夕陽ヶ丘まぼろし営業所【南河内万歳一座】120613
2012年06月13日 一心寺シアター倶楽
4週にわたる万歳祭りも遂にラスト。
いよいよ、大御所、というかご本人そのもの、万歳一座が登場。
これまで劇想からまわりえっちゃん、ペーさん's13、浪花グランドロマンによりリバイバルされた3つの作品。
今回の企画は、別にこの劇団の過去作品をコピーして公演するものではないらしい。
今、活躍する若い劇団、場合によってはこの劇団の作品を生で観ていない若い劇団が自分たちの思うままに感じ取ったことを表現することを一つの目的にしているようです。
ですから、私もそんな昔の作品は観ていないので、本当にこんなんだったのかななんて思うようなところがありました。(実は、2009年に観劇し始めた頃に似世物小屋という作品を観劇しているのですが、恥ずかしながらあまり記憶に無い。ただ、服があり得ないくらいに吊るされていたことぐらいしか・・・)
現に、派手な照明やダンス、弾け過ぎな演出には面喰った往年のファンもいらっしゃるみたい。
で、この作品を観て思うのですが、演出のスタイルこそ違うものの、ここが一番派手だし、元気だし、弾けてるし。
30周年ということで、年配の方もいらっしゃるみたいですが、どう考えてもここが一番元気いっぱい。
比較してしまえば、これまで圧倒されたと思っていた3劇団が物足りないと思ってしまうくらい。
漠然とですが、この企画の意味合いが、あ~こういうことかあと思います。
きっと、この万歳一座の脚本を見て、表現者は自然に心そわそわ何かしたくなるようになってしまうんでしょうね。それをどうするかを、今の時代を生きる人の手に任せたみたいな感じです。あの頃、万歳一座はああだった。で、今はどうなるのといった風に。
話のテーマとなる自分探しや閉塞された場所からの脱却など、何か明確な答えがあるわけではないけど、動きたくなるし、語りたくなるし、踊りたくなるし、脱ぎたくなるし、考えめぐらせたくなるのかもしれません。
夕陽を見て、もう夜になってしまうなではなく、その情緒的な光の中で懐かしい過去を想いながらも、明日を想う。
今の世の中で出来なくなりつつあることですよね。
それを想い起こさせて、これからがある今を考えさせているように思います。
あらすじは書けないなあ。
でも、多分、この作品は筋って無いと思うんですよね。あるのは込められた想いだけみたいな感じ。
まあ、一言で言えば、目的地探しのお話です。
普通はどこか目的地があって、そこに行こうとして訪ねる旅行代理店。
夕陽ヶ丘まぼろし営業所はちょっと違う。
その目的のために行くべきところが本当にそこなの。目指した場所につかないといけないの。結局、何でか知らないけど着いた場所でよくないの。といった逆ギレみたいな不思議な感覚。
訪ねてきた客と店員の目的や人生を議論する会話を中心に、特有の体全体を使って動きまくるパワフルな演技で話を進めていきます。
分かりやすい事例というか、恐らくは30周年を迎えたこの劇団自身のことも描いているのでしょう。
高校演劇部の客を通して、誰でも食いつきやすいツアーのような分かりやすい表現形で全国大会を目指すのか、おバカな劇評家と目がふしあなの客には理解できないような分かりにくい表現形を貫いていくのかなど演劇論みたいな会話も展開します。
この話も、全国大会に行ってからの目的などを追及され、安易に口にする目的って何なのかを考えさせるようになっています。
だいたい、80分ぐらいはこの営業所のシーンなのですが、まあテンポがいい。切れ目なく、タイミングよくつながっていく会話とそれに合わせた動き。全員で合わせる統率された動きも見事なものです。
同時にどこかへ行こうとしている二人の男の話が組み込まれています。組み込まれるというか、多分、本当はこちらがメインな話。
色々なことがあって、最後の30分ぐらいは、この二人と営業所にいた人たち全員が、夕陽ヶ丘という場所にたどり着いています。
ここはよく分かりません。何なのか。私の目はふしあなですから仕方ありません。
ただ、思うのは視線の先にはいつも恐怖がある。この夕陽ヶ丘のように出口がどこか分からない窮屈で暗い今である。
そこから抜け出すためにはどうするのか。
目を覆ったからといって、漂う恐怖から逃げれるわけではない。それなら光を見つけよう。不安や絶望の中に差し込む期待や希望を探し出すしかないのではないか。
劇団で言えば、誰もが分かる表現形ではなく、自分自身を貫く表現形は不安だったり、時には絶望にまで追い込まれるのかもしれない。でも、今、こうして観に来てる客は期待や希望の対象なのではないのかみたいな感じかな。
出口というか、先へ進む入口は見つけられるし、それが結局、閉塞した今からの脱却になるのではないかみたいなことを描いているような気がします。
今の社会と劇団を絡めながら、そんなことを伝えているように思いました。
何か難しいんですけどね。
でも、楽しいんですね。よく分からないけど、まあ頑張りゃあいいやみたいな気持ちになって元気づけられるんです。
そんな作品です。
最後。
書きたくないけど、以前、これをされた時にすごく不快でこのブログにも書いた劇団があるので記しておきます。
4週にわたって楽しませてもらったこの企画に対して、嫌な文章で締めくくりたくないので、以下はずっと白字にします。
カーテンコールでの客演紹介。
役者の紹介で名前を覚えていないってのはどういうことなのだろう。
ド忘れや勘違いじゃなくて、多分、本当に覚えていない。
そりゃあ、親しければ愛称で呼び合ったりして、本名を実は知らないなんてこともあるかもしれませんが、客に紹介するならそこはきちんとでしょ。
こういうのを目の当たりにすると、座組とか言うらしいけど、いい座組だったのと疑いたくなってしまう。
非常に嫌な気分になって、せっかくの作品が台無し。
ちょっと、いやすごく残念だったな。
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