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2012年9月 2日 (日)

まいる【stand flower】120901

2012年09月01日 堂山小劇場

杮落し公演。二人芝居三本立て。
とても楽しい空間である。
三作品とも、役者さんの力もあってか、非常に熱い。
作風は全く異なるが、コミカルな面白さの中に、人の想いや熱さを感じさせる作品となっている。

・クリスマスの夜に 作:緒方げんきさん(O・G.P)
サンタを信じ続ける老人。20歳までサンタからプレゼントをもらっていたが、自分の息子にはサンタが来ない。今や、孫にまで来ない。
自分が悪いのか、息子が悪いのか。住んでいるアパートに煙突が無いのが悪いのか。そのことに悩み、毎年、サンタを待ち続ける。
なぜか自分のところに間違ってプレゼントが届いているようなので、住民票を渡し、データベースを修正してもらおうとしているぐらい、その想いは真剣。
そんな、ある年、ついにサンタがやって来る。
でも、捕まえてみれば、それは我が息子。
そこから、父のサンタへの想い、サンタなど空想で今までそんな父のせいでずいぶんと迷惑を被った息子の想いが激突する。

びっくりするくらい熱いお二人。父が笠井隆介さん(劇団フジ)、息子が近藤ヒデシさん(COMPLETE爆弾)。
大の大人が、圧倒されるくらいのサンタ議論を繰り広げる。
父の我が子への想い、通じては世界中の子供たちへの想いを綴った素敵な手紙でしんみりさせて、がっかりさせるようなオチで終わらせる。でも、素敵な余韻が残る面白い作品。

・インターホーンママ 作:本多真理さん(昆虫PEG.)
インターホーン越しのセールスマンと子育てママの対決。
嫌味たっぷりに対応するママに対して、冷静に耐えながら必死にPRするセールスマン。
やがて、互いに抑えたその感情は爆発して、すさまじい罵倒、ののしりあいとなる。

キレそうになりながら必死に抑える姿がたまらない笠井さん、舞台からは見えない部屋ではママ、赤ちゃん、そして、外ではセールスマンと三役を変化しながら演じる立花裕介さんの達者ぶり。
姿が互いに見えない中では、テンションが高まる一方。悪意でしか相手を見ることができない。でも、完全決裂の直前に天使の笑い声が響く。そうすると、嘘のように分かり合えてしまう。日常生活で色々と鬱憤がたまってしまう今の世の中のちょっとしたやすらぎは何かを考えさせられる。

・夢二と蓊助 作:勝山修平(彗星マジック)
竹下夢二と島崎蓊助の物語。
反ナチス活動として芸術革命運動をする蓊助、過去に愛した女の絵を描きながらユダヤ人解放運動にいそしむ夢二のドイツで出会った3ヶ月間を描く。
ユダヤ人を愛し、その愛を実らせることに希望の光を見つける蓊助。ユダヤ人女性を描いた絵を残す。
もはや今は、亡き女性を描くことでしか愛することが出来なくなった夢二。
激動の時代における、精神的な挫折みたいなものを感じる中、二人の絵に対する想いが伝わる作品。

少年のように未来を見つめ、これからを描こうとする人生の旅の途中のような蓊助、立花さん。
人生の旅の終着の後、これまでを振り返り、それを残そうとする夢二、近藤さん。
相反するような二人が、自らを弾圧され先の見えない世の中で、自分たちの芸術を懸命に表現しようとする誰にも迫害されない勇気や希望あふれる姿が浮き上がる。
これは、何だろう。二人の感傷的なイメージも感じるが、今の大阪への警鐘も込めたブラックなところもあるのだろうか。

役者さんの魅力をたっぷりと味わいながら、楽しい話に観入る。
20分×3本。各作品の間に10分の休憩を入れて、ゆったりしたタイムスケジュールなのも、観劇しやすかった。

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