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2012年8月31日 (金)

残響アナザー・ヘブン【MicroToMacro】120830

2012年08月30日 シアトリカル應典院

ロス・ドス・ロウヘブン、ハネモノ/ブルー・ヘブンに続くヘブンシリーズの三部作、最終章。
ロス・ドス・ロウヘブンはDVDで拝見。ただ、軽く鑑賞した程度なので、ブログに感想も書いていない。いずれ、しっかり観直さないとと思いながら、時間が無くほったらかしになっている。まあ漠然と内容は覚えているのだが。
ハネモノは再演も含め、2回、生で拝見。とても美しい作品だ。これまで観てきた900本以上の作品の中でも、印象に残っている作品だ。
今回の作品は、これを融合させた感じと言っていいのかな。

過去を見つめてみる。過去は変わらないけど、そこにある自分の心に響く音を聞く。
過去に出会った人の想いや言葉。
見つめ終わった時に、それが今の自分の幸せになっていないかな。
そんなお話。

(以下、ネタバレ注意。公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで)

冒頭は、ドレミという女性に、弟が生まれたシーンから。
ドレミを姉のように慕う男、ソラシドは自分の弟が生まれたかのように喜ぶ。
ドレミはソラシドに本当に弟のように思っていいから、いつでも会いに来てという。そして、弟をファと呼ぶことにする。ウサギのように可愛らしい子だ。
メインストーリーはドレミ、ファ、ソラシドの3人のいつまでも切れない素敵な絆を描いた話である。

それから時が経つ。
最初の30分程度は大きく3ヶ所での話が切り替わりながら進む。
物理的に異なる空間だけでなく、かなり後から気づくが、時間軸も少しズレているエピソードが綴られる。

ソラシドは漫画家になっている。
漫画の内容はドレミが所属するバンドを描いたもの。人気もあって、ファンも毎週楽しみにしている。
ドレミがバンドの練習をしていた場所に引っ越してきて、そこに住もうとしている。
でも、事故の後遺症で利き腕の右腕が麻痺して、もう漫画を描くことは出来ない。
元気よく優しい笑顔の担当の医師と少々中性的だがソラシドのことを真摯に想う漫画の編集者がそこを見つけ出し、今後のことを色々と一緒に模索する。
ソラシドの前には、時折、謎の男が現れる。彼は、ソラシドに過去を見せることが出来るらしい。

ファは事故現場に毎日やって来る。ドレミが事故死をした現場。
刑事は、目撃者もいないので、恐らくはドレミの不注意運転が原因と考える。
でも、ファはそれに納得がいかない。
どもってうまくしゃべれないが、必死に刑事に原因追及を訴えている。
事故現場に誰が手向けたか、日々かかされない花が置かれている。

保育園には少しテンションのおかしい保母さんと可愛らしい女の子。
女の子は母手一つで育てられており、母親は毎日仕事だが、素直に元気に先生と遊びながら楽しく過ごしている。
怪しいチンピラ風情の男が訪ねてくる。女の子の父親。悪いことをして、刑事に追われている。
どこからか現れたウサギを捕まえて、女の子にプレゼント。少しでも、女の子と接点を持ちたいようだ。

30分過ぎたあたりからは、3つの話がつながっていく。
これで、現況はだいたい掴めるようになる。

60分ぐらいから先は、過去を見せることが出来る男の手によって、回想シーンが繰り返され、現況に至るまでの謎が明かされていく。
ファがどもるようになった原因。
ドレミのバンド結成。
あの日の事故、そしてその原因。
・・・

いわゆるマルチプロットという構成なのだろう。これを収束させて、メインストーリーが浮き上がるようになっている感じである。
このあたりは、前2作品とよく似た構成になっており、パターンが分かっていると安心して観れる。劇団を観続けた者の特権かな。分かる人は分かるのだろうが、並行した話をずっと観ていると、どうなるのか不安になる。このまま、接点が分からないまま終わったらどうしようなんて。過去に何回も、結局、訳が分からず、半泣きで劇場を後にした経験がある私なんかは特にそうである。
この劇団は大丈夫。必ず、分かるようにつなげてくれるはず。そんな信頼感は観劇する際の安心材料としてとても大切。

過去を見せられるソラシドは、ただ、過去を見るだけでなく、その中に入り込んでしまう。その結果、過去が少しずつ変わってしまう。これは、ソラシドが書いてきた漫画に反映されるという形で表現される。少し異なるが、ロス・ドス・ロウヘブンのパターンだろう。
やがて、ソラシドはあの事故が無ければ、参加していたはずのドレミの夢であったコンサートを実現する過去を作ろうとする。その代償として、自分とドレミの関係が薄れた過去になってしまうのを覚悟して。
謎の男はそんなことをしても、運命は変わらないと言う。事故が起きてドレミが亡くなるのは避けられないと。
でも、ソラシドの想いは真剣だ。
過去に向かうソラシド。そして、その過去の行方は・・・

うまく書けないのではしょりますが、結局、戻って来た現実は特に何も変わっていません。
でも、その過去で、ドレミはコンサートで思いっきり歌い、自分の想いを弾けさせました。
ソラシドとの関係はほぼ無くなった過去ですが、やっぱり二人はつながっていたというようなところも見せます。
これは、事故の日にドレミが車の中でコンサートにおいてサプライズでしようと思っていることの伏線が回収された形で描かれます。
前作同様、特にエピローグがありません。
変わらない現実の中で、これからどうするのかだけが想像できるような形で終わります。
それは、最初に見せられた姿とは異なり、つながり合った話、過去の回想から得られたことから、それぞれの心がどう変わったかのかだけを感じさせます。
作品名のアナザー・ヘブン。もう一つの天国を自分の手で導き出した姿として終わっていると考えていいのだと思います。

生バンドは、この劇団の魅力の一つであるが、これまでと同じく、話にも絡むバンドは何らかの逆境を持つ人たちで形成される。孤児、欠陥を意味するハネモノに今回は声に障害がある者。
いわゆる世間一般に健常でない、普通でないと捉えられる者たちであり、言葉だけで書いてしまうとあまりいい印象は受けないだろう。
実際にこのあたりの感覚は観ないと分かりにくいかもしれない。
単なる障害うんぬんを描いているわけではなく、苦しんで悩んできた人たちが、心の底から出す声が描かれる。苦しみ悩み抜いた者たちだからこそ、どんなに今、苦しい思いをしている人にも頑張れという声を掛けられる。自分たちの声を聴いて、少しだけでもいいから前を向いてみて欲しいという真摯な声が聞こえるはずである。作品中において、亡くなったドレミの声を言葉をうまく操れなくなったファだけが聞き取るシーンがある。これは、苦しんでいるファだからこそ聞き取れたわけであり、聞くというより、心に響かせた感じである。劇中のバンドは、そんな苦しんでいる人それぞれの心に個別に届く声として響くように思う。

西村恒彦さん(劇団自由派DNA)が飛び跳ねまくってたなあ。ウサギと謎の男です。
ウサギの可愛らしくコミカルな姿から、謎めいた不思議な雰囲気の時間を操る男。
過去を見せるだけで特に何かの力を持っているわけではない。過去を見ることで、今の自分の考えを少し変えることができ、天国に近づけることを知らせてあげたいといった風でした。
何者なんだろう。途中のある一シーンで、女の子の実の父親かなと思ったのだが。保育園の女の子に会いに行くチンピラは実の父親では無いのです。女の子のそばには、好きだったウサギの姿で現れて、いつまでも見守ってあげる。謎の男は、ソラシドの心の苦しみを取り除いてあげないと、その苦しみの原因となっているチンピラが救われないから、現れたのか。チンピラは事故の現場を見ているのですが、刑事に追われているのでその場を逃げ出しているのです。そして、花をかかさず手向けているのもこのチンピラだったりします。でも、事故の原因はウサギの飛び出しだし・・・
これでは自作自演ということになるしなあ。でも、過去の回想シーンでは、一つ一つの言動を確認しながら、皆が幸せに向かう様にチェックしているような意味ありげな仕草してた。よく分かりません。
チンピラは泥谷将さん(劇団鉛乃文檎)。何とも情けない、しっかりしろよといった感じのチンピラ。女の子のことや愛する女の子の母親のことを聞かれると、嬉しそうに笑顔を見せるところが印象的。不器用だけど、真摯な愛。役名、フォルテシモともしっかり合った姿を演じられます。
保育園の保母さん、牛嶋千佳さん(コトリ会議)。登場シーンでは、ご自分の空気を作ってしまいますね。女の子を守るために、かなりの武闘派アクション。色々とコミカルなことをしてくれます。

ソラシド、長縄明大さん。幼き少年の純粋な姿から、大人になって苦悩する姿まで、色々と変化します。言いたいことを言えない。そんな少年が、自分が何をしたいのかを、謎の男に主張するようになり、その向かった過去できちんと言葉で言いたいことを発します。心に響く音を奏でた後、戻って来た現実では、麻痺していない左腕で絵を描く。ただ、書きます、書きますと言っていた昔とは異なる姿。昔の書きますももちろん嘘やいい加減な気持ちではないのでしょうが、本当に人に伝わる書きますという言葉が生まれていました。
ドレミとはどういう関係で仲良しだったのだろう。ここは明かされなかったように思うのだが。最初はファがつなぐ関係でドレミファソラシドっていうことかなと思って納得していたのだが、過去の回想で関係が薄れるという事実から、その関係をはっきり知りたくなった。逆にそれを明確にすると、薄れるということの説明がややこしくなるのかなあ。幼馴染ですというだけでは、どこか物足りない感じがする。

消し去りたい過去をトラウマにして、前へと進めない人の再生の物語。
過去を見つめる。よくある、死を見つめるのと同じで、そこから導かれる生への想い。亡くなった者が残した自分の心に響く音。
自らが生きていることの実感を得て、幸せになろうとする、天国へと近づこうとする。そんな祈りが込められた話に感じる。

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