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2012年7月30日 (月)

銀河旋律【HPF高校演劇祭 堺西高校 演劇部】120730

2012年07月30日 ウィングフィールド

キャラメルボックスのハーフタイムシアターの代表作。
数々の劇団が公演しており、高校演劇で公演されることも多いみたいだ。
ダブル、トリプルキャストにしたりすると、各キャラの個性が顕著に浮き上がり、色々と作品の雰囲気が変わって、また違った魅力が発掘される作品らしい。

今回はHPFということで、もちろん現役高校生が演じる。
他公演を観たことが無いので、残念ながら比較のしようがないのだが、高校生が演じるということでどんな魅力が
浮き彫りになっているのだろうか。
観終えて思うのは、恋は盲目じゃないが、ずいぶんとまっすぐな若い恋愛観が出てるなあということ。
好きだから好き。そこに周囲の人達は見えていない。二人の世界が築かれるのならば、なりふりかまわない。自分さえよければとまでは言わないが、それに近い感覚がある。

作品中に女子高生が出てくる。先輩にあこがれのような恋心を抱き、友達に抜け駆けしてでもその想いを伝えようとする。友達を裏切ることになるが、そこに罪悪感は感じられない。うまく友人関係を調製するようなこともしていない。好きだという気持ちに勝るもの無しという若さ溢れる恋愛観のような気がする。
過去を変えられた男は、かつての恋人とは違う人と結婚することになる。でも、そんな人には見向きもせずに、たとえその人を傷つけることになったとしても、自分の好きな恋人との未来を得るために奮闘する。さらに、過去を変えた男とそれなりに幸せに暮らしている好きだった恋人のその生活は認めない。今、幸せにしているなら、自分はその幸せをいつまでも願って身を引く。好きな気持ちは変わらないから、ずっと見守っているねみたいなかっこつけた行動は一切取らない。とにかく、自分の好きな人と一緒になるゴールしか見えていない。
こちらは大人なのに、特に女子高生の恋愛と変わらない姿である。

妥協や調整なんか無い。好きな人と一緒になる。これ以上でも、これ以下でもない姿。そのためには誰かに打ち勝つ。その過程で傷つける者も出てくるだろうが、やむなし。恋愛の原点なのかなとも思う。本気の恋ってこんなものかもしれない。そして、いつの間にか、そんなこと出来なくなったりするような気もする。別に遠慮したり、ライバルのことを想うなんて殊勝な気持ちは無いけど、がむしゃらに好きだなんていつの間にか忘れてしまっているかもな。
作品中に万葉集の歌が織り込まれる。
何世紀も前に、当時の色々な人が恋い焦がれる気持ちをストレートに表現したものだ。会いたい、会いたい、会いたい。狂おしいぐらいに、好きな人を想う。
恋の原点とも思える、日本の最古の歌集がとてもこの作品の恋愛観にフィットしている。

タイムトラベルが出来るようになった時代。
お金はかかるが、一般の人も時間旅行を楽しめる。
もちろん、歴史が変わってしまうような行為は禁じられている。
でも、その違法行為は後を絶たない。そのため、禁止する法案も検討されている。

ニュース番組でそんな話題が取り上げられる。
キャスターの男と女は、過去を変える危険性を説明している。
過去が変わってしまった場合、それに関わる人は激しいめまいに襲われるらしい。
放送中、キャスターの男はそんなめまいに襲われる。
何か、この男の過去が変えられたらしい。

原因は分かっている。
あの男のせいだ。
キャスターは高校教師の女性と付き合っている。趣味の音楽がきっかけで、コンサート会場で知り合ったのだ。
でも、そんな女性のことが好きな教師が同僚にいた。
彼は学校を辞めて、時間管理局に勤めている。そこで、過去を変えているみたいだ。

度重なる歴史改変。
いつの間にか、女教師は、あの男と結婚することになっており、しかも自分はキャスターの女と結婚することに。
このまま、好きな女性を渡すわけにはいかない。
自らも過去に旅立ち、もう一度、女性を取り戻す決意をする。

ざっくりしたあらすじはこんな感じ。有名作品なので、詳細はどこかにあるでしょう。
要はタイムトラベルの恋愛物ですね。
上述したように万葉集を交えて、そのまっすぐで強い恋愛観を描いているようです。

キャスターの男が、中島藤悟さん。ずいぶんと落ち着いた方だった。で、きっとかなり緊張していましたね。でも、雰囲気がある方で、そんなちょっと大丈夫かなと不安を煽るような姿を逆にうまく活かし、不器用だけどとにかくまっすぐな雰囲気を醸し出すのに成功されていました。そのひたすらまっすぐな姿は、本当にがむしゃらで必死だなといったところに通じ、不思議な笑いを引き起こしていました。
キャスターの女が、北田沙織さん。当日チラシを見たら、3年生。やっぱり、最上級生だけあって、安定感があります。しっかりした印象がとても強く残っています。役どころはけっこう切なく、一人で強く生きていくなんて過去から、急に相方と結婚みたいな話になります。強がっていたところもあったのか、そんな人生にすこしときめきを感じた仕草を見せながら、相方は本当に好きな女性との過去を取り戻すのに必死で見向きもされません。そんな強さを奥に残した切ない微妙な表情はさすがは女優さんといったところでした。多分、最も男受けする役どころですね。
お天気お姉さん、辻本みゆさん。最初の登場では美人さんの役どころかと思っていましたが、ちょっと抜けた天然キャラなんですね。失礼な書き方になりますが、アホっぽいところを前面に押し出して、笑いを取られます。

キャスターの男の恋人である女教師、椎ひかりさん。ピンクを纏い、清楚で古典的な女性イメージです。万葉集の歌が似合いそうな感じですね。見つめ合うシーンなどは、恋愛ってやっぱり幸せを運ぶんだよなあと思わせる素敵な姿でした。
女子高生3人組、野々村麻生さん、柏木明日香さん、峠静香さん。個性的な3人組で、とてもイキイキとした楽しいコンビネーションを魅せます。なかなか笑わせてもらいました。
先輩にあこがれる姿を表情豊かに笑いも交えて熱演される野々村さん。優等生なんだか、不思議な雰囲気の柏木さん。この不思議さは言葉では説明できんな。ちょっと意地の悪い感じの可愛らしさを出される峠さん。

時間管理局の人、加藤渚さん。飄々として愛嬌のある感じかな。登場するなり会場に笑いが起きたけど、何だったのかな。普段から面白い人なのかな。
女教師に横恋慕して過去を変えようとする男、山仲竜也さん。最後の最後まで表情を崩さず。自分勝手で執着した行動をします。言えば、ストーカーチックなのですが、そんな悪い感じは受けません。この崩さなかった表情のためか、強い信念みたいなものが感じられ、この人はこの人で恋に一生懸命なんだなと。歴史改変の中で一度、女教師と結婚しますが、そんな強い女性に対する想いは決して拒絶されるものではなかったのでしょう。ただ、出会う時期が遅かったのか。恋の残酷な一面を思わせます。

若さを凄く感じる作品でした。
それは決して、未熟とかいうものではなく、恋愛一つにしてもまっすぐに見つめれる時代を生きている素敵な高校生の姿を思わせるものでした。
機会があるなら、大人が演じるこの作品も観てみたいですね。

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