PANDORA -Op.1 風の章-【Project UZU】120914
2012年09月14日 インディペンデントシアター2nd
美しいファンタジー作品を堪能。
基本はRPGみたいであるが、その設定は少々、変わった面白いものとなっている。
滅びた世界を再生する勇者の長き物語の始まり。
今回は1章で、毎年公演して5章まで行われるらしい。
今後、5年観劇を楽しむための一つとして、観ておかねばなるまい。
(以下、ネタバレ部分ありますが、許容範囲と判断して白字にはしませんのでご注意ください。話の内容よりも、まず美しい舞台が創り上げられているところに感動すると思います)
滅んでしまった世界。
本当なら、竪琴の勇者が現われ、世界を破滅から救うはずだった。
でも、誕生することが出来なかった勇者は一人、終末の世界にたたずむ。
目の前には竪琴。
その竪琴に導かれるように、勇者は自らの力である想像力をもって、世界を再生する。
そして、その世界で自分を誕生させる母親に出会うために、再生の記憶をたどり始める。
始まって15分ぐらいは、上記のような世界設定が語られる。
かなり圧倒される。
とにかく美しい。
ダンサーや役者さんの振る舞いや、照明などによる舞台の雰囲気。御意さんの奏でる竪琴の音色や綺麗な歌声も。
あ~、壮大なファンタジー作品の幕開けだあみたいな感じでテンションが上がる。
ただ、語りのセリフは全然聞こえなかったな。スピーカーに近い席で音がかぶったのもあるけど、役者さん方の声が揃ってないから、言葉がダブって聞こえてしまう。まあ、言葉一つ一つを理解するのは難しく、全体の雰囲気を感じれば良さそうだったので特に問題は無いと思うが、やはり聞き取れないと何か不安になるものである。
勇者が再生させたのは今回は風の国。
頼りなく自分に自信が無いみたいで、引きこもって研究ばかりしている国王、しっかり者で実質の権力者である王妃、とにかく元気で人は悪くないみたいだがちょっとお調子者の王子。
この国の人は基本的に風を操り空を飛べるのだが、飛ぶことをあきらめてしまった女の子とその子を溺愛する兄。
女の子のお友達で、のろまなので、いつも王子に意地悪されてもおとなしくしている女の子。
トレジャーハンターとして、旅をしてこの国にやって来たおかしな男女コンビ。
王が開発した魔導器という物があって、これがあれば、風の力を操って何でも出来る。だから、国民はみんな怠け者になっている。
誰もがこんな日がずっと続くと思っている。
でも、勇者が再生させた国は、同時にその国が滅ぶ原因となった悪魔も甦えらせる。だから、このままでは後3日で再び破滅へと世界は導かれる。
勇者は世界が滅んだ原因を突き詰め、再生させた国を違う道へと向かう様に仲間たちと奔走する。
とても面白い設定で、再生という形でのやり直しの世界で同じ道を進んでも仕方が無く、その悪かった原因追求から問題解決、そしてその実行とどこかのビジネス書みたいな展開となっている。過ちを知り、それを繰り返さないように物事を進める。そのためには、みんなの意識を変えなくてはいけない。今の日本のちょっとした風刺が入っている。
勇者が仲間と共に悪魔を倒すなんてRPG仕様のファンタジー作品であるが、倒す敵は具現化された何かでは無い。
もちろん、悪魔としてパンドラという存在がキャラとしているのだが、それはこの国が作り出した世界を滅ぼす元凶の象徴のような感じである。
ここでは、恐らく怠惰がキーワードだろうか。
ただ、このキーワードが色々な視点から描かれており、一点にまとまらず、どうもおさまりが悪く感じる。
他国の人を拒絶して自らの国だけで生きようとする国の上層部の風潮。
魔導器により風というものに頼り切って怠けた生活を過ごすのを当たり前とする国民。
風を操る能力があればそれだけで人として秀でていて偉いという至上的な考えに執着する王子。
それに自分は力が無いからといって反論も出来ない女の子。
飛べないことにあきらめてしまい、向上する考えを失った女の子。
それを肯定する兄。この兄はどうも女の子がそんな自分の正当化のために創り出したみたいであるが。
これらの問題点を破滅に向かわさないために全てクリアするように話を進めているので、ごちゃごちゃする。何といっても時間がかかる。公演時間は2時間でまあ平均的ではあるが、途中、退屈感が出てきてしまった。卓越したエンターテイメント性があったので、良かったものの、これが無ければかなりつらい時間になったと思われる。
この国は、他国から来ているトレジャーハンターの目にはきっと奇異に映ったに違いない。だから、勇者とともにこの国の再生に協力するような形になっている。
でも、多分、この人達の母国でも何かまた違う問題が広がっており、この国の人から見たらおかしく感じるのだろうが。
このあたりは、きっと次回作で描かれ、様々な国で再生を難しくさせる問題が絡んでいるようなことが分かってくるのだと思う。
そして、全てが明らかになった時に、パンドラというキャラの正体が突き止められるのではないだろうか。
まあ、これを知るには後、5年観劇を続けないといけない。
ずいぶんと厳しいものを背負わされてしまったと同時に、楽しみがまた増えたといったところか。
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