メビウス【劇団ショウダウン】120624
2012年06月24日 船場サザンシアター
綺麗で美しい舞台でしたね。
一輪の花が導く私とあなたの過去の記憶。
あの日、お別れしてから祈るようにずっと出会いたかった。それが何千年先であっても、この世の終末であっても。
今、愛する人との出会いを大切に、そしていつまでもそのめぐり合いの中で、今の時を一緒に刻みたいななんて思えた作品。
二人芝居だが、二人の優しくも強い祈りのような願いの時空を超えた実現に、喜びと哀しみの混じった涙を滲まされる。
目をつぶって、出逢ってきた人を回想。
この身、滅びても二度と出会うかという別れをしてきた人が顔を覗かせる。
現実は厳しい。人とのめぐり合いを大切にして来なかった自分の人生こそが、実は一番泣けた。
地球から遠く離れた無人の惑星。
ここに廃棄された二体のアンドロイドが語り合う。
女型アンドロイドは、もう機能停止寸前。運動機能、視覚機能も切断されたようだ。
男型アンドロイドは、この惑星を彷徨い歩いて、今、ここにたどり着いた。そして、女と語り合っている。
ふと、思う。私たちは、どこかで出会っていたのではないか。そんな景色がよみがえってくる。そう、例えば、人間だった時・・・
目の前には、最初から二人の前にあったかのように一輪の花。
その花に二人の手が触れた時、二人は過去への記憶の旅へと導かれる。
二人は戦争で戦いあう敵同士、性別も今とは違ったかもしれない。
身分差に憎しみ合う関係、幽霊とそれにとりつかれる人間の関係、画家とモデルの関係。
人間じゃなかったかも。犬、鷹、森の中に住む獣・・・
記憶が甦ってくる。
二人は夫婦だった。クリームたっぷりのマロンケーキ。どこかから聞こえる軍隊の音。飛び交う弓矢。そこで男の時は止まる。
目の前に広がる綺麗な湖、咲き廻る花。そばには、愛する女性。
ずっと待っていてくれた。思い出してくれると信じてくれていた。
今、思い出した。二人はずっと会っていた。そして、今も・・・
といった感じで、輪廻転生のシーンを繰り返しながら、二人の始点にたどり着くような流れです。
数々の過去の記憶は、おかしな設定での出会いもあり、それで話をコミカルにしてなごませています。
どういった感じで捉えればいいのかな。
まず、なぜアンドロイドにしてるのか。
例えば、人間としてこの世の終末で出会う二人としても、話は成立するような気がするのです。
ただ、アンドロイドであれば、二人はまた人間として出会う未来を存在させれますね。地球滅亡にしてしまえば、そこで終わりになってしまうので。
作品名のメビウスはやはり、有名なメビウスの輪を思い起こさせますから、過去に遡って描いてきたこの話の終点は、同時に逆方向へ向かう、つまり未来へと向かう話の始点でもあるわけです。
この後に話が続くならば、今度は二人の未来への回想が描かれるように思うのです。そこには当然、希望があり、長い時を経て守り抜いてきた女性の男への愛が、未来永劫、はぐくまれるように感じます。これこそが究極のハッピーエンドとなっているような気がします。
話そのままに考えてもいいと思うのですが、色々と作品に思いを馳せると、女性の走馬灯のような印象も受けます。ちょっと遊び心でそんなことも考えてみました。
あの日、死んでしまった夫を墓の前で自らが植えた花とともに愛し続けた女性の。
ずっと待っていても、もちろん夫は現れない。少なくとも現世ではもう会えなかった。だから、時を超えて何千年先への未来を思い描いて、また出会う。また会いましょう、必ずまた会える。そんな祈りが創り出した幻想のように考えても面白いように思います。
現世で幽霊でもいいから出てくれればいいのに、早く輪廻転生して自分の前に姿を現せよみたいな、夫に対するもどかしさが、男が情けなくおかしな姿で回想に登場するイタズラ心みたいなものを生み出しているのかもしれません。
最後、男型アンドロイドは女型アンドロイドの永遠の停止を見守ります。かつて、女性が男に対しそうであったように。きっと、男型アンドロイドは残された自らの停止までの時を女を想い過ごすことでしょう。それは、また、今からはるか未来、二人が出会う姿であるはずです。
男が成瀬トモヒロさん。ダンサーさんでもあるのかな。指先にまで目をいかす丁寧な描写は元々、定評があり、今回もアンドロイドの悲しい姿をそれで表現されています。素朴な雰囲気の中、回想シーンでは、ありとあらゆるキャラに扮し、そのコミカルな魅力も最大限に発揮されていました。
そして、最後に見せる、葛藤やら悔いやらの中で、女性への感謝、愛を見出す姿。その姿を素敵という言葉以外で表せないことがもどかしいです。
女が林遊眠さん。アンドロイドの淡々とした雰囲気から、後半に向けて自らの何千年もの想いを溢れさせる。もう、グイグイきますね。これだけならいざ知らず、成瀬さん同様、回想シーンではいつもの飄々とした可愛らしさやちょっとSっぽい絡み、連れて帰りたくなるくらいの可愛らしい動物の姿などに扮して、その魅力を振り倒していました。
お二人の役者さんの魅力を最大限に発揮できるような設定。
そこから創りだされる話は、やはり魅力たっぷりで、心を浄化してくれるような美しい作品でした。
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コメント
SAISEIさんへ いつもありがとうございます 公演 観てもらえてとても嬉しいです。今日 読ませてもらって 公演のこと振り返っていました。これからも 楽しみにしています。
投稿: ほこき | 2012年6月28日 (木) 22時12分
>ほこきさん
お疲れ様でした。
思い返すと景色が甦ってくる作品ですね。
出来れば、もう一回観たかった。
日程調整ミスです・・・
また、劇場で。
投稿: SAISEI | 2012年6月29日 (金) 02時59分