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2012年4月19日 (木)

<DVD>密八【劇団コーヒー牛乳】

次は2008年の作品。
男8人、劇団員だけでの公演だったようです。

話は相変わらず分かりやすい。
途中で源氏と平氏をイメージしてるなと気づくが、裏切ることなくラストもそこに持っていく。
ただ、生死とはなんぞやという諸行無常の世界に引き込むには、少し間に入れている笑いの要素が邪魔しているような気がする。
まあ、そこがこの劇団に魅力だとも言えるのだが、この作品に関してはそのコミカル要素があまり相乗的な効果を発揮しているようには思えなかった。

とは言え、役者さんの魅力はたっぷりで、濃密で躍動的な姿にはかっこよさを感じざるを得ません。
殺陣を含むダイナミックな演出。それに反して、巧みな工夫がなされたきめ細やかな演出も入れ込み、緩急つけた展開に退屈せずに心を舞台に捕えられました。

(以下、ネタバレ注意)

本ストーリーは源氏と平氏のようなイメージで、赤い国と黒い国からなる物語です。
黒い国は赤い国を制圧し、その住民をたたらばという鉄製造所で奴隷として働かせます。一人たりとも赤い国の血を引くものを許さないという徹底的な残虐ぶりで圧政を行います。
赤い国の王様は、数人の戦人と共に農民となって逃亡生活をしながら、復興の時を待ちます。

遡ること数十年前。
赤い国に王子が生まれます。今の王様の弟にあたります。
その赤子は黒い国に人質として渡されますが、黒い国はその赤子を殺そうとします。
西行法師はその子を救い出し、山伏に育てさせます。テンガという名前です。
大きくなったテンガは策略上手で屈強な男に育ちますが、親を亡くした赤い国の子供たちを山で育てるという優しい一面も持ちあわせます。

そんなテンガが、母親を黒い国に殺された旅商人の親子に出会うことから話は進み始めます。
テンガと旅商人、そして、テンガがかわいがる異国から流れ着いて育てている鬼と呼ばれる男。
みんな意気投合し、赤い国の王様とともに赤い国を復興させようということになります。

いよいよ、赤い国復興をかけた戦。
黒い国は逆に制圧されます。
ようやく平和な世界が・・・
ということにはなりませんでした。
赤い国の王様は傲慢になり、黒い国がしたように多くの民を殺戮し、圧政を強います。
また、戦で活躍したテンガを恐れ、彼を殺そうともします。
さらには、黒い国が差し出した赤子までも殺そうとするのです。
まさに歴史は繰り返すです。

テンガ、旅商人の親子、鬼と呼ばれる男はその赤子を救い出します。
数多くの追手に追われ、テンガ、旅商人の父、鬼と呼ばれる男は殺されます。
逃げのびたのは旅商人の息子に赤子だけ・・・

物語はここで終わりです。
旅商人の息子は無邪気で純粋な男です。だから、皆に嫌われる鬼と呼ばれる男とも心を通わせています。
異国から来た鬼は、自分のいた場所はどこまでも草原が続く広大な大地だったとよく聞かされています。
西行法師は、一連の事件を語り継ぎます。人の愚かさ、なぜ生まれて死んでいくのか・・・
そして、最後に海の向こうの広大な国に青き狼と白き鹿がいつの日か現れたことを語ります。

2時間弱の作品ですが、本筋だけなら約1時間ぐらいの物語です。もっと短いかも。
間、間にテレビならCMのように、息抜き時間が入り込みます。それもけっこう長いCMが。もちろん、それは面白いCMであり、これも含めての作品ではあるのですが。
お笑い要素など要らん、話だけを真剣に観るんだという超堅物の方だったら、多くのこのCMのような時間は飛ばしてしまうことでしょう。
そうすると、テレビショッピングのような旅商人親子の掛け合い、面白農民による歌と踊り、そして寸劇などが見れないわけですね。本当におふざけを全く拒絶するなら、一番肝心な戦シーンもです。
ほとんど観るとこないですね。まあ、見所は迫力ある殺陣シーンぐらいになってしまいますかね。
おかしな話ですが、そんな作品です。

個人的には農民による飲み屋寸劇が面白かったです。内容も役者さんの掛け合いも。そして、誰もが思う、ちょっと長いよとツッコませるような計算をしているところが。
戦シーンは、殺陣ではなく、人形劇のようなものになります。それまでダイナミックに男くささを醸し出している方々が、工夫された細かな道具で戦の様子を小さな人形劇で見せているところが非常に楽しかった。
ゴム、クラッカー、ライターなどの小道具を使ったり、ガンダム、ゴジラなどを出してきたりのおふざけたっぷりの時間帯です。

ラスト20分ぐらい。
源氏で言えば、頼朝が義経を殺すような感じでしょうか。
権力に取りつかれた王様である兄が、弟であるテンガを殺すまでの展開は、これまでのおふざけから急変し、兄役の阪本浩之さんとテンガ役の西川康太郎さんの釘付けになるような素晴らしい演技を観ることが出来ます。その動きや表情は、不条理な運命、歴史を深く感じさせ、この話の本質に迫る一時になります。

バランスの問題はありますが、きっと観る者としては、これぐらいの方が舞台には集中できて、結局、話も印象に残るのかもしれません。
さして面白くもない人が延々と本筋から離れたことをされるとうんざりすることはたまにあり、個性的な魅力を持つ役者さんを信じているからこそできる、作品の演出かもしれません。

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