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2012年9月27日 (木)

星の時間【SSTプロデュース】120926

2012年09月26日 船場サザンシアター

また、別役実さんの戯曲。
今回は、もりのくるみさん×長橋秀仁さん(ThE 2VS2)の二人芝居です。

シュールで的を外した不条理な会話劇というのは、これまで拝見した招待されなかった客、眠っちゃいけない子守歌と同じか。
(招待されなかった客:http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/sst111011-9bfa.html
(眠っちゃいけない子守歌:http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/sst111221-9918.html ・http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/sst111223-c47b.html)

二人芝居で片方が支離滅裂なことばっかり言って、もう片方が訳が分からず困っているというスタイルはまあ共通するところでしょうか。
これまではジオラマを使って何かするようなシーンがありましたが、今回はレストランで食事。これがままごとみたいな印象があり、箱庭療法のように心理的にどこか問題がある部分を解消していくようなところも似ているように感じます。。
孤独や漠然とした不安感を最終的に持たせるところも。
ただ、前2作に比べると、会話はそれほどスレ違っている感じではありません。露骨なコミュニケーション不全みたいなものを見せてはいないような気がしました。
それよりも、見た目の貧乏さも相まってか、二人の中の共通する価値観のようなものが見えてきそうでした。
まあ、見えそうになっては消えてを繰り返したので、結局、見えていませんがね。

感想の締めくくりはもちろん難しかった。
この別役実さん×当麻英始さんの組み合わせで出来上がった作品はこの言葉に尽きます。
ただ、少し慣れてきたのか、今回はこれはこれでけっこう面白いなという気持ちも芽生えてきました。

飼い猫を探して一人の男がバスケットを抱えて森へやって来ます。
冴えないダメそうな男。
特に説明も無しで、ただ登場されるだけでそういった負の印象を感じられるのは、長橋さんの持たれる魅力が一瞬で舞台で発揮されたからでしょう。コント集の自劇団の本公演しか拝見しておりませんでしたが、さすがです。

そこにはなぜかテーブルと椅子が。
テーブルの上にはこしょうの缶が置かれている。
このこしょうの缶を男が手にした時、どこからか乳母車のようなワゴンを押した女が現れます。
年齢不詳。ホームレスみたいな老女のようにも思えますし、ちょっと小奇麗な妙齢の女性にも。口調は威圧的で、魔女みたいにも見える。こちらも一瞬です。もりのさんは初見ですが、このオーラの強さは半端じゃない。
この時点で話は関係なしに、相当魅力的なお二人の芝居が始まるということで、期待が膨らみます。

こしょうの缶は誰かの忘れ物なので、とりあえず女が預かる。でも、持ち主が現れて、何か言ってきたら盗んだわけじゃないと男に証言するように言ったりします。
男が猫を探していると言えば、そんなブクブク太ったみすぼらしい猫とさびしく、慰め合いながら生きている、情けないクズだねえみたいな、きついことをズケズケと女は言います。
男は確かに失業の身で、日々、失業保険で何とか生きているような生活なので反論は出来ず、すっかりやり込められてしまっています。

そんな訳の分からない会話をしている中で、いつの間にか女はテーブルにクロスを敷いて、花瓶も置いて、ナイフやフォークを並べ、ナプキンを置いて、まあそこそこ高級なレストランを作っていきます。
男は完全に優先権を女に取られているので、そこの客になることになってしまいます。
お金はほとんどなく、その心配をしますが、女はお構いなし。サイフまで取り上げられてしまいます。

食事が出てきますが、とてもじゃないけど料理とはいえないもの。
薄いお湯のようなコンソメスープ。ポタージュも選べたのですが、無理矢理、これにさせられます。まあ、初めから無かったみたいですが。
何の肉なのか、焼いた肉と野菜をみずぼらしく添えたもの。特製のドゥミドゥミソースは瓶の中で固まって出てこない。塩とあのこしょうをかけて食べる。
男はレストランなぞ行ったことも無いから、とりあえずこんなものかと従うしかない。
女はずいぶんと分かった風なことを言うが、自分も知らないことは丸分かり。この男だから、成立している茶番といった感じのインチキっぷりです。
好き勝手にやられながら、なおもお金のことを心配し、少しだけでもいいからお金を返してくれと懇願する男の姿は、もう憐れで憐れで。

時折、風の音なのか足音なのか、何かが聞こえてきます。
女はあの人は自分を探していると言います。でも、ここにはたどり着けないみたいです。
あの人。女は食事中もその言葉をポロっと発します。
男は何かを女に話しかけるたびに、地雷を踏んで女を怒らせ、不条理にも叱られるのですが、特にこのあの人に関することは絶対に言ってはいけないことみたいで、すぐに無視されてはぐらかされています。

最後はデザート。
乾燥バナナとコーヒー。
メロンもあるみたいなことを言われますが、そんなものあるはずがない。

食事は終了。レストランも閉店の準備が始まります。
サイフは返してもらえます。
男は、少しだけでも払うと言いますが、女は断固拒否。そんなレストランのことも分かっていないみすぼらしい人からはもらえないという捨てセリフ。
男はそこまでバカにされることはないと、初めて感情をあらわに。
食事がいい加減なものだったことや、結局、このレストランは女の待ち人のためのものであり、今晩も現れなかったのでその代わりに自分はされただけだと。

女は星の時間ということを語り始めます。
孤独で正確で厳粛な時間。
そんな時間を人は過ごす時がある。
それが、今で、このレストランはあなたのためにやはり開かれたのだと。
そして、あなたが探している猫は、・・・

まあ、ラストは猫がいなくなって、レストランだと可能性はあるなと思っていましたが、特に意表を突いたホラーチックなオチで締めようとしている感じではありません。
むしろ、待ち人が来ない、猫はもういないということから、孤独という寂しさが強く浮き上がってくるようなイメージでした。

会話は全てを分かっている女と、分かっていない男の雰囲気です。
レストランを知っていると知らないみたいな。
でも、女もきっと本当は分かっていません。
ここが、二人の間の共通部分を感じさせて、会話に大きなスレ違いを感じさせないところだと思います。
レストランはそのことが分かりやすく表現されているようです。

男は猫を失うという事実を突きつけられる。それも、自分が食べたということで、逃れようのないものになってしまいました。このことは男にとっては猫でごまかしていた孤独であることを提示されたように感じます。
これから、男はどういう時間を過ごすのでしょうか。
女は、あの人を失ってから星の時間を彷徨っているようです。これは想像ですが、あの人は死んだという確証が無い状況なのかなと思っています。だから、女はこの時間を待ち続けるしかない。
男は、これとは異なります。猫はもういませんから。それは食べた自分が一番よく分かっているはずです。
だから、女のようにこの星の時間を彷徨うことは無いように思います。
もしかしたら、女はそうなるように、男に厳しく残酷だけど、ああいったことをしたのかな。
このままではダメだから、どうか今から脱却してください。
そんな風に、星の時間は、これまでの人生から、新たな人生へと旅立つために乗り越えるつらく厳しい時間なのかなと感じます。
そう考えると、女はかわいがっていた猫で、その男への恩返しみたいな童話風になっているのかなと思ったり。
もりのさんもよく見ると、猫のような凛とした目をしていたし、何よりあれだけコロコロと優しくなったり冷たくなったりと感情変化するのは猫特有じゃないかなと。

時代背景は1984年。当日チラシを参照すると、世は好景気で、バブル景気突入の時期。
当時はちょっといいレストランで食事なんて当たり前でした。みんなでワイワイ騒いでいる。
でも、その時間は永遠に続くことはないことを感じていたのかもしれません。
実は孤独であり、どうしようもない現実だってたくさんある。
それに目を向けて、厳粛な時、星の時間を過ごす必要を訴えていたようにも感じます。
今、こんなことになっているのは、そんな時間を過ごさずに、時を経てしまったからなのかなとも・・・

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