« 田舎の侍【劇団鹿殺し】120927 | トップページ | 鉄の纏足【東京タンバリン】120930 »

2012年9月29日 (土)

贋作・罪と罰【すごい劇団】120928

2012年09月28日 京都精華大学 水上ステージ

水上ステージなんて言葉に惑わされて、ついフラフラと観に行ってしまいました。
精華大は遠いですなあ。
だいたい、叡山電車に乗ると、山奥に向かうような感じで、しばらく下界とはお別れみたいな気分になってくる。

で、作品は野田秀樹さんの話らしく、罪と罰を幕末の時代に置き換えて創られたものでした。
話自体はもちろん面白かったですが、期待どおり、水上ステージの魅力もたっぷり。
やっぱり、演劇は生で観ないとね。

三条英は女性ながら将来有望な志士としての活躍が見込まれる塾生。
家は貧しく、生活は厳しい。
多くの人の幸せという理想のためには、人を殺しても構わない、優秀な人間は凡人を犠牲にしてよいという歪んだエリート意識の考えの下に、金貸しの老婆を殺してしまう。しかし、予定していなかった一般の人まで殺めてしまう。
英はうまくその場を逃げる。
事件は違う容疑者が取り調べを受けているが、目付は英が怪しいと疑っている。
英は、その罪悪感と目付による追い込みに徐々に苦しんでいく。

英の妹は、金持ちの溜水という男との結婚話が母によって進められている。この男には黒い噂が付きまとっており、英は反対するが、妹は家のために優秀な姉のためにという自己犠牲の精神で覚悟を決める。
同じ塾生の才谷は英にとって信頼できる人。
彼が坂本龍馬であると思っている溜水は才谷に近づき、さらには英の蒸発していた父も利用して自らの陰謀を企てようとする。

世は尊王倒幕の機運が高まり、ええじゃないか運動が志士たちに広まっている。
才谷は倒幕派の志士たちの先鋒に立ちながらも、幕府側の目付にもその情報を売る二重スパイの立ち回りを見せる。
溜水からは豊富な資金を得て、自らの想いを貫こうとする。
彼の目的はただ一つ。無血革命を起こして、世を変えるということ。

英はついに容疑が固まり、目付に逮捕されそうになる。
放免する交換条件が、坂本龍馬を暗殺すること。
しかし、全てを明かした英に対して才谷は自首を勧める。そして、自分がしようと思っている決意を英に話す。
分かり合った二人はいつの日か、また出会えることを誓い、各々の道へと進むことに。

英は牢獄へ。
才谷は無血革命を成功させ、大政奉還が行われる。
新たな時代の夜明け。
恩赦で釈放される英は出獄。
才谷への想いを語るが、・・・

あらすじは少々混乱してしまったところがありますが、だいたいの流れはこんな感じ。
倒幕運動が高まる幕末の江戸をベースに、その時代に翻弄される者たちが描かれています。
と言ってもあまり江戸という限定した時代は感じさせず、現代のようにも思わせるところがあります。
幕末の動乱期における坂本龍馬暗殺なども絡ませているが、ええじゃないかの考えや、学生運動の様相なども想像させる不思議な時代観になっているようです。

野田作品にしてはストーリーが一直線で比較的分かりやすく進む。
言葉遊びも少なく、少々異色の作品みたいだ。

時代を変えるという厳しい時において、人を殺すという究極の暴力が許されるのか。
これは人を殺すまではいかなくても、相手側の考えを完全に潰すという形でしか、新たな時代の幕開けは無理なのだろうかという考えにも結びつくように思います。
そう思うと、少し今の時代にも、ちょっと見直してみたい考えのような気がします。

英は、少々、考えが至上的になり過ぎている感があるものの、革命に何かの犠牲という考え方は分かるような気がします。しかしながら、理想のために、凡人一人を殺しても構わないという考えの下で行動を起こしても、その犠牲は実は一人ではすまない。この作品では、たまたま金貸しの近くにいた人が殺されてしまっていますが、その後もたくさんの人を犠牲にしていかなくては革命へとたどり着けないようです。そもそも、たどり着くことすら実は出来ないのかも知れません。根本的にやはり考えがおかしいのでしょう。
さらに、人はやはり弱いもので、犠牲者を出したことでのしかかる重みには結局耐え切れず、志半ばに自らが潰れてしまうということも描かれています。

一方、才谷は無血という形で犠牲無しでの革命を起こそうとしています。しかし、そのためには卑怯なまでの立ち振る舞い、人の金でも理想のためには騙して使っていいというような、かなり狡猾な行動をしなくてはいけないことも事実です。これと人を殺すことはもちろん同格で考えることはできませんが、こちらはこちらで見えにくい犠牲が伴っています。この話での溜水などは、その犠牲者であると考えていいように感じます。

結局、ラストは坂本龍馬は暗殺されており、英は出獄しても、彼とは出会うことはできません。
彼女の提言していた一人の犠牲で多くの幸せという考えが、ここで近い形で実現されていることはかなり皮肉で、悲しい結末のように感じます。

詰まるところ、人を殺すとか、暴力とか、戦争とか、そんなものでの革命は本当の意味では実現できないということでしょうか。
これは英の考えだけでなく、坂本龍馬の考えですら否定という意味合いです。
英が武力的革命なら、坂本龍馬は調整型革命でありますが、どちらも成功したとは言い難い。
上っ面の理想論になりますが、結局は調整型でも本当に分かり合っての調整でないといけないように感じます。この話での坂本龍馬のしていることは、悪く言えばどちらも騙して丸め込んでいるだけのように見えるのです。
英の起こした行動、考えを才谷は受け入れます。そこには否定無しの、人の想いの理解、想い合いが感じられます。一言で書いてしまえば愛といったところでしょうか。
この行動を革命運動にも適用すれば良かったように思います。英を受け入れられるのなら、幕府の考えや倒幕派の志士たちの想いもきっと受け入れて、それを分かり合う、想い合う世の中にすることが出来たのじゃないかと思うのです。
理想や大義名分による自分の頭の中の理論武装が崩れていく中で、自分とも戦いながら進めなくてはいけない革命運動。
で、結局それを救うのは愛なのかなと。

愛があれば平和の世の中になんて、よく歌詞にも出てきますが、それは確かに間違いではないと思います。
じゃあどうするのと言われたら、答えにはもちろん窮しますが、少なくともそうであることはいつまでも信じていたいように思います。

水上ステージという舞台美術は見事でした。
細長い池の一部分に円形の舞台。ここが1階みたいな感じです。
その奥にパイプで組み上げた3階建ての建物。2階、3階が使われます。
それだけじゃなく、野外を活かして、客席も含めて隣の校舎なども利用した舞台となっています。
臨場感というのでしょうか。例えば殺して逃げたりするシーンなどは、池の周囲あたり一帯が舞台ですので、平面的に役者さんが駆け回り、真に迫った迫力が感じられます。
さらには、空間的にも高い建物があり、そこも役者さんが駆け上ったりすると、その臨場感は非常に高まっていたように思います。

あとは、やはり声ですか。
始まってすぐは、これは2時間観るのきついなあと思わせるぐらいに、声が届かず、筋が掴めない。
舞台が魅力的でも、さすがに話が分からないのはきついぞと思っていましたが、始まって30分ぐらいで耳が慣れたのか、役者さんがあたたまってきたのか、問題なくなりました。
声というのは不思議で、皆さん、声は大きいのだけど、通るというのとはまた違うんですね。難しいものです。
ちなみに、ダントツで声が通っていたのが徳山まり奈さん。この方のレベルだったら、申し分ない。

少々、体調が悪く、本日の公演前に感想記事を上げようと思っていましたが、遅くなってしまいました。
雨が降っていましたが、大丈夫だったかなあ。
塗れていると滑りやすそうだし、ましてやずいぶんと高いところで演じられたりしますからね。万一、落ちでもすれば、本当に人が死ぬなんてことになりかねない感じです。
公演が無事に終わっていることを祈って。

|

« 田舎の侍【劇団鹿殺し】120927 | トップページ | 鉄の纏足【東京タンバリン】120930 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 贋作・罪と罰【すごい劇団】120928:

» テレビドラマ 罪と罰 [外国為替証拠金取引・FX入門・ETFリート 退職に備える投資法]
    衛星放送でやっているテレビドラマ「罪と罰」は やはり、かなり悲惨な物語展開だと思う。  原作に忠実にドラマ展開すると、本当に悲惨な話になる。 ロシアの文豪は本当に救いのない物語を書くと改めて思う。  以前に、ソ連で「罪と罰」の映画を創った時に、 主人公役の役者が自殺した。 役に入り込み過ぎた。 確かにラスコ役は、厳しい役だと思う。  エリカ様も役に入り込み過ぎて、休養とのことだ。 エリカ様...... [続きを読む]

受信: 2012年10月11日 (木) 01時29分

« 田舎の侍【劇団鹿殺し】120927 | トップページ | 鉄の纏足【東京タンバリン】120930 »