<DVD>おぼろ【ゲキバカ】
2009年の作品。
これまでの劇団コーヒー牛乳からゲキバカに名前を改めての、お披露目公演だったみたいです。
2009年と言えば、私が観劇を始めた年。この公演が行われた12月は、すっかり観劇にはまっていた頃ですね。
そんな頃、東京でこんな面白い公演をしていたとはねえ。
ゲキバカとの出会いは、2011年の4月に大阪に来てくれていた時に初観劇。
この魅力にはまって、7月に名作、ごんべえを東京に観に行きます。今でも心に残っている素敵な作品です。
この作品は、人情劇風の話やオープニング・ラストのダンスといい、それを彷彿させる作品ですね。
新生ゲキバカとなった時に、これまで以上に喜ばせる、魅せる演劇スタイルをしっかり確立しようとされていたことがよく分かります。
いいですねえ。
人からお借りしたDVDでゲキバカの歴史をたどる企画を勝手に自分で立てて、これを含めて4本のDVDを鑑賞しましたが、最後に観るのにふさわしい素晴らしい出来栄えでした。
本当に生で観たかった。きっと楽しかっただろうに。
舞台はお江戸。
最初に瓦版を作るおきよちゃんの語りで、話の設定を伝えられます。
江戸には義賊、おぼろ小僧が出没。悪党だけど、殺しなんかは絶対しない、いわゆるねずみ小僧みたいな人物です。
ともに暮らすおかまの弟は夜鷹を利用したスリなんて悪さをしているけど、所詮は小物。兄のおぼろ小僧のでっかい悪っぷりにはとてもかなわない。もう辞めておとなしくしている。兄には兄弟を越えた感情があるみたい。
おぼろ小僧を追うのは銭形平次。弟分の純粋だけど下種な男、ちょっと自分がいけてると勘違いしている奉行所の下っ引の男とそのとりまきの女。
おぼろ小僧は神出鬼没。なかなか捕まえられないようです。
おきよちゃんは、からくりのことばかり考えている変人、源内の弟子。実は相当、頭がいいみたいで弟子といいながらも源内のアイディアにかなり加わっています。源内の奥さんは、身ごもっており、源内にまっとうな仕事をして欲しいと思いながらも、なかなか言い出せず。
そんな江戸の町に、ある日、とんでもない来訪者が。
500年後の未来から来たといううさぎの被り物をする双子の女の子。
500年後、ここ江戸は海に沈み、人類は月に移住しているとか。そこで雪を降らすためには、エレキテルという装置がいるということではるばるやってきたらしい。
おぼろはそんな二人を家に迎え入れる。
兄と弟、そして二人の不思議な女の子との暮らし。
悪人なんて辞めて、みんなで仲良く一緒に暮らしいければ・・・なんてことを弟は思います。
楽しい日は続きません。
江戸では新たな事件が発生。
おぼろ小僧がこれまでの事件とは異なり、強盗まがいの人殺しを連続して起こすのです。
おぼろ小僧が・・・
そんなわけありません。偽者がいるのです。
いったい誰が。そして、姿すら分からないということから考えて奉行所の情報が漏れているようです。裏切り者がいる。
本物のおぼろ小僧は、自らがまいた種を自らが刈り取るとばかりに、事件解決に乗り出します。
そこには、裏切りや憎しみがはびこる悲しい真相がありました。
そして、自らの身にもそれは降りかかってきて・・・
後はDVDを買いましょう。
裏切りのどんでん返し、ある人物の真実の姿、月から来た女の子の意味合いなどがうまい具合に描かれており、最終的にはほろりと泣ける人情劇的な結末を迎えています。
月に戻った女の子が影絵で映し出され、これでもかと降りしきる雪の中でのおぼろ小僧、最後の立ち回りは圧巻。おぼろ小僧の鈴木ハルニさんの男に魅了されることでしょう。
そして、影絵として仲睦まじく、雪を降らせる夢をかなえた二人の愛らしい姿が、時空を超えたおぼろ小僧とその弟の姿であることを願ってやまなくなるはずです。
4本のDVDを観て、共通して思うのだが緊張と緩和のバランスが不器用だなあ。
話に惹きつけていながらも、何かそうなると恥ずかしいのか照れ隠しのように悪ノリのお遊びを入れ込む。これが繰り返されている間に、話をしっかり楽しむのか、ただ役者さんの見せ場を楽しむのかが、どっちつかずになってくる。
劇団の役者さん方も本当に心情込めた芯のとおった素晴らしい演技をされるし、客演で登場されている女優さん方も、その楽しい雰囲気を最大限に盛り上げられている魅力的な方ばかりです。いまでこそ、関西にいる私でも名前を存じ上げる有名な女優さんもいらっしゃいますが、きっとその頃から東京の方では当たり前に大活躍されている方々なのでしょう。
そんな最高の役者陣で創られている作品なのですから、楽しませる、喜ばせるというところで、無理に緩和による笑いで勝負されなくても、がっちり緊張させる名演技でも十分通じるような気がします。
ただ、これはDVDではそう感じましたが、生で拝見した作品ではあまり感じていないこと。
このお披露目公演からいくつかの公演を経て、劇団のスタイルを確立した成果なのかもしれません。
楽しかったし、感動した。
当時のDVDで既にそう思える。
私が観ている今のゲキバカが最高に思うのは当たり前だという結論です。
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