Cavalleria Rusticana ~神よ、この愛に罰を下さい~【劇的集団まわりみち】120915
2012年09月15日 ロクソドンタブラック
詳細は下記に述べているが、話は昼ドラのように分かりやすいものなのだが、その展開はかなり違和感が残る作品であった。
と言っても、原作からあえて重要な部分をカットして再構成してみるという試みは非常に面白く、魅力的な作品に仕上がっているように感じる。
感極まった複雑な心情を役者さんが迫真の演技で表現される。
マイムも多用され、たった4人の役者さんで様々なシーンをスマートに創り上げるところは、とても見ごたえがあった。
破滅へと向かう悲劇を固唾を飲んでただ見守るしかなく、その最後の瞬間まで目が離せない舞台だった。
(以下、あらすじがネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は明日、日曜日まで)
イタリア、シチリア島。
戦地へ向かう男、サルヴァトーレ。
その実母、ルチアと婚約者である娘、ローラ。
男は言う。必ず戻って来て結婚を。それまで、母を大切にして、待っていて欲しいと。
ルチアとローラは実の親子のように、生活は苦しいが2人で力を合わせて生活しながら、男の帰りを待つ。
でも、・・・
ローラは村の有力者であるアルフィオと結婚してしまう。
アルフィオはいい男で、ローラはもちろん、ローラにとって第二の母であるようなルチアも大切にする。
ルチアの開いた店にたびたび立ち寄り、客を連れてくる。
おかげで店は大繁盛。昔のように生活も苦しくなくなった。
みんな幸せだ。
そこにサルヴァトーレが戦地から帰って来る。そして、これまでのことを知る。
悲しみにうちひしがれるが、昔、一夜を過ごしたことから好意を持たれている女性との結婚を考え、新しい人生を歩もうとする。
アルフィオは変わらずルチアを支援し続け、サルヴァトーレのことも弟のようにかわいがる。
でも、サルヴァトーレの複雑な気持ちは抑えきれない。
やがて、ローラと過ちを犯してしまう。
これをルチアが知ってしまい、アルフィオに全てを告げてしまう。
怒り狂うアルフィオ。
アリフィオとサルヴァトーレの決闘が始まる。
悲しみにうちひしがれる女たち。
ここで話は終わる。
決闘の行方は、冒頭のシーンで既に描かれており、血まみれの男が倒れるところが、本当のラストとなる話の構成である。
ネットで少し調べたら、原作はサルヴァトーレが昔、一夜を過ごした女、サントゥッツァが主役的存在らしい。その扱われ方の大きさはオペラ、小説、戯曲などで異なるようだが、キーワードとなるキャラであることは間違いなく、どれもローラとの逢引きを告げ口するのはこの女性である。
この作品では告げ口するのは母親のルチアであり、サントゥッツァはどんな女性なのかもほとんど描かれておらず、役者さんも存在しない。主役を消すという珍しい脚色をしているみたいである。
サルヴァトーレはローラを愛し、もう愛してはいけなくなっても、その愛情を消すことは出来なかった。
同時に、サントゥッツァも愛する。自分のことを待ち続けてくれた事実は深い愛として受け止め、決闘の間際も母に自分の死後、彼女を頼むとお願いしている。
ローラも好きだが、サントゥッツァも。
ローラがサルヴァトーレとアルフィオと2人の男を同時に愛することに似ている。
ルチアは息子のサルヴァトーレをもちろん愛する。どんなことがあっても味方だと言い続けている。その婚約者ローラも実の娘のように愛し、アルフィオのことも感謝とともに愛している。
アルフィオはローラを愛し、ルチアも母のように愛情をもって接する。
愛に溢れたこの関係に、どうゆうわけだか引き起こる、もうどうしようもない惨状。
複雑だ。
どうも普通の愛の考え方では、話に納得いかないところがあるように感じるのだ。
イタリアの話だからだろうか。
イメージはマフィア一家の愛。
仲間という認識がある間は、絆で結ばれるが、裏切りは許さない。一家の秩序を乱す者には粛清が加えられて然るべきみたいな。アルフィオが特にそんな感じで、ルチアとの絆を義理を通すということでローラにも強制しているようなところがある。
これは、特にサントゥッツァが告げ口せず、母のルチアが告げ口したという話の改変で特にそんな考え方になる。
どうも、話の中でサントゥッツァはあまりいい女で無いような匂いがするように描かれている。性格が悪いとかではなく、家として、少なくともサルヴァトーレが彼女を迎え入れると家の秩序が乱れるような感じなのだ。母親はローラとの一件を、破談にしてしまうチャンスだと思ったのではないか。
そこには親子の愛情を超えた鉄則みたいなものがある。神への冒涜を許さないというような宗教的な要素も感じられる。
そして、この一族を乱す原因は、悲しいながら、戻って来てしまったサルヴァトーレだろう。
彼はローラを寝取ったから殺されているが、いずれにせよ、秩序が保たれていた一族を乱す存在であり、遅かれ早かれ、何らかの形で追放される日はきっと来たように思う。
と、自分が生きてきた世界とは程遠い世界での悲劇として話を捉える。
そうしないと、どう考えても納得いかない。
母親の息子への愛は絶対だ。ローラとのことが発覚した時に、考えられる母親の行動は、逃げるか、アルフィオを自分が殺すということしかないように思うのだ。
普通の親子愛、男女愛を描くなら、そうなると思うのだ。
この話の展開は、私にとってはあまりにも違和感があり、これは特殊世界での別次元での愛を描いていると思うしかなかった。
| 固定リンク
「演劇」カテゴリの記事
- 【決定】2016年 観劇作品ベスト10 その3(2016.12.31)
- 2016年度 観劇作品ベスト10 その2(2016.12.30)
- 2016年度 観劇作品ベスト10 その1(2016.12.30)
- メビウス【劇団ショウダウン】161209(2016.12.09)
- イヤホンマン【ピンク地底人】161130(2016.12.01)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント