梨の礫の梨【宮川サキ+Sun!! サキトサンズ 二人芝居】120607
2012年06月07日 ムーブファクトリー
何か魂抜かれたみたいになっちゃった。
あんまり感想書きたくないな。と言うか、何も言えない気がしている。
笑いもしたし、泣きもした。
話もさすがは横山拓也さん(iaku/売込隊ビーム)の作・演だけあって、細かなところまで巧妙に創り上げた名作。
宮川サキさん(sunday)とSun!!さん(ミジンコターボ)は、もちろん名女優さんだけあって、軽妙な掛け合いから、震えてしまうくらいの真剣なぶつかり合いまで、達者な会話を繰り広げる。
でも、結局は心に重くのしかかるずっしりとした深いものが残る。
(以下、あらすじは書いていませんが、感想中のキーワードが作品に出てきています。まだ観ていない方は避けた方が無難だと思います。白字にはしませんので、お気を付け下さい)
バーでの会話を中心にした会話劇。
あらすじは辞めておこう。覚え書きとして記しておきたいのだが、まあ記憶にずっと残るだろう。
それに、こんなテーマにおいて言葉は軽過ぎる。
一素人客が、どんな話でどこが面白かったかも記さずによかったから観に行ってなんていうのはおこがましいだろうか。
言葉に念を込めれるなら、今、自分ができる最大限の念を込めて記す。
ロングラン公演だから、どこかで是非観に行って欲しい。
どういう理由があったであろうと現実に親に捨てられた、自分に価値が無いように思わざるを得ない生き方を強いられた。そんな人の心の中の悲しみ、憎しみ、つらさを取り除くのは、その原因となっている人と話さないと無理なのだろうか。今、出会った人が、あなたは私にとって大切な人です、あなたは私にとって価値のある人です、あなたは小石なんかではなく、私にとって宝石です。そんな真剣な言葉に耳を傾けることはできないのかな。
この作品は虚構であり、原因となっている人と話し合える。受けれなかった愛を、時間を遡って取り戻すことが出来る。現実では、これはなかなかできまい。それだったら、受けれなかった愛は捨て去り、それ以上の愛を得る権利がある、自分は価値がある人である、愛されるべき人であることを、これから出会う人を通じて分かってもらうことは出来ないのか。
この作品では、ラストに希望を感じさせて締めくくられている。ただ、私は、これが虚構である以上、現実におけるあまりにも残酷な負の連鎖も同時に提示されてるように感じ、心が重くなる。
マッカラン。スペイサイドの代表的なスコッチウィスキー。
この作品では10年物が出てくる。どんなバーにもまず置いてあるごく一般的なものだ。
多くの洋酒と同じように、やはり年数が経てば味にうまみが出てくる。
人も同じなんてセリフはバーなんかで冗談交じりによく交わされる。
ただ、置いておくだけではうまくならない。
何をするわけではないが、定期的にそのウィスキーを見る・思う人がいないといけない。
ウィスキーは時代の中の喜びや悲しみなど、多くの空気を取り込んで、味わい深さを醸し出す。
今、10年物という若いお酒を飲んでいる女性。飲めば分かるがどこか軽く、辛味のあるトゲトゲしさがある。今の女性にはぴったりかもしれない。
10年置いたら、20年物。
うまく熟せば、まろやかで味わい深いものに変わるだろう。
女性が、ウィスキーと一緒にいい時を過ごし熟していくことを願わざるを得ない。
自分と同じくらいにうまくなっている酒を飲めるなら、その時に彼女の中の負の感情は完全に消えるのかもしれない。
自分を断ち切ったりしないで欲しい。
単に死ぬということだけではなく、自分が価値無き人であるなんて結論を付けて人生を生きないで欲しい。
あなたを大切に思う人はいくらでもいる。こんな私のどこが大切なのなんて言うかもしれないが、それは自分で決めることではなく、相手が決めることだから。
何が正しくて、大切かなんて、人それぞれ。だから、必ず、そう思ってくれる人がいる。
あなたを大切に思うことが使命だとする人もいるだろう。そんな人を受け入れて、同じ歩調・歩幅で一緒に人生を歩けばいい。それが相手にとっても幸せなことなんだから。
なんてことを、誰に伝えるわけではないが、書きたくなった。
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