ローザ【時間堂】120801
2012年08月01日 インディペンデントシアター1st
アフタートークがあってよかった。
まだ、何かしらのこの作品の意味が掴めたので。
これがなければ、どう感じて帰ればいいのか分からず途方に暮れるところだった。
舞台はローザというドイツ革命の指導者の墓の前。
そこに、彼女と関わった4人が集まる。
ローザを死へと追いやった大統領、共に処刑された盟友の妻、現共産党党首、敵対する党の有力者の妻。
4人はローザを回想しながら、あの時の革命を振り返る。
終演後、いや観劇中からずっと???だった。
確かに話はドイツ革命における政治的な思想や社会と個人の共産主義的な考えみたいなものが渦巻き、歴史的な背景は難しい。と言うか親しみが全く無い。
でも、それで???だったわけではない。このあたりは、むしろ事前に配布される資料や、4人という小人数を活かして実に分かりやすく描かれている。
何が???かと言うと、まず、なぜにドイツ革命なのかということ。今の日本に何か通じるものがあるのかが、いまひとつ分からない。
格差社会が話題になっているので、共産主義のような考えに逃げたくなってしまうのだろうか。皆が幸福にみたいな理想に燃える革命が、突き詰めれば、こんな私利私欲にけっこう紛れて、異なる考えを排除するみたいな思想へと行き着いてしまっていることの皮肉だろうか。
そして、作品名のローザという革命家。ローザはすでに亡くなっており、これに対する役は登場しない。ローザと関わった4人がローザになる劇中劇スタイルで描かれる。
そこから、この歴史的な背景の中で、運命に翻弄された悲劇の革命家みたいなローザが浮き上がってくるのかもしれないが、これがいつまでたっても私の頭の中で出来上がってこない。
4人はそれぞれ、ローザの仲間であったり、敵であったりと色々。そんな人たちが、自分たちから見たローザを好き勝手に演じるので、どれが本物のローザが全く分からない。
思想を強く持つ人たちなので、自分たちの中でその回想も捻じ曲げられている可能性が高い。自らの思想の正当性を掲げるには、理論武装が必要であり、そこからズレる考えは排除しないといけない。死人に口無しではないが、もう語れないローザの昔の姿をどう解釈するも、回想する者のさじ加減一つだ。
そんな、バラバラで一本化してこないローザの姿が描かれるので、革命家として何を求めて行動していたのか、正しい人だったのか、どういう世を作りだそうとしたのかという、作品設定で重要なものがほとんど感じられない。
回想の内容も、革命を描くのではなく、当時の人間関係が露骨に描かれているところも多い。
その代わり、ローザは花が好き、友達想いのところもあるが、頑固なところもある。ある大事なポリシーを汚されると容赦ない残酷なところがある。
なんて、革命家ではない普通のローザの姿が浮き上がってくる。
これでは、別に革命うんぬんの話である必要もなく、作品の設定が何なのかが分からない。
このあたりが、ずっと???だったのだと思うが、どうもこれは一つの狙いのようだ。
等身大の女性として、ローザを描く。これを等身大で演じる役者さんがいる。こんなスタイルの作品にしているような感がある。
当日チラシの中に作・演の方の人間は信じかねるが、俳優は信じているという言葉があるが、何となく、この考えに行き着くような作品なのかもしれない。
観ていて、この話は現実に無かった夢のような気もしてくる。作品中の回想のように、人が語って創り上げられる話などはそもそも、信じられないものなのかもしれない。でも、それを演じる役者さん、そこにいた登場人物が様々な想いを持って、あの時を過ごしたことは信じられるような気がする。
正直に書くと、あまり好きな見せられ方ではない。
役者さんではなく、私はそこから出来上がった作品の方をどちらかと言えば観たい気がするから。
この日は、イベントで「やぎさんと永遠」のリーディング作品もあった。
泉寛介さん(baghdad cafe)と永津真奈さん(Aripe)が離婚を決めた夫婦の会話をする。
リーディングなので台本を役者さんが持っているが、クリアファイルに入れて手を切りそうなくらいにピシっとした紙を膝元に置かれる永津さんに、ポケットにでも押し込んでいたのかくちゃくちゃになってんじゃんとツッコミたいような状態でペロンペロンになった紙を持たれる泉さん。
何となく、あ~、こういうところも離婚を引き起こす原因になるんだろうなあって、妙な離婚前の夫婦の感じが漂ってきて、それだけでちょっと面白かった。
内容は有名なやぎさんの郵便の童謡をモチーフに永遠を語る。
手紙を出したけど、相手が食べてしまう。今度は相手が手紙を出すけど、逆に食べてしまう。これが繰り返される。初めの手紙の内容などもうどこかに消えてしまっている。
そんな風に童謡を解釈しながら、永遠ってあるのかなみたいな、離婚前の夫婦だから、ずっと続く愛なんてあるのかなみたいな感じで会話がなされる。
お二人の優しい感じがとても微笑ましく、ほんわかする素敵な作品であった。
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