« 幸せ最高ありがとうマジで【劇団土下寝】120506 | トップページ | C.T.T. Osaka Trial No.12【C.T.T.大阪事務局】120509 »

2012年5月 8日 (火)

漏れて100年 ver.c【裏ワザ】120507

2012年05月07日 インディペンデントシアター1st

突劇金魚のサリngROCKさん脚本、悪い芝居の山崎彬さん演出のユニット作品。
で、演じる役者さん4人が全員男前という憎らしい作品でもあります。

さちという人間の一生を50分強で描いた話です。
人生そのものは特に波乱万丈というわけではありません。
普通の人と同じように思春期を迎え、歳をとっていく。出会っては別れを繰り返し、狭い世界で生きていた所から、成長して外の世界へと旅立っていく。そして老人となり、今までを思い出しながらその一生を終える。
ただ、その生きてきた世界が、不思議というか悲しいというか。

ガレキから救出されるさちという男。齢、5歳。
空の青さと救出してくれた仙人の笑った口の中の赤。
どんな青さなのか。地球規模で何かとんでもないことが起こったことをイメージさせる。それでも変わらずいつもの姿の空は何か不気味なものを感じる。
ここで終わったかもしれないさちの新たな一生の始まりである。

仙人に連れられてさちは遠くへ向かう。
遠く離れた町の姿は、廃墟に近いものなのか。仙人というだけあって、下界とは遮断された高く奥深い山をイメージさせる。
ここがさちが閉鎖的に暮らす場となる。

山にはさちより少し年上の男がいる。
兄。この男と兄弟のように日々を過ごす。楽しい毎日。
仙人は二人に首輪をつけて、ここでしか生きれないような生活を強いる。
山に残された下界の産物に刺激を受ける二人。下界にはきっと、もっともっと魅力的な生活が待っている。仙人は何か隠している。
本能的にここが自分たちが一生過ごすべき場所では無いことを思っているみたい。
仙人と違って、まだ若い。
いつかここを旅立つつもりだ。その時はもちろん一緒に。
年老いた仙人の妥協とか現状満足主義と、若者の特権、常に未来を見据える、どうなってもいいから新しい場所を求めるような考えがぶつかっているかのように感じる。

兄が死んでしまう。青鬼に襲われて。青鬼はこの地球の人類を滅ぼそうとしている何かのメタファーなのかとこの時点では思っていたが、後半、この環境下で新たな生命体としてはびころうとしている実在物として思えるようなところもあり、結局何なのかがいまひとつ分からなかった。
さち、初めての別れ。

仙人は新たに弟を連れてくる。
このあたりでだいたいの世界観は感じ取れるようになってきて、仙人は生き残った人類を集めて、ここで暮らそうとしているようだ。
でも、連れてきても兄のように死んでしまうみたい。
仙人は孤独を恐れるように、次から次へと人をこれまでもここに連れて来たみたい。
そして、数多くの死という別れを繰り返している。
連れてきて、新たにここから世界を創り直すという意思はあまり感じられない。ただ、自分が一人になるのを恐れての行動で、利己的に映る。人を求めては、その人と別れる。自分だけがずっと生きる。何か悲しいものを感じる。

弟も死ぬ。
そして、仙人もついにその時がやってくる。
さちは遂に一人になる。

さちはここから旅立つ。
親兄弟から離れて、独り立ちするかのように山を下りる。
そこにはきっと廃墟が広がっている。
絶望を感じることになりそうだが、そうはなっていないみたい。山で暮らしていたから、元の世界を知らないからだろうか。うまく書けないが、ここにすごく希望めいたものを感じる。
仙人はそこを計算して山に子供を閉じ込めて生活させていたのだろうか。

さちは下界で男と出会う。
世界は今、毒ガスでマスクをしないと生きれない状況のようだ。
男はさちが大丈夫であることを不思議に思い、色々と調べると世界は徐々に復帰しているみたいだ。
でも、また世界をおかしくするような出来事が起こる。
どうやら流星群による衝突で地球はおかしくなっているみたい。しばらく、おさまっていたが、また起こってしまったようだ。
青鬼は依然はびこっている。毒ガスに対応できる存在ということか。

その男も死んで、さちは本当の一人っきり。
これまでを思い出しながら、5歳のあの日に山へ連れて行かれてから100年の時を終える。

話としてはそんな流れ。
基本的に2人の会話で話は紡がれていく。残りの2人はその時に会話をしている2人の動きを描写する形をとる。

人を連れて来ては、その人を失う仙人の一生のように、失われた世界において、さちもそうなって時が永続するような話かなと途中思ったがさちが下界に向かうところでその予想はくつがえされる。
第三者的には絶望的なに見える世界で、純粋に生きることを疑わないさちの姿は頼もしい。

出会い、死という形で別れを繰り返すが、新しい命に世界を託していくような希望的観測もできるし、今の人間という生命体の形では、変わりゆく世界には対応できないようなブラックで皮肉めいたところも感じられ、解釈は難しい。
ただ、荒野のように廃墟となった世界において、変わらぬ空の青さの下で時を終えるさちの姿は、私には未来への希望を強く感じる。

切れ目なくテンポよく続く、会話と状況描写。
4人の統制された動きと掛け合いは圧巻である。
今回はCバージョンを拝見したが、この他に3パターンあり、配役がすべて変わる。
全役者さんは、その組み合わせで必ず3役をこなすようになっているみたい。
他の役での心情も理解した上での各バージョンでの演技となり、そこがさらに連携を高めているようだった。
ただ一人の一生を描いているだけだが、人のエネルギッシュな力強さを感じる作品のように思う。

|

« 幸せ最高ありがとうマジで【劇団土下寝】120506 | トップページ | C.T.T. Osaka Trial No.12【C.T.T.大阪事務局】120509 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 漏れて100年 ver.c【裏ワザ】120507:

« 幸せ最高ありがとうマジで【劇団土下寝】120506 | トップページ | C.T.T. Osaka Trial No.12【C.T.T.大阪事務局】120509 »