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2012年9月12日 (水)

都道府県パズル【北京蝶々】120910

2012年09月10日 芸術創造館

観劇ではなく、討論会の傍聴。
道州制をテーマに地方問題から、今後の日本まで。
県民性豊かな個性的な日本人が、その想いをぶつけ合う、貴重な討論の場に居合わすことができた。

道州制フェスティバル。
このイベントの打ち合わせのために、日本の物理的真ん中の地、岐阜に各代表が集まる。
北東北<青森>、南東北<福島>、北陸<新潟>、北関東<栃木>、南関東<東京>、東海<三重>、近畿<大阪>、南海<愛媛>、西海<長崎>。
各代表を演じる役者さんは、県・地域のイメージを彷彿させるキャラ設定となっている。
温度差は大きく、
真剣な人もいれば、まあ観光がてら参加してさっさっと終わらせたい人も。

最初はイベントで実施予定のおおなべおでんの具材に関する話し合い。
県のこだわりがぶつかり合う。
出汁といえば関西出汁は絶対に譲れん、みかんと言えば愛媛だろう、魚で他のところには負けられん・・・
理由が無いとまでは言わないが、もう思い込みに近いわがまま放題の意見がぶつかって、とてもまとまらない。
ここは代表としてさしてやる気のない人でも、潜在的な自らの郷土を無条件に愛する力なのか、絶対に引かない勢いである。
結局、お弁当にしてみんな入れちゃえば。名を道州弁当。よくありがちな、問題解決に何もなっていない結論で落ち着かせようとする。会議を終わらすために生まれた回答で結論とは言えない。これでは何のために会議をしたのか分からない。よく見かける日本の会議らしいところに苦笑い。
ここに至るまでの、くだらないまでの各代表のこだわりの絶妙な掛け合いも含めて、何をしてるのやらと嘲笑。こうして、自分にも深く関わることなのに、すぐに第三者の立場で、引いて見て他人事にしてしまうところも日本らしいか。
奇しくも、舞台・客席含めて、日本の悪いところが浮き出ている。

こうして話し合いを聴いていると、道州制とか言いながらも、結局は県意識だなあと。各代表は、道州の代表になっていない。あくまで出身県の代表である。地域の他の県のことはあまり知らない。
極端な例を挙げると、きっと島根がボロクソなことになっても、愛媛が大丈夫なら、南海代表者はその決定に従ってしまいそうな感じである。
道州制を議論する人たちとして大丈夫なのかと不安になりながら見守る。
地域を勝ち抜いた県の代表みたいな感じであり、これは道州制で問題の一つとなる、地域のどこか一つの県が都市となって、他は今以上に地方となり切り捨てみたいなことになるのではという想像をたやすくさせるようである。

会議はこれでは終わらない。
フェスティバルがどういうイベントであるべきなのか。いいところばかり押し出したものではなく、悪いところも伝えて、制度自体をきちんと考える場にするべきではないか。
会議自体の根本を覆すとんでもない事態になる。
こんなパターンもよく見かける会議の姿であり、もううんざりなんてこともけっこう多いのでは。
この会議も、方向性がおかしくなるが、そこから多くの腹を割った本音の議論が始まる。
形だけの会議として終わらすには、あまりにも重大な問題であり、地元の名物を認めてもらってまあいいかではすまされなかったようである。

フェスティバル、道州制の賛否に関しては、各代表の思惑が深く絡んでいる。単純な個人的な利害の問題から、所属する組織の思惑、地方が抱える問題、都市部との隔たり、その県・地域で生きていく者としての考え・・・
こんな各代表の想いが、やがてはこれからの日本のあり方をどう考えるかという意識を持って、このフェスティバル・道州制を話し合わなくてはという結果に至る。
話はここで終わる。
これから、本音をぶちまけあったみんながもう一度話し合うというところ。だから、これからどうなったかは描かれていない。
ここまで進めばきっといい話し合いが行われるに違いないとは思う。
でも、現実は、本音でぶつかりあった会議など経験したことないな。厳しい書き方すると、虚構なんだろうと思う。
しかし、演劇も含めて、本や映画などで描かれる話は、虚構であっても決して無いものではない。誰もがこうあったらいいのになと思うものも多い。この作品の会議の姿もその一つだと思う。
だから、こういう現実もきっと繰り広げられる日が来るのかもしれない。

地方における問題から原発問題にまで発展していく話は、少し盛り込み過ぎな感は否めないが、このテーマにおける現実が突きつけられているだろう。
福島出身の南東北代表がなぜあそこまでかたくなに、道州制に賛成をして、フェスティバルをどうあっても成功させようとしているのかが、最後の方まで全く分からなかった。
南関東や東海代表の自分たちのイベント会社、広告会社の利害に絡んでいるエピソードなどはすぐに理解できるのに。
福島の名を消し去ろうとしているのだ。
過去、原爆の被害にあった広島や長崎のことで、話を聞いたことがあるが、これにより差別を受けて結婚できなかったり、一生、その県出身という重荷を背負わされることを回避させようとしている。
あまりにも悲しい郷土愛である。福島の人たちにこんなことを考えさせてしまう社会はもちろんNoだろう。
作品中に広島・長崎の人もおり、今は普通に元気に生きていると発言する。
確かに広島・長崎から連想する言葉をと言われたら、もちろん、原爆、戦争という言葉は挙げるだろうが、同時に平和という言葉もきっと挙げる。長年の時を経て、あの悲劇を未来への希望にきちんと日本はつなげたんだ。
いい国だなあと感じる。誇らしいじゃないか。
チェルノブイリとかどうなんだろう。向こうの国の人や世界は、連想するキーワードは原発事故で止まっているのではないだろうか。
最大の戦争の被害地を平和のシンボルにまで変えた国だ、日本は。だったら、福島も原発事故、そして核廃止の象徴とまで変えることができるのではないか。そこは日本人はそうなると信じたい気分だ。
会社の利益、自分の会社での地位、働き場所の確保・・・
もちろん、私利私欲にとらわれて生きる人はいるし、綺麗事だけでなんかは生きていけない。端的に悪いことだと言うのも安直だろう。
でも、そんな人も含めて、日本の良さはこうして、過ちをきちんと認め、発展へとつなげていける国民であるというところもあるように感じる。

県や地域にこだわって、異常なまでにぶつかり合う人たちの奥底に潜む郷土愛が、日本という国の愛にもきっとつながっているように思える話だった。
何か、色々あるけど、やっぱり日本っていい国だよ、きっと。

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