ニホンの狂育~女子校編~【fukuii企画】120530
2012年05月30日 アトリエ劇研
いじめがはびこる女子校。
先生は私利私欲に走り、そんな崩壊した学校でつらい想いをする生徒のことなど何も考えていない。
複雑な人間関係の中で揺れ動く女子高生たち。
そんな学校になぜか、男子高生が転入してきた。
現代の学校におけるいじめ問題や閉鎖された社会の中での若者の心理に鋭く切り込んだ作品。
・・・なんて書いても、ある意味いいような話なんだけど、結局はそんなことどうでもよく、ただただおふざけした話ということでいいのかな。
真面目に観ようと思ったら、すぐにふざけられ、その中でも何か今の学校に一石投じたいのかと考えても、いやいや、そんなの無いから笑って笑ってとごまかされる。
何度も裏切られる、こ憎たらしい作品である。
(以下、ネタバレ注意。少し筋が分かる程度なので白字にはしません。公演は明日、木曜日まで)
舞台は女子校、聖ブリリアント学院、すもも組。
マオウと呼ばれる女の子に絶対的に仕切られてしまっているクラス。
不条理なゲームで毎月いじめられっ子が選出され、一月の間、徹底的ないじめに合う。
主人公の亜紀は、不幸にもそのターゲットになってしまった。
信頼していた友人までもがいじめに加わり、ひどく落ち込む。
心の頼りは、最初こそ軽くて調子者でウザいと思っていたが、今では恋心を抱く担任の先生。
そんなクラスに、なぜかおかしな男子高生が転入してくる。
このいじめ、実はマオウが率先してやっているのではない。
担任の先生の巧みな女子高生の心理をついた掌握術で、マオウは洗脳されており、操られている。
そんなことはつゆ知らずの亜紀は、先生にいじめを相談する。
これが、先生の手で、慰めるふりをして、生徒をいただこうとする。
それを、流れ者のヒーローよろしく、男子転校生が救う。
先生は、学校を首になりクラスに平和がおとずれるかに思えたが、しかし・・・
洗脳されて先生が好きなマオウは男子高生をいじめのターゲットにする。
亜紀はそれを勇気をもって止めようとするが、何と男子高生はマゾヒストでいじめられたいみたいだ。
怒りがおさまらないマオウ、勇気を振り絞ったのにおかしな展開に巻き込まれた亜紀。そして、亜紀をいじめたのは、しかたなくではなく、亜紀を独占したいという異常愛からであることを告白する亜紀の友人。
この3人の対立は、おかしな方向に進み、男子高生をいかにディスれるかといういじめ大会に発展する。
闘いの行方は、そして男子高生の正体は・・・
といった感じの訳の分からない話です。
社会問題に切り込んだり、女子高生の揺れる心理を描いたりしているのかと一瞬思って真剣に観ようと思っても、すぐにそれ違いますからといった感じで打ち消されます。
まあ、むちゃくちゃな作品ということです。
目を引くどころか、釘付けになってしまう男子高生役の上川周作さん。
日活映画のヒーローを彷彿させるいかがわしいかっこつけっぷり、いじめられるみじめな姿。その表情、振る舞いはとても笑いを我慢できるものではありませんでした。こういったコメディー系の作品にはかかせませんね。
亜紀が吉田穂さん(ドキドキぼーいず)。自劇団の本公演で先日拝見してますね。可愛らしい方なのでよく覚えている。今回は、とにかくいい子です。いじめられまくっての憐れな表情、友人や先生に裏切られる悲しい表情、気が弱いのですぐに引いてしまう控え目な表情。前回とは真逆で負の素敵な表情を堪能しました。
友人の田中沙依さん。いわゆる優等生タイプの役ですが、そこに潜む黒い感情が溢れることが伝わる演技です。ブラックな含みを持たせた言動が巧みです。
先生が北川大佑さん。ウザい。とにかくウザい。そして悪くて、小さい。男としていいところが皆無のキャラです。もう、うるさいよって口に出したくなってしまうかのような上っ面男を見事に演じられます。観れば分かりますが、タハラという言葉がとにかく耳に残る作品でもあります。
マオウが仙洞田志織さん。役名のとおり、絶対権限を醸し出すSキャラです。いわゆる美形なので、お高くとまった演技がうまくはまっています。
この他に生徒が二人いて、跡見賢太さん、きのせまきさん。キモい。これを狙っているのが分かる典型的なオカマキャラになっています。ちょこちょことネタを仕込んで、小さな笑いを生み出されます。
微妙な若者の心理変化やいじめが起こる仕組みみたいなことを描くこともできそうな作品でしたが、あえて、そうしていないのかな。そこまで深く話が進むと、面白キャラがそれを崩し去り、おふざけ作品へと変えてしまっています。
このあたりのバランスをうまくとれば、面白かったし、何か考えさせられるものが心に残るというよりいい作品に仕上がるような気もしますが。
ちょっと、出演されている役者さんの個性が強すぎて難しいかな。
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