LOOSER~失い続けてしまうアルバム~【同志社小劇場プロデュース 劇団テトラポット】120907
2012年09月B07日 同志社大学新町別館小ホール
TEAM NACSの作品が観れるとはねえ。
5人だけで、幕末の話を分かりやすく進め、かつ笑わせて感動までさせてしまう名作だと思っている作品。
NACSの中では、HONORの次に好きかな。
これを観るにあたり、久しぶりにDVDで軽く鑑賞した。
当日チラシには、熱血を隠し、ひねくれたさせたと書かれていますが、かなり忠実に再現しているように思うけどなあ。
もちろん、NACSと比較してしまえば、そりゃあ格が違うってものだろうけど、学生という若い人たちが役の想いを感じ取り、隠しようがない熱い気持ちを溢れさせたいい作品に仕上がっているように思います。
舞台は専門用語で何て言うのか知らないけど、パイプが剥き出しになって組まれています。幕とかは一切無く、無機質といった感じでしょうか。
違和感があるのですが、観ているうちになじみますね。
話と同じで骨格がしっかりしていれば、後は余分な肉はそれほどいらないみたいな感じかな。
幕末の動乱期、尊王攘夷を掲げ、倒幕救国運動が高まる時代の新撰組と長州藩の対立を描いている。
主人公の男は、現代を生きる若者。
日本の未来を考えるなんてとんでもない。自分の将来すら見えてないのに。
無関心。
今、自分が生きている日本がどうしてあるのかなんか、なかなか考える機会はない。私も含めて、多くの人たちの姿が映し出されている。
そんな男が、不思議な薬を飲んで、新撰組の山南敬介、長州藩の吉田稔麿となって、同時代を生きる。
教科書にはあまり出てこない人物だ。多分、試験でもそれほど覚えなくてもさほど支障はないような人。
その時代で、男は芹沢鴨、近藤勇、沖田総司、土方歳三、桂小五郎・・・など歴史上に名を残す人たちと接し、その想いを感じ取り、日本の歴史がどう動いたかを体感する。
今の時代からはちょっと想像できない、若き志士たちが、日本の未来を想い、命を落としていく。それが、これからの日本の礎となることを信じて疑わずに。
こういう話だけではないだろう。戦争なども含めて、先人たちが命と引き換えに築こうとした日本。今の日本は、そんな人たちが思い描いていた納得できるものになっているのだろうか。
自分が動いても何も世の中は変わらない。確かにそうだろう。
でも、この時代の人は動いた。そして、歴史に特に名を残さず消えてしまったりしている。でも、日本は動いた。それは、この話がフィクションが入っているにしても、史実である。
自分の未来とともに、日本、世界の未来を考える。この作品の男のラストと同じく、具体案はもちろん出てこない。でも、そこからが始まりかもしれない。
そして、そんな未来への想いを抱くのは、やはり先人たちと同じく、未来を生きる人たちに何をしてあげれるのか、これから生まれてくる人たちに希望ある未来を生きて欲しいという願いに他ならないように思う。
幕末時代にタイムトリップする若者、長南洸生さん(同志社小劇場)。役名はイケメンの人となっているように、本当にイケメンである。NACSでの戸次重幸のポジションなのでまあ当たり前か。NACSのDVDでは2幕に分かれており、1幕ではまだチャラチャラした感が残るが、2幕では自分を見つめ苦悩する。後半では、何をしていいのか分からなく、自分に対するもどかしさや過去の人たちへの大義が大き過ぎて理解の度を超えており、感情を爆発させる。その時の真摯な語りは、何も飾らない言葉でつづられており、心を打たれる。名優、戸次さんにひけをとらないしっかりした演技だったように感じるエピローグみたいなシーンで、最後に土方の遺品を持ち帰る市村鉄之助に扮する。色々な体験をして、多くの人たちの想いを心に刻んで未来を見据えたどこかふっきれた素敵な表情が印象的である。
芹沢鴨はじめ、基本、切られる役に扮する菊池さん(演劇集団Q)。NACSの安田顕のように、裸で暴れる。きっと、この作品が好きな人の多くは、芹沢の梅を看取るシーンや、自らが犠牲になり、日本の未来を志士たちに託すシーンは心に残っているのではないだろうか。男気があり、そこに優しさも感じさせるいい表情で雰囲気を出されていた。
土方歳三、この作品では設定上、同時に坂本竜馬を演じる難波建太さん(同志社学生放送局)。鬼の副長と呼ばれる土方にしては、少しまだ優しそうなところが見え隠れしている感じ。甘いマスクで、常に戦場では前線にいて、志士たちとともに行動を共にしたと言われているので、そんな厳しき中にも見える甘いところも感じれていいのかな。
沖田総司、桂小五郎を演じる、岩本拓也さん(第三劇場)。純粋で子供のように、それだけに狂気的にも映る剣の達人、沖田。剣を使わず、策士的で頭が固い、桂。日本の未来というよりかは、自分磨きの戦いという沖田と、日本の未来しか考えていないような執着した念を持つ桂の対比的な役どころが面白い。幾つか顔をネタにするギャグがあるが、あれはNACSの音尾琢真だからこそであり、ちょっと顎が・・・ぐらいでは厳しくないかな。普通にかっこいいので笑えない。
近藤勇、宮部鼎蔵に扮する畑耕平さん(逃げ弾正・チーム★シグナル)。ごつい感じはイメージと合ってるかな。でも、この方も土方同じく、ちょっと華奢なところが時折見えてしまう感じがした。見た目は、かなり迫力があるので、豪傑感はもっと出せそう。でも、これも、やはり、そんな大きな志のでかい男の中にも潜む不安や小さなめめしいところも覗かせて等身大の姿が浮き上がるのでいいのだろうか。
まあ、ワンコインでこれだけのもの観れるんだから、お得ですよ。
作品は良くも悪くも、この作品を再現しており、変わってない。
ここが、物足りないところでもあるかな。変えてきたなあ、勝負してきたなあなんてところもあっていいようには思います。
当日チラシには変えたと記されているので、感じ取れてないだけかもしれませんが。
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