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2012年4月 4日 (水)

<DVD>ジプシー【劇団コーヒー牛乳】

この劇団名ではラストになる公演のDVD。
お友達からお借りしての鑑賞。
結論から言えば、このDVD、また大阪で公演される時に販売していただけるなら、間違いなく購入しますよ。

観終えてから、当時の感想を少しばかりネットで検索してみましたが、主軸が見えにくい、詰め込み過ぎ、ふざけすぎなどのマイナス要素は確かに納得。
ただ、それをあまり強く感じないくらいに少々無理矢理感があるものの、分かりやすい構成で進む話を楽しめたように思います。

作品はシェイクスピアが死んだ娘のために書いた物語を、娘と一緒に事故で死んでしまった仲間たちの幽霊とともに演じるという劇中劇のスタイル。
醜いアヒルの子、裸の王様、東の国の魔女、青ひげ公、シンデレラ、赤ずきんちゃん、キリスト、魔女狩り・・・など多くの原作を匂わす要素を散りばめながら、シェイクスピアらしい不条理な悲劇に仕上がっています。
だから、ラストはハッピーエンド好きにとっては非常に厳しい。
ただ、これは劇中劇の話です。
劇の方では、この不条理な悲劇を、現実に不条理な事故で死んでしまう悲劇に見舞われた娘をはじめ、その仲間やシェイクスピア自身が演じることにより、その悲劇を昇華しているかのように見えます。

人の創作は色々な考えがあるのでしょうが、私は言葉は悪いですが、所詮、虚構なんだから楽しく行こうよ、綺麗事でも構わないからハッピーエンドにしようよとよく思います。
なぜ、悲劇を描くのか。
そこには、何も人を苦しませたり、絶望に陥れようとするものばかりではなく、この劇中劇の登場人物のようにその悲劇の中から、悲しみを感じとり昇華させ、それを新しい希望につなげていくことが出来ると考えているからなのかなんてことを思いました。
そう思うと、単純に悲しい結末だから嫌とかは言えないなと思うのです。
この作品は、そんな優しい想いが込められた悲劇を面白い構成で希望の物語として描いているように感じます。

話は1年前の娘との舞台に立たせるという約束を守るため、シェイクスピアが創作した物語をその娘、そしてその仲間たちと演じるところから始まります。
上記したように、娘は学校が火災になり、もう死んでいます。その仲間たちもその時に一緒に死んだ者たちです。
ここは中盤に明かされるのですが、思わせぶりな口調や動きで分かる人は分かったかもしれません。
シェイクスピアはこの作品を最後に娘を成仏させるつもりでいます。
そんな悲しい娘へのレクイエムのような物語が始まります。

第1幕。
平和に暮らす西の国。
裸の王様にはかわいらしい娘が一人。その付き人にシェイクスピア。
ある日、東の国の青ひげ公に国は狙われ、王は殺害。娘を付き人が何とか逃しますが、その行方は分かりません。

第2幕。
記憶を失った娘は、ある日、悪者に追われるところを青ひげ公に助けられ結婚。
しかし、その腹には森の妖精との子供が。
娘は腹を裂かれて殺害。生まれてきた子供はひどいブス。と言うか、化け物。
豚小屋でブスコーと名付けられ育てられます。

時は経ち、青ひげ公には綺麗だけど心の醜い娘が2人。
隣の小さな国。
出入りする美しい娘のいるジプシー一団や頼りない偽魔術師が平和に暮らしています。
青ひげ公はその国の王子と娘を結婚させようとします。
しかし、王子はその心の醜さを見抜き、それを断ります。
そして、戦争に突入。
王子は囚われ、そこでブスコーと出会います。
心の綺麗なブスコーに対して王子は好意的。いつの日かここから逃がしてやると約束。ブスコーも王子に初めての恋心を抱きます。
一方、王子の臣下、ジプシー、魔術師は王子を奪還する計画を立てます。
王子はブスコーと共に脱出。途中、出会ったジプシーの綺麗な娘と王子は再会。愛を語り合う中、ブスコーはそれに耐えれず姿をくらます。
青ひげ公はついにやられます。やられ方はあまりにもひどい。ふざけすぎという感想に一番同調出来る部分です。
王子、そして妃となるジプシーの娘とともに新しい国が始まります。
めでたし、めでたし。

ここで、役者から反論。
幸せなんか無い。自分達は幸せになる前に死んだ。
ここで、火災事件の真相が完全に明かされます。

第3幕。
国も復活。
喜ぶ民衆たち。
そこにブスコーの姿が。
気味悪いその姿に、民衆は大騒ぎ。
再会する王子とジプシーの娘。
あんな化け物と知り合いなのかと問い詰められる王子。
王子の口から発せられた言葉は、ブスコーを火あぶりの刑に。
ブスコーは、キリストのように、残された人達への愛と幸福を祈って灰となります。

火災事件と火あぶりをオーバーラップしているのでしょう。
そこに不条理さを描き、それでも人への無償の愛を捨てないブスコーの姿から、死んだ者たちへの祈りを込めているのだと思います。
そして、シェイクスピア自身の事件への決別もあるのでしょう。
捉え方は分かりはするものの、それだけで納得できるものではなく、もどかしくも切ない気持ちは捨てられません。
救われるのは、この物語の本当のラストはシェイクスピアの娘が追記して創作します。
それは、その灰から希望の花が咲くというもの。
シェイクスピアの死んだ者への想い、そして、虚構の世界とはいえ、不条理な死を憎しみとして捉えず、最後まで人を愛する優しきブスコーの気持ちを自分の物としたことがうかがえるところです。

ブスコーは鈴木ハルニさん。観ないと分からないでしょうが、ブスとかいう代物ではありません。化け物そのものです。ここまでされると、完全に浮きますからどうなのかという思いもありますが、そこは微妙な調整をされていたように思います。ましてや、生舞台だと役者さんの心情はDVDとは比べ物にならないくらいに伝わりますから、きっと大丈夫だったのでしょう。

青ひげ公の西川康太郎さん。いい感じに狂気感やナルシスト感がはまっていました。魔術師、石黒圭一郎さんとの対決は、そこだけ学芸会のようなちゃちさを醸し出しながら、微笑ましかった。私の好きな初演と再演ごんべえなんですよね。違うなあ。あのかっこよさは何だったんだろう。

ジプシー、伊藤今人さん。お~、この頃から踊ってる。LINK'Sでその踊りを堪能した私にとっては新鮮でした。

王子の部下が中山貴裕さん。この方、大好き。何か分かんないけどすごく魅力がある。ごんべえの時とちょっと共通する感覚があって、男気とかを強く感じるのです。

渡辺毅さんが見つからないなあと。他の方のブログを拝見したけど、青装束の人かなあ。本当かなあ。面影が無いんだけど。だとすれば、えらい迫力あるかっこいい人だなあ。最近はちょっと三枚目の印象が強くなっているので。

劇団員以外の方のお名前と顔がまだ一致してないんですよね。
シェイクスピアは岡田一博さんかなあ。ごんべえで拝見したような気がするんですが、今回は西洋貴族みたいな恰好であまりにも印象が違うのではっきりしません。
私が思ってるとおりなら、全体を仕切るみたいな大きなオーラが非常にある方ですねえ。こういう方がいると何だか安心して観ることができるのです。

あと一人、片桐はづきさん。
先日、大阪で箱庭円舞曲の公演に出演されていました。とにかくいい役者さんなので要チェックと言われており、注目していたのですが、その時のイメージとはずいぶん違う。
先日拝見した時は、大人の凛とした美しい女性像で、この作品ではちょっと少年の印象が強過ぎる役なので、まだイメージが掴みにくいなあ。
まあ、他の作品にも出演されているようなので、お顔は覚えたのでチェックしようと思います。

やっぱり、ここは昔から面白かったんだなあ。
早く、また大阪に来ないかなあ。

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