人に混じって負けじと熱い姿を。扇風機なのにね。この不条理なところにこの作品の面白さが隠されていますね。
今の時代の刑事、風船きまま(ち)。イラっとさせるね。どこか浮いているKY感を醸し出します。
謎の老人、棗ゆうさん(か)。落ち着いてた。老人には見えないけどね。堂々と恐れずやってるところが貫録ある。留学生と言い、かんき船は見た目で勝負をかけてくるのかな。
凶悪犯の相方、・(´ム`)/さん(さ)。悪さする若者そのものでした。チャラついた感じですが、最後に凶悪犯に向けていいセリフを言います。
彼女の魂、吉田恭子さん(ち)。この方だけ、魂。ここはうまいなあと思いました。本体があまりにもひどい姿に変わってしまっているので、その可愛らしかった面影を終始忘れさせないようにしてくれている。
アナウンサー、水那月さん(さ)。文字どおり、実況中継の形で状況描写をされる。アナウンサーの衣装かなあ。作業員みたいだったけど。少し、緊張気味だったのかな。普通の役と違って、こういう決められた言葉を話す役では、途中セリフが途切れるとすごく目立ってごまかしがきかないので厳しいんだろうけど。

ちゃかさんは昨年に引き続き2回目。
今、けっこう学生劇団を観ていると思います。大阪、神戸、近畿、関西、龍谷、同志社、大阪市立・・・
これ、観るようになったのは昨年の公演の影響が大きいです。
学生劇団の良さをしっかりアピールできているプロデュース公演なのでしょう。
今後も、関西演劇界を盛り上げていただければと。
大阪工業大だけ、観てないので、これは今後優先しないといかんなあ。

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コメント

本日はご来場誠にありがとうございました!
ちゃかさん2012の脚本・演出の埴岡です。
去年もちゃかさんの公演にご来場いただいたと聞いて、二年連続で足を運んでいただき本当に嬉しく思います。

今回、役者が楽しんで、かつ全力で演技し、あわよくば観客の皆様を楽しませることを目標にしていました。
少しでもそれが届いていれば本当に嬉しい限りです。

明日も本番を控えていますので、気を引き締めて頑張ります。
本日は、ご来場誠にありがとうございました!!

投稿: 埴岡 | 2012年9月 9日 (日) 00時53分

>埴岡さん

公演中のお忙しところ、コメントありがとうございます。

とても良かったですよ。
書かれているとおり、元気いっぱいの役者さんたちがいいですね。

ちゃかさんを知らない人も多いみたい。
関西の学生劇団を観る起点となり得るプロデュースだと思うので、今後も益々盛り上げていってください。

投稿: SAISEI | 2012年9月 9日 (日) 09時30分

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