彼女が落ちてこなければ【大阪大学劇団ちゃうかちゃわん】120902
2012年09月02日 神戸アートビレッジセンター KAVCホール
ぱっと感想を書くと、非常に一致団結、まとまった感があってしっかり見応えのある作品に仕上がっているように思います。
荒廃した世界にヒーローと言うと、どうも年初に拝見したDEW PRODUCEの作品とオーバーラップするところがあって、その時のことを思い出すのですが、舞台セットは負けじと立派なものが出来上がっている。
作品のスマート感は格段に上。プロデュース公演よりかは、当然、一つの劇団なのでまとまりやすいのか、ごちゃついたところをあまり感じません。
ただ、また、役の意味するところが分からない部分がある。
帰りの電車の中でつなぎ合わせてみようと、手帳に相関図を書いてみる。
う~ん、やっぱり分からない。
世界はいつ終わるか分からない。でも、そんな世界が終わりかける時には必ず優しい人達がやってきて、世界を救います。
みんな、いつ世界が終わるかなんて考えていないみたい。だから、自分が世界を救おうと思います。
そんなことを考えているある男。
世界を救うを大義名分に生きる目的を見出しているようなところがあります。
孤独な闘いです。
だから、どこからか、自分の行動に協調してくれる遠く離れたところにいる女性と話をして喜んでいます。
優しい人たち。
荒廃した世の中で、わけ隔てなくみんなのために尽くします。
ありがとうの精神が世界を救うとでも思ってるのでしょうか。
どうも偽善のようなところもありますが・・・
マフィア気取りの若者たち。
仲間、つまりマフィアの世界では家族。この家族が絶対。守るために、全精力を尽くします。どんな手段を取ろうとも。ゴッドファーザーもそうおっしゃっている。
家族だけが全て。他の者のことなど考える気も無い。
先は見えないし、毎日暇だから、ただそんなことして暮らしているだけ。何か目的を持って生きようとしている奴を見るとイライラする。
荒廃した世を取り仕切る協会。
若者のすることは大目に見て、争いなんかしちゃいけないなんて言いながら、自分が被害を被ったら、徹底的に力で屈服させる。
権力者の姿そのまま。
ファクトリーと呼ばれる人たち。
七色の象を見た日から、色の感覚がおかしくなって、日々、頭を悩ます男。そんな男の下で、奇抜な色彩の絵を描いて過ごす人たち。
こんな人たちがこの世界にはいます。
それが、ある女性が宇宙からやって来たことから、変化が訪れます。
結局、何を伝えようとしているのかはよく分かりません。
自分なりに色々と考えた結果がこれ。
優しい人達は、ある種の上層階級の人たちのように、余裕があるので平和は願うが、世の荒廃や歪んだ権力構造が無いと存在価値が無いので、人に尽くしながらも傷つけるという矛盾した行動を正当化する。
マフィアは、将来を悲観して自暴自棄になっている若者。仲間との絆意識だけが生きている証となっている。同じように虐げられている者には、自分を慈しむように接することが出来るが、上層階級には反発心が生まれる。日々、生きることに精一杯な下層階級の人をイメージします。
協会は、荒廃した世の中にはびこる権威。政府みたいな感じでしょうか。権力構造の頂点を維持するために、従える者を無理に作りだす。そのかっこうの餌食は、切り捨てても世の同調を得やすいマフィアのような者。
ファクトリーは鋭い視点で今の世の中を見てしまう人。よくある100年早く生まれてきてしまったみたいに、他者には見えない物が見えてしまい、先への不安感を煽られて生きる。一般人への影響が強いので、排除して閉鎖した空間で生活させる。
世界を救おうとしている男は、今のおかしなことに気付いてしまった凡人。何かをしないとダメになってしまうと思っているが具体案は見出せない。だから、少しでも同じ考えの人を求める。
特殊な世界のような設定ですが、言ってみれば、今の私たちの住んでいる世界と特段、変わらないような気がします。
この世界は、別に平和だと思うのです。
今、私達が生きている世界同様、よくよく考えるとおかしなことだらけみたいですが、ある種の力のバランスで均衡が保たれている。
で、これでいいのかということです。ずっと、このままで。
ちょっとしたことですぐに崩れそうなバランスで、未来はあるのか。5分後に世界が終わることを否定できない世の中なのは、こんなもろいバランスによって保たれた世の中だからなのではないかと、言っているような気がします。
宇宙からやってきた女の子の登場により、この均衡は崩れます。月が無くなったりするのも、こんなバランスの崩壊を意味しているのかな。
均衡が崩れるや否や、あっという間に悲劇的な状況に追い込まれます。
そして、上層部の人達だけはそこから逃げ出せる。
女の子は何だろう。本当に平和を崩す破壊的な物とも見れるし、未来への視点のように、発展的な考えで人が気付けばいい物のようにも思えます。
ちょっとした一つのことで、平和が崩れるなら、逆に荒廃した世界に平和も一瞬で訪れる理論も成り立ちます。5分前に世界が始まったことを否定することが出来ないように。
そんな、荒廃からの未来への希望を見出せるもの。それが、この作品でいうジギーのように感じます。
最後のシーンから、そんなことを想像しました。
長くなったので、役者さん一言だけ。
世界を救おうとする男、菊川匠さん。
信長だねえ。前回のオムニバス公演で、男前の貫禄を見せていたのでよく覚えている。今回も落ち着いた貫禄を見せます。ちょっと、途中で切れるシーンがあるけど、メリハリが効いてる。
宇宙から来た女の子、西田真梨子さん。
初見かなあ。美少女は覚えているはずだから多分。す~っとした透明感出して、人でない何かの象徴って感じですね。それが何かを読み取れなかったけど。
優しい人、水野のずみさん、日下部包さん。
うん、優しい人だ。笑顔が優しい。でも、偽善的な裏がある感じがする。両者とも。水野さんは毎回、雰囲気が異なる。キレキャラだったり、こんな優しい微笑みの人だったり。日下部さんは、本当に素敵な可愛らしい笑顔だ。見てて落ち着く癒しですね。
マフィア、リーダーが緑川岳良さん、子分が小林寿樹さん、原賢二さん。
動きがね。皆さん、切れがある。きっと、鍛えてるんだね。緑川さんの二重人格の演技は病的で気味悪いなあ。小林さんはちょっと軽薄な感じを出してコミカルなところも。原さんは一番、動きが凄いかな。
ファクトリー、石橋啓太郎さん、岩崎未来さん、粟田千妃呂さん。
石橋さん、不思議な役どころでほとんど口調でそれを醸し出す。岩崎さんはオムニバスのくじらのヒロインですね。前回、すごく震えて守ってあげたいオーラを出されてたのに、今回は緑色で威風堂々だった。騙された。粟田さんはしっかり者のイメージかな。撃たれた時の迫力が一番衝撃だった。
協会、会長が木村圭佑さん、子分が川原啓太さん、武宮由佳さん。
木村さん、今回は笑い控えめにして汚さに徹したのかな。バスローブの悪役。典型的な権威の象徴でした。川原さんが、冷静沈着な有能な感じでかっこいい。武宮さん、これまた出来る女っぷりの感じが印象的。
ゴッドファーザー、野瀬健吾さん。
この方が作・演。難しい話を作る。読み取るのが難解で大変。ナルシストっぽい演技はどこかでも覚えがある。ちょっと独特のねちっこい感じがあります。
遠く離れたところから世界を救おうとする男と話す女、木村葵さん。
ちょっとしか出演されなかったからなあ。電脳イメージ役だから、そんな印象は強いけど、実際はあんまり分からない。
本当はダブルキャストで、もう1つの方も観たかったな。
激戦週に、ちょっと離れた神戸に、公演数も各2回ではちょっと厳しい。時間も中途半端に空いちゃうし。
ちょっと、興味ある役もあったんだけど。
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コメント
ご来場ありがとうございました!
毎回じっくりと作品を味わっていただけて本当に団員一同光栄に思っております。
そしてブログにご感想を書いていただけるのを毎度楽しみに読ませていただいてます。
この激戦週に私たちの公演を選んで神戸まで足をお運びいただけたこと、心から嬉しく思います。
今後もちゃうかちゃわんをよろしくお願いします。
投稿: 緑川 | 2012年9月 3日 (月) 01時05分
>緑川さん
コメントありがとうございます。
毎回、楽しませてもらっているんだけど、やはりけっこう難しくて、なかなか作品の本質は理解できていないところがありますねえ。
ちゃうかちゃわんは、楽しい役者さんで緩和されていますが、作品の質がかなり高くて難しいように感じます。
ちなみに、今回は神戸だし、他の公演があるので辞めておくつもりでした。
やっぱり行こうかなと思ったのは、直前の役者さん紹介のブログでした。
一人のおじさんには効果あったということをお伝えしておきます(o^-^o)
次回公演、楽しみにしております。
阪大の広場に行けばいいのかな。
投稿: SAISEI | 2012年9月 3日 (月) 21時08分