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2012年3月 4日 (日)

The Doll 夜の遠心力バージョン【坂本企画】120303

2012年03月03日 ロクソドンタブラック

連作・MONOがたりシリーズと称して、何か「モノ」をテーマにした短編作品を公演されているみたいです。
今回は人形です。

気軽に短編をみたいなつもりで観に行ったけど、けっこう難しかったな。
人形。人間と姿形が同じで心が無いモノ。
こうした定義をした時に、本当に全ての人間が人間なのか、人形も心を持てば人間になるのではないか、その時、人間と人形の関係は人間同士の関係とどう違うのかなどという考えが浮かび上がる。
これを生きた人形がいるという設定で描いたような作品。
・・・って感じかな。
難しくて感覚的にしか言葉にできない。

(以下、ネタバレ注意。あらすじ、感想ともしっかり書けてはいませんが、チラシ情報が少ないので、公演終了まで白字にします。公演は本日、日曜日まで)

<生者の檻>
捕虜収容所から生還した男に、調査官が収容所での生活の実態を聞き取る。
回想シーンから、その極限状態で人がどのようになったのかを描いている。
4人の捕虜が閉じ込められた牢屋。
見回りに来る看守は、銃を捕虜に一人ずつ威圧的に向ける。
そんな日々の繰り返し。
ただ、なぜか4人しかいないはずなのに、誰もいないところにも銃を向ける。
見えないモノ。これに恐怖して錯乱状態になった捕虜も数多い。
怯えていた4人は、これが看守側のの作戦ではないのかと疑い始める。
錯乱した捕虜は殺せるので、無駄なお金を使わなくてすむ。
4人はこれを逆手にとって、わざともう1人いるかのように振る舞う。
これがいつ殺されるかという極限状態での4人の精神を安定させる救いになる。
やがて、終戦を迎える。
いつの間にか、そのもう1人への思いが膨らんだためか、その姿が本当に見え始める者が出てくる。

もう1人の幻影が人形なのか、極限状態で心を失っている人間が人形と同じだと言うのか。
話は分かるのだが、理解はなかなか難しい。
頭が混乱して、ラストがいまひとつ見えていない。

極限状態におびえ、震えあがる捕虜の1人、水木たねさんの演技がおぞましい。錯乱寸前の状況まで魅せる。
生還した男、中野聡さん。淡々とした口調で状況を語る。その姿が第三者的であり、この人こそ、看守側が仕組んで牢屋に入れ込んだ人形なのではなんて考えもしてしまう。
調査官が奥田宏人さん。聞き取りを進めれば進めるほど、この捕虜たちの中に入っていけていない印象を受ける。捕虜の実態、闇の真相には、外にいた者はたどりつけないという、遠心力をイメージすればいいのか。

<人形の庭 遠心力Ver.>
人形に自分の思ったことを言わせて喜んでいる男。
その男を愛する女。
愛するがゆえに嫉妬をして、人形を否定して男を責め立てる。
思ったことを人形に押し付けているだけだと言う女に男は反論する。
それならば、あなたは同じことを私にしようとしていると。
怒った女は男を殺める。
人形は男に言わされていた言葉を自主的に語り出す。

う~ん、これも難しいんだよなあ。
話はやはり分かりやすく、かなり短めの話です。
心の無い人形に愛する男の心を奪われる悲哀。
遠心力と謳うからには意味があるはず。
何に近づけないのか。男の心にも、心を持ち始める人形にもということか。

終始、表情を出さない人形、自主的な言葉を語り始めてもその表情に変化は無い。
これが男と人形の愛の形を奇妙に感じさせて恐怖感を煽る。北岡悠さん。

<賢者の閨>
骨董屋の主人の店にある日、1人の人間が送られてくる。
人間と言っても、どうも自分ではその認識を持っていない。
主人も人間なのかどうか分からないでいる。
暴れまわって大変。
主人の言うことも聞かない。というか、主人を認識していないようだ。
主人は自らが人形であることを知っている。生きている人形。
人形には反応しないらしい。
人間を認識することは出来るようで、訪ねてくる客には反応する。
訪ねて来る客も、それを人間かどうかは確信できないみたいで、色々なモノとして扱う。
この奇妙な2人の生活を描く。
やがて、心が通じ合った時、人形と人間に同調が生まれる。

ということで、結局、全部難しいんだよねえ。
ただ、この作品は何となく伝えんとしていることが分かるような気がします。
人形は相手にとってどう思われるのか、どういう思いが込められるかで心が生まれる。ここでの骨董屋の主人は賢者と称されるように、人形としての心を持っている。つまり生きている人形。これは人間と等価ぐらいに考えていいように思う。
一方、送られてきた人間は、人間としての認識が無い、さらにはそれを認める相手もいないので、心が無い。つまり人形と同じ。
こんな人間であって人形、人形であって人間の2人に共通点は無いが、主人が送られてきた人間にその認識を植え付け心を与えることで通じ合う物が生まれる。
人形によって人間の人生が変わるところを描いているような気がする。

送られてきた人間が荘司歩美さん。イメージとしては幼少時のヘレンケラーみたいな感じかな。
単なる人形から、心が生まれて人間となる。
この時の無邪気な喜びの表情が素敵です。同時に中野さんの優しいほほ笑みも。

私にとっては、とても疲れた作品。
ただ、十分理解できなかったということで悔しさもあったのかもしれません。
この後のもう一つのバージョンも予定変更して観劇することになります。
それは次の記事で。

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コメント

諸事情で、観劇を減らし、ブログも更新せず、ひたすらだらだらと過ごしています。

ときたま、思い出したように観劇すると、2回、3回と重ねて見たりします。

今回の「坂本企画」は、観劇予定になかったのですが、追加公演があると聞いて、土曜日の夜の「雪の向心力」を見ました。

それで帰ったのですが、「夜の~」が気になって、翌日の楽日の「夜の遠心力」も見ました。

SAISEIさんの見方に同感です。
私はたぶんレビューも書かないと思いますが、一言述べるならば、坂本企画は嫌いじゃない分野だということです。

それと、ちゃんとご覧になれなかった「雪の向心力」の「愚者の鏡」ですが、この数日のうちに誰かがレビューされるでしょうが、簡単なあらすじを述べますね。

「死者の家」の続きの話と考えると単純でして、
髪を売る「女」の子(子孫)と思われる「若い娘」に連れられた「老いた女」(人形師の弟子の40
ん年後)と解釈して下さい。

で、実は「弟子」は、「奥様」(女)の記憶を頼りに、「The Doll」を作ったであろう年代の「若き人形師」の姿の肖像画を作った。そして、その姿を頼りに、「生きた人形 The Doll」を探したのであった。

自らのことを人間だと思っていた「骨董屋」は、なんかしっくりこない自分のことを薄々感じてはいたが、まさか、自分が「The Doll」だとは。

しかし、この「年老いた弟子」が言うことは本当らしい。そこで、「年老いた弟子」の勧めに従い、その地をあとにした。

何十年も老いる事のない自分が、本来「人形」であった自分が、あたかも「人間」として、生きてゆくために・・・


って、感じでしょうか?
簡単すぎますが、なんとか、筋はおえますよね。

余計なことしました。
でも、「雪の~」はかなり良かったと思うので。

投稿: ぶらしん | 2012年3月 5日 (月) 02時14分

>ぶらしんさん

わ~、ぶらしんさん!
ずいぶん、ご無沙汰です。
お元気だったんですかあ。
ブログも更新がなかなか無かったので、すっかり訪ねておらずでして・・・

テノヒラは観に行かれるだろうなと思って、トナカイガリなんかの時はちょっと気にしてたんですけどね。

お久しぶりにコメントいただけて嬉しいです。

あらすじ、ありがとうございます。
やっぱり死者の家と関連してたかあ。
髪売りの女も弟子も世代交代している考えにとらわれてしまい、そこが混乱を招き眠りについてしまいました・・・
そうですね。あの時、髪売りの女はけっこうな歳であると最後いいますものね。
よく理解できました。
そして、骨董屋も最後は自分のことを理解できたんですねえ。

坂本企画、初見でしたがちょっと魅力を感じています。
次回も多分観に行こうかなと。

ありがとうございました。
テノヒラも益々活躍されているようなので、またどこかの劇場でお会いできるのを楽しみにしております。

投稿: SAISEI | 2012年3月 5日 (月) 16時51分

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