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2012年9月14日 (金)

ニューヘアースタイルズグッド【壁ノ花団】120913

2012年09月13日 元・立誠小学校 講堂

独特のユーモアにあふれて、個々の話はとても楽しいのだが、全体的には何か鬱蒼としたものが漂う。
それは、島という閉鎖空間を思わすものであったり、そこで周りの時間と異なる流れを感じながら生きていることへの不安やら、あまりいい感情は得られない。
観終えて、どこか不安を煽られたような複雑な嫌な気持ちが残る。

瀬戸内の海に浮かぶ小さな島が舞台。
本州から大きな橋が架かり、それは四国にまで伸びる。

その島に住むある兄弟。
母の教えに従って、学校にも行かず40歳を超えてしまった二人。
しかし、母親は学校へ行って、もっと大きく生きろと遺言を残す。
そして、弟は小学生となり、いつの日か島を出ることを目指す。
兄は、なぜか用務員となり、日々を何となく過ごしている。

この島に音楽の女教師がやって来る。
昔、付き合っていたが、ある日姿をくらましてしまった、泳ぎを教えてくれた彼氏を探している。
泳ぎといっても、実際には水に入ったことはなく、イメージトレーニングだけである。
ただ、水着だけは持っており、いつでも泳ぐことは出来る。
ある日、彼によく似た犬と出会い、何となくその犬を飼う。
用務員の兄は、この女性に想いを寄せているが、特に何か行動をするわけではない。

兄弟の家に叔母さんだと名乗る女がやってくる。
用務員の兄を、17歳の女性と結婚して島を出るようにそそのかす。
流れで兄は、女教師の飼う犬と共に船で島を出るが、遭難して死んでしまう。
犬だけは島に戻ってきて、弟に飼われる。
タイトルは、この船で島を出ると時に、頭が少々さびしい兄がカツラで新しい髪型になることからつけられているようです。

筋はこんな感じなのですがね。
何でしょうか。島ののんびりした温かい話かと思ったら、どうも気味悪く、不安感を煽られ、少々イライラしたものを感じる話でした。
どうも、登場人物たちがもどかしく、この島でもがいている感じがする。

40歳の男が小学生になって、子供に交じって全力でドッチボールをする。そんな不条理な学校生活。
犬は人そのもので、狡猾で飄々とした嫌な一面を覗かしながら、独特の雰囲気を醸し出して笑いを誘う。
役者さんは4人で、所々でリーディングのようなものを入れ込んだりしての会話劇。
ただ、観てるだけなら、けっこう笑えて面白い話です。
でも、その背景がどうも暗くどんよりしている。ぬぐっても、ぬぐっても消えない。笑ってもその場だけが一瞬明るくなるような感じ。根本的なところでは、ど~んと腰を据えて動かしようがない問題が潜んでいるように感じました。
閉鎖された島の慣習や人たちの行き詰った生活がイメージされるような部分もあり、何とも不気味です。

時間の流れみたいなものかな。
兄弟が読むナポレオンの伝記本では、もう最初の7ページでナポレオンは島を出るようです。そこから、彼はきっと世界の人が知る活躍を見せるのでしょう。きっと読むと、山あり谷ありで楽しいはずです。
一方、こちらの兄は、その本すら、なかなか読まず、いつまでたっても、自分と同じように島を出ていって、時を進める段階のページにまで達しない。弟も、島を出ると言っていても、本で言えば、何ページになるのか分からず、きっと、出て行った後の物語は数ページで終わりを迎えそうです。
ともに、面白くも何ともない伝記本が出来上がるような気がします。
この何ともいえない先が細くなっていくような不安な感覚が、伸び続けて、この島を通過する橋に通じているように思います。

犬とおばさん。
この島の人に降りかかる繰り返される日常と少し異なった出来事。
おばさんはどうも自分がこの島で17歳で死んだ霊のようです。
彼氏は生きているのかどうかは分かりませんが、女教師の中では過去の人となっているみたい。
共に時が止まった物。
こんな物が二人の時の流れを進めようとする。
それで現状打破できて、前へ進もうとするみたいな、自己脱却のような感じではありません。
それでも、やっぱり、行き着くところは変わらないみたいな、どちらかというと厭世的な感覚の方が強い。
変わらないならそれは時が止まったことと同じ。兄も女性も、こんな死んで時が止まった者とさほど変わらないのかぐらいにまで思ってしまいました。

作品の意図するところはよく分かりませんが、自分たちがこれから進む道はどうなるのだろうかと心配になってしまう気持ちが残っています。

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コメント

こんばんは☆
壁ノ花団見に行かれてたんですねー!
水沼さんだから見に行こうかと思ってたんですけど、タイミングが合わなかったです・・・
前の『フォーエバーヤング』を見に行って不思議な感じでちょっとポカーンとなったので、違うの見てみたかったのですが、行ってたらまた不思議な感じになってそうです・・・(^-^;

投稿: まゆ | 2012年9月18日 (火) 23時55分

>まゆさん

金替さんが、いつもどおり、いい味出してた(゚ー゚)

ただ、やっぱりこれもポカーンとなると思うわ。
水沼さんはけっこう役者さんされてる時とイメージが違う作品を創られるんだね。

11月のアイホールは行かないとあかんね。

投稿: SAISEI | 2012年9月19日 (水) 16時18分

金替さんのキャラ良いですよねー
赤い薬のときに金替さんに一言書いていただいたハガキがうちにあります♪

そうですねー私もイメージが違って驚きました。
でもこないだ観客でいらっしゃったときの雰囲気を見たら、作品の雰囲気そのままな気もしました。

11月行く予定です♪楽しみですヽ(´▽`)/

投稿: まゆ | 2012年9月19日 (水) 22時54分

>まゆさん

あれだねえ。
今日、土田さんの花形狂言がピッコロであったんだね。
観に行きたかった。

その前に、良さそうな芝居をまた観に行きましょう。

投稿: | 2012年9月20日 (木) 17時52分

そうなんです!
それ観に行きたかったけど予約しようと思ったときには遅かったみたいで・・・できなかったです(;ω;)

ひとまず生瀬さんを観に行こうかと思ってます♪
はーい(* ̄▽ ̄)ノまたご連絡お待ちしております♪

投稿: まゆ | 2012年9月20日 (木) 22時56分

>まゆさん

PRESS?
まだ予約できるのかな。

東京で土田さんの作品もあるよね。
さすがに無理だけど。

10月のミジンコあたりはお薦めだけど、場所と時間が厳しいかもね。

投稿: SAISEI | 2012年9月21日 (金) 01時16分

全然どうでもいいですけど・・・寝れないです!(><)なんとかしてください(≧ヘ≦)

PRESSじゃないです。
10月8日にサンケイホールブリーゼであるリーディングドラマです♪土田さん作・演出だから面白そうだなぁと思って
東京は無理ですねーそもそもそんなに行ったことがないので怖いところとしか思えません!!(笑)

ミジンコは時間がギリギリだなぁと思って予約できずにいました

もうひとつ・・・SAISEIさん何かありました???気のせいならいいですけど・・・何かご迷惑になってたら申し訳ないです。

投稿: まゆ | 2012年9月21日 (金) 02時21分

>まゆさん

リーディング公演、東京と同じやつかなあ。
大阪でもするのか。情報漏れだった。
行けるなら行きたいけど、リーディングは苦手だしねえ・・・

ミジンコはギリギリでしょ。
これが一番、いいかなあと思っているんだけどね。

何かあったよ(゚ー゚;
また、メールしますわ。

投稿: SAISEI | 2012年9月21日 (金) 09時38分

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