翼の折れたちゃうかちゃわん(仮)【劇団ちゃうかちゃわん】120622
2012年06月22日 大阪大学 豊中キャンパス 学生会館2F大集会室
新入生も参加しての短編作品を6本上演する公演。
この回はそのうち4本を上演。
公演時間、だいたい90分ぐらい。
う~ん、6本まとめてやってくれないかな。130分ぐらいで出来るだろうに。やっぱ、大変なのか。でも、2回、足を運ぶのもしんどいんだよね。
それか、もういっそ、4本でいいやってぐらいの出来にしておいて欲しい。そうすれば、あきらめもつく。
個性的でどれも、なかなかうまいなと思わせる作品を観てしまったら、そりゃあ残り2本も観ておきたい気持ちになるというものだ。
「逆モテキ」
モテモテであると自負する男と、ずっとモテない男が言い合いをする中で、くだらないゲームをすることになる。
モテるという男に3日以内に彼女が出来なければ、金輪際、女性とは付き合えない。そして、モテない男に幼馴染の女の子を紹介するというもの。
気を引いている女性が既に4人もいる。楽勝のはずだったのに、なぜか最近モテなくなってしまった。片っぱしから、他の男に奪われていく。逆モテキに突入したらしい。
このままでは負けてしまう。
最後の望みとして、幼馴染の女の子にお付き合いを迫るが・・・
逆モテキの人がいれば、その逆のモテキの人も当然。表裏をうまく活かした綺麗なオチになっている。
可愛らしい女優陣といかがわしい男優陣から成り立つ作品。役として作られた個性と役者さん自信が持つオーラから自然に出てくる個性が混在しているのは、やはり舞台の経験なども影響しているのだろうか。
くだらないゲームをする二人、石垣光昴さんと最内翔さん。何か普通の大学生そのまま。その会話は、実際の大学生がしているかのような自然な姿である。これが他の男優陣の個性的なキャラを引き立たせている。
見るからにいかがわしい木村祐人さん、不器用な体育会系男子を思わせる原賢二さん、なよっとした独特のオーラを発して気味悪い香西紘輔さん。
女優陣はまさに典型的な女子大生を思わせる辻川美由紀さん、冷たい毒舌をいい間合いで発する葛本祥子さん。
オネエキャラの岸川菜月さん、どっしりした貫禄、なぜか表情が深刻に見える伊藤紫織さん。このお二人はこれで覚えたな。確か、前に巫女役だった人のはず。
オチになるモテキへ突入する女性が酒井菜摘さん。ドグラ・マグラを愛読書にするような人にもモテキってあるのね。役どころと同じ、ちょっと怖い不思議な魅力を発揮。
「本能寺十五分」
織田信長に蘭丸。妻の蘭濃姫に、アフリカ人の家来ヤスケ。
場所は本能寺。史実どおりに、明智がやって来て火を放たれた。
燃え尽きるまで残り15分。
妄想とも思える信長たちの脱出が始まる。
短編としては扱いやすいテーマであろうが、そこに学生さんらしい漫画・アニメネタを盛り込んで不条理な妄想劇を繰り広げる。ドタバタ脱出コメディーの典型的なパターンであろう。
蘭丸はともかく、濃姫やヤスケを登場させるところはなかなか憎い。
ヤスケは木村圭佑さん。もちろん黒塗りに黒人姿である。この方、いつも面白い役で出られる方だと思うんだ。前は宅急便の人だったんじゃないかな。自分で笑いを取って、始末できるベテランさんですね。出オチにならず、最後まで惹きつけていました。
濃姫は藤本麻瑚さん。この方、こんな人だっけ。とんでもないぐらいの弾け方なんだけど。ふてぶてしいぐらいの貫禄があるね。何かどちらかというと清楚なイメージ持ってたんだけどな。とりあえず、私の頭の中の面白い人のカテゴリーに入れ直しておこう。
信長が、菊川匠さん。信長って難しいだろうに。もちろん、作品上、おどけた信長だけど、やっぱりどこかに威厳が無いと信長の意味が無くなるものね。このバランス感覚はとてもうまいように思いました。最後はなかなかの男前を活かして本当に舞ってくれればかっこよかったのに。
蘭丸、松山裕美さん。この方はいいねえ。うまく人をさばいて、舞台を安定化させます。個人的にドタバタのとても大切なところだと思います。単にドタバタされてるとあっという間に飽きが来ますから。それを制しながらも、自分の個性もチラリと出す。欲張って自分も一緒にバタバタしちゃう人もいる中、この方もいいバランスで演じられます。
「くじらが来るまで待って」
舞台は瀬戸内海が見える防波堤。
男と女がじっと海を見ている。手には新聞記事。
未来の日付のその記事には、この海にクジラが現れることが書かれている。
女は病気らしい。やがて消えて行ってしまう病気。もう時間は少ない。
防波堤にはそんな二人を見守るサラリーマン、警官、医師。
そして、失恋して海へ飛び込もうとしている女性、クラゲを日々見る女性。
旅人もやって来る。
消えていく女。海の向こうには・・・
上演の順番はこれでいいの。さんざん、ジャンクフード食べてたのに、急にお上品な料理を出されても味を感じるまでに時間かかっちゃう。お口直しにしても、あまりにも高級すぎるだろうに。
くじらは実在するものの、瀬戸内海に現れるはずも無く、病気も物理的に消える病気なので非現実的な世界観を設定しているようである。登場人物は、消えそうな物を見ている人のような感じである。周りの人が気にしている病気の女はもう今にも消えてなくなりそうである。ほとんどが水で出来ていて、水そのものの海を漂うクラゲは恐らく、そのイメージを彷彿させているのだろう。
そんな人たちが現れるのかも分からない幻影とも思えるクジラを待つ。積極的に探し出して見るわけでもなく、何もできないからただひたすら待つ。それしか出来ない。現れると信じさせる物も風で吹き飛ぶような破れた新聞の記事。
現れたところで、何かが起こるわけではない。病気は治らないだろうし、日々の生活が変わるわけでもないだろう。ただ、そこにくじらを見たという事実だけが残る。消えていく者の願いのようなものと考えればいいのかな。現れるものがあると分かったなら、同時に消えるものもあったと思える。
読み取りきれず、視点がどこなのか分からない。人物の心情変化は大きく変化させておらず、かなり客観的にこの世界を語っているように感じる。
旅人が未来を想像させるところがあり、男と同一視できるような感覚もあったのだが、よくは分からない。
消えゆく女が岩崎未来さん。役どころもあり透明感を漂わす。時折、震えるような仕草をしていたが、あれは演技だろうか、緊張だろうか。どちらにしても、言葉にしない不安感は感じさせられ、この作品の世界を創りだしている。
男が大島徹也さん。くじらを待つ。同時に女が消えてしまうのも待たなくてはいけない。苦しみや悲しみは出さない。ただ、女同様、不安は時折、我慢できないように出す。素朴なイメージの中で力強い真摯な気持ちを描写している。
クラゲを見ている女性、高濱裕子さん。世捨て人みたいな感じ。消えそうなクラゲを見ながら、それでも存在していることに安心感でも覚えているのだろうか。クジラが現れても、クラゲをこの人は見ている。クラゲが消えることにその感情を出しているところが、そんなことを思わせる。
他にもいらっしゃるのだが、その存在の意味合いが理解しきれていないので、このあたりで。
「開けてはいけないハコ」
入ってはいけない部屋に入ってしまった人達。
そこにあるハコは開けてはいけないハコ。
でも、入ってはいけない部屋に入ってしまったように、開けてはいけないハコも開ける。
そこには、いけない物が入っている。
ものすごく面白い設定。
ただ、触れてはいけない過去のような概念的なものから、食べてはいけないおにぎり、笑ってはいけないDVD、押してはいけないボタン、輸入してはいけないパンダのような物自体が混在しているので焦点がずれる気がする。もちろん、そういうものを扱ったがために、コメディーとしては面白味が増しているのだが、ラストの持っていき方を思えば、そこが重視ではなさそう。
してはいけない外の世界から、それが出来る部屋の中の世界へ。そこに入るためには、入ってはいけないというしてはいけないことを破る必要がある。入るのは決心がいりますね。
そこから出るには、出てはいけないということを破らなければいけない。でも、出来る世界だから別にして構わない。だったら、いつでも出れるんじゃないの。
部屋に留まる人は出来ることなのにそれをしようとしない人なのかな。最後、一人だけ出た人は出来ることをしただけか。頭こんがらがってきた・・・
部屋の中の女性は山岸亜美さん。男がどっちか分からないや。生田拓也さんと石田諒輔さん。劇を観ているというかゲームのような感じかな。ワクワク・ドキドキ感を3人で醸し出している感じでした。
男の一人の父親が出てきます。佐藤智紀さん。くじらが・・・では旅人の役。基本的に謎めいた役だな。くじらではどこかほんわかした正体不明の男、こちらでは立ってるだけで奇妙な存在感を出す。
男の一人の初恋の女性、曽場彩香さん。う~ん、絶対どこかで拝見している。顔は覚えてるんだよな。ちょっとだけしか登場しませんが、ばっさり冷たく男を切ります。
パンダのマリアさん。これは可愛らしい。カーテンコールで舞台にいらっしゃったので新入生なんだな。こんな癒しキャラも出来そうだし、幅広く活躍されそうですな。
まあ、個性的な作品が揃ったものです。
よくありがちな書き方になるけど、どれも、それぞれの魅力があって結構なことです。
これだけ多様性があると、本公演とかはどうされてるんでしょうね。融合させるのはかなり無理があるだろうに。
明日、残り2本を観劇予定。一緒にくじらが・・・と開けては・・・はもう一度見直せるので気になった点を再確認。特にくじらは、もう少し読みと取らないといけないな。
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コメント
本日はご観劇ありがとうございました!
逆モテキ由紀役の、伊藤紫織です。
書いていただきましたが、赤巫女をやっていた者です。
まさか覚えていただけるとは…!
時より深刻そうな表情に見えていたんですね…意外な発見でした。
気をつけてみます…!
もし宜しければ、また劇団ちゃうかちゃわんを見に来てください!
ありがとうございました!!
投稿: さくら | 2012年6月22日 (金) 22時47分
>さくらさん
早々にコメントありがとうございます。
何かすぐ分かりましたわ。
あっ、赤巫女がいるわって(o^-^o)
もちろん普通にしてる可愛らしい姿も印象にあるのですが、あ~この人ダメだわって感じの男を切ってしまうようなあきれ顔がそんな深刻な表情に見えたんですね。
多分、私の中では赤巫女の最後の方の感情をあらわにするところが印象付いてるので、そちらの方に目がいくのだと思います。
何度か観ているうちにまた変わるでしょう。
この公演では逆モテキだけみたいなので、これで拝見するのは最後かな。
また、次回公演や客演を楽しみにしております。
投稿: SAISEI | 2012年6月23日 (土) 00時01分