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2012年4月 9日 (月)

野獣が蜂蜜を舐める時【free&easy】120408

2012年04月08日 シアターOM

3回目の観劇なのだが、ずいぶんと作品の雰囲気が変わった。
以前はもっと舞台が重苦しかった。そして、悪い方向へと進んでいる不安や暗さの中での観劇だった。
そこに相反する形で役者さんが明るく軽い感じで演技をされるところに救いを求めていた。
設定や相関は、ひたすらまくしたてられる膨大な言葉のセリフで理解させられる。
これが独特の空間を生み出し、観るというより、強制的に観させられている感じだった。

今回は依然、特有の毒ッ気が残るものの、あらゆる点で光や優しさが感じられ、その重苦しさがかなり緩和されている。
設定や相関も一つ一つのエピソードを丁寧に描いて理解させていくスタイルだ。
ただ、これが、ここに特徴的だったどこか攻撃的な印象を薄れさせ、淡々とした話の展開になっているところも感じられる。そのため、2時間半の公演だったが、途中、少々退屈したところもある。

話は死を理解するために苦悩する人の姿を描いている。
その考えや行動など、手段は登場人物それぞれで異なり、誰が正しかったのかは分からない。
でも、それぞれが答えを見つけ出し、自分の生を見つめ直すようなラストだった。
設定に震災を感じさせる構成にもなっている。
何で自分の愛する人は死んでしまったのだろう、どれほど苦しかったのだろうか。死はどんな時でも不条理である。それを理解するためには自分はどうすればいいのだろうか。
死に惑わされ、立ち止まることを余儀なくされている人達。現実の世界においても、今、そんな人がたくさんいると思う。
答えは見つからないが、この作品のように、同じような人達と触れ合って死を昇華し、自分の生を見てくれている人がいることを理解できるなら、そこに何かしらの答えは生まれるかもしれない。

舞台は地下の墓場という意味を持つカタコンベという廃墟ホテル。
ホテル周辺は放射能で汚染されており、人は寄りつかない。
そこには謎の女性オーナーの下で、4人が住んでいる。
ホテルではあるものを作っている。というか、必要であるかのようにそのホテルに生育している。
人を死に至らせる毒草。
4人はその死という甘い匂いに寄せられてやってきた人達。

4人はそれぞれ大切な人を無くしている。
自殺であったり、やむなく死に至らせるしかなかったり。
その不条理な死を理解しようと、自らも死を選択するという考えで集まって来たようだ。

そんなホテルに色々な人がやってくる。
脱獄した殺人犯。
親の死で自暴自棄になっている少女、その子をナンパした放射能汚染の問題を真剣に考えているチャラい男、少女を心配して駆け付ける友達。
ホテルの噂を聞きつけ、探りにやって来た自殺問題を考える政治家と秘書。
ホテルに住んでいる人の知り合い。
工場経営を失敗した夫婦と従業員。

死を理解できずに、同じ死を選択する者。
その考えが理解できずに生を主張する者。
様々な死に対する真剣な考えが飛び交う。
震災などでいう、被災者とそこからは離れた人における、現状の苦しみへの考えの相違みたいなものにも通じるかもしれない。
同じ状況にならないと苦しみは分かち合えない。だからと言って、自分が被災することもできない。そんな時に出来ることは何なのだろうか。何か出来るなんていうのも思い上がりだけど、何もしなくていいとは決して思っていない。

ラストは、死んではいけない、生きなくっちゃみたいな単純な答えで締めくくってはいない。
生へと考えを転換した者もいるが、そのまま死を選択した者もいる。
ただ、死という甘い匂いに誘われて、漠然と死を選択していた者たちが、しっかり死を見つめ直した上で、各々の誇りある選択をしているといった感じ。
そして、死を選んだ者も残る人達への生への願いを感じさせている。
毒のあるところが、このあたりは残っており、単純で薄っぺらい作品にはなっていない。

大切な人を失う死という事実は理解し難い。
生きていくのも甘くないし、死ぬのだって甘くない。
何にせよ、その事実を見つめ、自分の道を進まないといけない。立ち止まったままでは、何もできない。
そのためにはどうすればいいのか。周囲の者はどうしたらいいのか。
それは、このホテルでの空間のように、互いの想いを吐き出せる環境において、そこで人と関わって生きていることを理解することであるような気がする。

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