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2012年9月 8日 (土)

弱法師【dracom】120907

2012年09月07日 京都芸術センター 講堂

ぽか~ん、はあ~っ?
・・・ってなるから、観に行って。
私はぽか~んで終わったけど、表現に携わる人や感性鋭い人は、とんでもない凄い何かが降りてくるかもよ。
私は、こんな演出や感覚で作品が出来上がるんだとただただ驚きました。
観劇好きとしては、とてもいい経験になったと思います。
日曜日までやってるから。1時間15分。
普通に芝居観ようなんて気持ちでいったら、打ちのめされると思う。

じゃくほうしじゃないのね。よろぼし。
能の同名作品が原典。三島由紀夫が仏教思想なんかも取り入れて創作した戯曲です。
蜷川幸雄演出、藤原竜也主演の作品が有名らしく、それはもう鬼気迫る迫力で圧倒されるらしいです。
第二次世界大戦の空襲で視力を失った男。空襲までを共に過ごした実の父母、盲目になってから育ててくれた養父母の養育権の取り合いを調停員を交えて繰り広げられる会話劇。
男はほとんど狂人。誰にも心を開かず、双方の両親を冷酷に罵る。両親もただ振り回されるだけ。感じ的には愛があってといった風でも無い。調停員との腹を割った会話も、男の目に焼き付くこの世の終わりの風景という言葉の前では歯が立たない。
孤独や終末思想みたいなものが感じられるんですかね。
予習していったんだけどね。
こんなもの何の役にも立たなかった。

(以下、公演終了まで白字にします。あらすじではなく、後から自分がどんな公演だったかを思い出すために特殊な演出のキーワードを書いてしまっています。これを読んで観に行くとネタバレで面白くなくなると思いますので、お気をつけください)

家庭裁判所で男と双方の両親がいて、間に調停員がいる。
まあ、舞台がどんな感じかは想像できますよね。
多分、その想像した舞台じゃ、全然ないです。

前面に何か障子の骨組みみたいなものが3つ吊り下がっています。
役者さんは、なぜかバランスボールに座って、色々と不可思議な動きをします。

何といっても奇怪なのは、舞台後方に映し出される映像。
役者さんの顔がアップで映し出され、あらかじめセリフを全て撮影してあります。
でも、ピーという音でセリフの一部分の音声が消され、そこは舞台の役者さんがしゃべるといった形式。
撮影時は単に無機質な言葉を発しているだけみたいで、舞台ではもちろん感情が込められて言葉が出ます。
このギャップが一つのセリフにおいて連続性が無くなり、どういう感情で発せられた言葉なのか混乱させられます。
全体的にはドキュメンタリーみたいな雰囲気が漂います。
映像はそれと共に、俊徳道から四天王寺に至る道を歩いた景色が映し出されます。それも、何の意味があるのか、面白看板みたいな変なものばかり。
当日チラシに物語の歴史の流れを意識したと書かれているのですが、何でしょう、歴史街道みたいなものをたどっているのでしょうか。何をもってスタートして、どこにゴールしたのかよく分かりません。

音響はとてもドロドロした揉め事を争っている裁判とは思えない軽快な音楽。
これが調子を狂わせます。
喜劇なのかと錯覚するぐらいです。

男も親も、調停員も何かみんなどこか変。
特に育ての母親なんか、ずっと何をしているのか分からないくらい奇怪な行動をしている。そりゃあ、男もおかしくなるわって感じですかね。
挙句の果てには、アイスクリームを頭からかぶってドロドロになります。頭を冷やす、揉め事のドロドロ?分かりません。
育ての両親もわざとらしくて、すごく嫌悪感がある。
バランスボールのヒョコヒョコした跳ねる動きがまたイラ立つ。

サングラスの山。最後に舞台はそんな感じになります。
男はサングラスをかけていますが、そもそも何を意味しているのでしょう。
盲目になった今ですら、もう世の中を見ることを拒絶しているのでしょうか。
山になった視界を覆うもの、サングラスはそんな男の心から溢れ出てきた感じなのかな。

何でしょうか、この作品は。
観劇歴は浅いですが、今まで、こんなタイプの演出は観たことありません。
新しいのか古いのかもよく分かりませんが、独創性とかいう点では、まさに卓越している感じです。

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演劇」カテゴリの記事

コメント

 
こんばんは。
はじめまして…


縁あって本日⑮時の回を観てきました。

映像の演出は新鮮で迫力を感じました。
すっぴん&一発撮りが◎


しかし、アイスクリームの演出は意味不明(狂人を表しているみたいだが)…音色が変わってしまい違和感を感じました。


最後の落とし所は上手いと思います。


乱文にて失礼いたしました。

投稿: おやびん | 2012年9月 8日 (土) 23時20分

>おやびんさん

コメントありがとうございます。

映像演出は確かに新鮮ですね。私は、あんな感じの映像の使い方は初めて観ました。
どういう意図なのかは、分からないところも多いですが、なぜか引き込まれますね。

アイスクリームは狂人かあ。もう既にずっとおかしかったので、あそこまでしないと究極に狂ったことを表現できなかったのですかね。

よくは分かりませんが、演劇って色々な可能性を持っているんだなと感心させられる公演でした。

投稿: SAISEI | 2012年9月 9日 (日) 09時34分

先週見逃したが最も見たい1本でした。
毎回、最前線のアバンギャルドです。
習慣HIROSEで解説してます。
トイガーデン、フランスパンがドラカンに続く前衛劇団です。
hmpやEVKKも、時々使う手法です。
先週は良い作品が目白押しでしたね。
私は北京蝶々とAKASAKAが素晴らしかったです。
りゃんめんにゅーろんと浮遊許可証も好演でした。

投稿: ツカモトオサム | 2012年9月12日 (水) 06時27分

>ツカモトオサムさん

コメントありがとうございます。
ご無沙汰しております。

ここはねえ・・・
本当にびっくりしました。
HIROSEさんのブログも拝見しましたが、ここはそういうところなんですね。

激戦週でした。
ブログを拝見したところ、テノヒラと北京蝶々しかかぶりませんでしたね。
私は、学生劇団にちょっと重きを置いてみました。
こちらも、なかなか良かったです。
りゃんめんにゅーろんは押さえたかったですが、観劇枠が足りませんでした・・・

投稿: SAISEI | 2012年9月12日 (水) 13時53分

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