『つづく』【伊丹想流私塾第16期生公演】120519
2012年05月19日 アイホール
うへぇ~。
個人的な事情ですが、この日はLINX'S、オパンポン創造社とはしごした上での観劇。
短編が重なり、もう頭がキャパオーバーになってしまいました。
総合的な感想は、簡単で気楽に観れるようなものではなく、想像、想像と頭を奮い立たせないといけないものでした。
戯曲をしっかり学んだ方々の総決算だけあって、その内容は難しいけどどこか演劇的な面白味を感じさせる作品に仕上がっています。
8作品。
テーマは「つづく」であり、各作品、2話ずつあります。
各作品の第1話をまず上演して、それから第2話を上演するという今までにないスタイル。
全作品とも1話では終わらない物語。そして、2話でもまだつづきを感じさせるような設定になっています。
分かりにくくて頭パニックになるのではと思いましたが、意外にこのスタイルは面白い。
時間にして7~8分ぐらいでしょうか。1話で、テレビのように「つづく」テロップが出るようなシーンでばっさり切られて、一巡して2話を待ちます。
8作品もありますから、感想は多彩です。
ばっちり決まってるなあと思うものもあれば、2話見てもまだ話が把握できないもの、つづくというか、途中で終わってるだけじゃないのかなとクエスチョンマークが浮かぶものなどなど。
この「つづく」は観る側にとっても大事なことで、私は作品を観終えた後に、登場人物を自分の頭の中で動かしたいです。スピンオフ作品とかが好きなのはそういうところにあると思います。
ただ、それが出来る作品は意外に少ないです。
しっかり終わってしまえばなかなか難しいし、あとはお客様がご自由にみたいな感じにされても幅が広すぎてどうとでも想像できるような感じでは面白味が無い。
程よい幅を持たせた終わり方だと、自分のその時のバイオリズムに応じてよりハッピーな方向へと話を想像してニコニコしたり、悪意的に考えてほくそえんだり、切ないキャラを救済したり、悪いキャラを更生させたりと、色々と楽しめるのです。
これは演劇だけでなく、本などでも同じ。
記憶に残る作品と言うのは、きっと内容を覚えているのではなく、その後、自分でまた噛み砕き直すことができた作品のような気がします。
作品名と卒業される方のお名前を。
最後の問題:作・演 今田翔大さん
1話で問題を出して、2話で解決というパターン。
男女生徒の会話劇。女は友達に腕を刺されたみたい。
この二人、今、付き合っているのだが、男は昔は刺した子と付き合っていた。
愛情のもつれによる恨みの犯行か。黒板には「空に必ずいる蚊は?」
2話でこの3人の詳細な人間関係が描かれる。
刺した子は能力もあってしっかりした子みたいで、男はそんな付き合いに疲れて、自分と釣り合いが取れそうな今の子と付き合うことにしたみたい。
卑怯な感は否めないが、まあ気持ちは何となく分かるところ。
刺した子の残すメッセージには幸せという文字が隠されており、二人はそんなことから始まった愛情が不確かな付き合いではあるが幸せになれるのではみたいな結論に達する。
それを刺した子は複雑な思いの中で伝えたということだろうか。
刺すと蚊とかもかけてるのかな。
よくは分からないが、つづくという点では、2話以降も二人と刺した子の今後を見守る想像が出来る。
雨の降る部屋:作・演 牛嶋千佳さん
部屋が舞台。雨がしとしと降る部屋。傘をさした女性、飼っている金魚の擬人化なのか男性が口をパクパク動き回る。雨と金魚の口パクは、どこか生活の圧迫を感じる。
部屋にはどこか人生を安易に過ごしているダメな男、そして女。
先行きの不安な二人の印象を持たせて、なぜか男の葬式の知らせが届くところで1話終了。全然、つかめない。2話を不安の中で迎える。
男は行方をくらましてどこかにいっているが、しっかりして戻ってくる。う~ん、これは別の男なんだろうか。
これもよく分からないが、新しい姿の男として生まれ変わる決意みたいなものを描いているのだろうか。
分からない・・・
まあ、もう一度する二人の生活は、徐々に雨も止んで、金魚も自由に楽しく泳げるのかな。
交響曲第5番『革命』:作・演 松宮信男さん
ロシア革命を祝す曲の演奏中に指揮者が途中で席を立って部屋に戻る。
本来は指揮者の妻になる予定だった女がいる。父が国家反逆罪で粛清されており、自分もその罪を被らないように指揮者の尊敬する活動家を国家に売ったことから結婚がとりやめになった。
その女は、大切な人が国に捕まっていることもあり、いまや反逆者を処分する国家の犬。指揮者の行動を国への反逆とみなして銃をつきつける。
1話終了。銃をつきつけたところでつづくなんてテレビみたい。
交響曲は大盛況。駆けつけた妻とともに喜び合う。さらに、指揮者は国に認められ、女の大切な人も釈放されることに。
しかし、その大切な人は裏切って女を撃つ。交響曲が盛況なぐらいで自分の罪は消えない。自らが国家の犬になることで釈放されている。
男の次のターゲットは指揮者。
しかし、最後の力を振り絞る女は・・・
何か裏切り、裏切りでどうなるか分からないところで終了。これはつづくではなく、途中で終わったのではないだろうか。どこかに終点を置いてもらえないと、その後の想像はしにくい。
星屑:作・演 巽由美子さん
う~ん、不思議過ぎて分からん。
ゴミを捨てようとしているロボットと男。彼女がやってきて、男を連れ帰ろうと邪魔をする。言うことを聞かない男に、彼女はドーンとごみ袋を投げつけ、やがて投げ合いになる。ロボットは時折、おかしなモードになり、ビッグバンを語ったり、歌のお兄さんみたいな感じになったりする。
こんな感じで1話終了。いつの時代で話で、何かがメタファーになっているのかと思いながらも、流されたまま次の作品を観て、2話を迎える。ドーン、ドーンという音だけが耳に残る。
彼女もロボットみたい。相変わらず、男を連れて帰ろうとするが、仕事だからと相手にされず。ロボットは相変わらずおかしい。空に星座を映し出したりしている。
何のことか全く分からなかった。ビッグバンとか言っているので宇宙創成まで話を大きく考えればいいのかな。宇宙版アダムとイブみたいな感じなのか。
それとも逆にゴミ袋の中には文字どおり、星屑が入っているのだろうか。宇宙の終焉を想像すればいいのか。何で女はそれを捨てるのを邪魔するのだろう。まだゴミではない星でも入ってるというのか。
地球もあのゴミ袋の中にもう入ってしまっているのだろうか。
㈱いのせんとワールド:作 岡坂隆司さん
社長室。社長を父と呼んでやってくる女性。部屋の奥には赤ちゃん様。女は赤ちゃんの泣き声を純粋無垢にあげる。でも無垢ではないので不採用。不採用だから社長を父と呼べない。
う~ん、これも何のことやら。不可思議ワールドであることだけ覚えておいて、2話を待つ。
2話で母親と研究者みたいな男も部屋にやってくる。
無垢じゃないとダメ。ハッサクを剥いて、筋を綺麗にセロテープで取る。社長はセロテープで縛られる。
剥くと無垢の掛詞遊び。いや、赤ちゃんは何なんだ。謎だらけでさっぱり。
洗う:作 森本彩子さん
物干しざおに干された洗濯物。4年付き合った男女。
互いに我慢しすぎたのかな。別れることになったみたい。男は実家にでも戻るのか去る。女は、大事にしていたTシャツを渡しに後を追いかける。
2話。数年経っている。まだ洗濯物がいっぱい干してあるこの家に男は戻ってくる。ぎごちない会話の中で、また互いにこの洗濯物の前で話をする姿を思い浮かばせる。
これまでのことを洗い流すみたいな感じかな。
洗濯物が男女の愛の結びつきになっているのは何となく理解できる。二人の生活から生まれる物だしね。それをどう捉えるのか。そして洗うという意味合いは。
正義:作 芝田聖月さん
女生徒二人の会話劇。
セクハラ教師の同僚の先生との密会現場を押さえて記事にして困らせる計画を立てる。ちょっとした正義心から。1話は計画を立てるところまで。
2話でその結果が描かれる。思いのほか効果が大きすぎて、先生はおろかその家族まで巻き込んでしまう。
そこまでの正義心から起こしたことではない。事態を収束させるように努める。
でも、それではセクハラは終わらない。
どう考えればいいのかな。小さな正義心では何も動かないということか。何かもどかしい気持ちになる話である。正直者がバカを見るみたいな感覚がなぜか残る。正義を振りかざすのが悪みたいな嫌な世を感じる。
あの素晴らしき世界の最果て: 作・演 橋本匡さん
電気の無い世界。
電気を求めてやってくるロボットたちはこの最果ての地で力尽きる。
そこには、電気が無いことを検査する男。マッチ売りの少女。
2話では、屋台のおじさんまで出てきて、不条理すぎる世界になる。
これはなんだろうか。
今の社会風刺かな。原発停止でやがて無くなる電気。火力では力が足りない。
自らが開発した物が、電気の無い世界で機能せずに朽ちていく。
自らの地につけた足だけが頼りになる、これまでの甘えはすべて捨てないといけない世界。
強い意志の中での生きるということを感じさせられる話。
多様な8作品。
やっぱり、難しかったな。
何でこの人分かってくれないんだろうと思うところがあると思いますが、まあ、感性の乏しいズブの素人観劇者の感想はこんなものです。
今後、こちらに少し歩み寄ってくださるのもいいし、表現者としての自分の道を思うままに厳しく進むもよし。
どちらにしても、演劇は面白い。観劇はまだまだ続けるぞという気持ちを再認識させてもらったことは、8作品の中にこもる演劇創作への熱意を感じたからだということは間違いないと思う。
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