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2012年3月 9日 (金)

牡丹灯籠【メイシアター×sunday】120308

2012年03月08日 吹田メイシアター

大胆な舞台美術、話をパズルのように分解してそれをつなげていく展開、役者さんが何役もされる中で統制されたルールの下での動きやセリフ。
sundayらしいと言えば、全くその通りで、今まで拝見したsundayそのものなのだが、今回は違う。
分かる。と言っても完璧に分かったわけではないけど・・・
これまでは、始まって20分で必死の頑張りむなしく、頭の限界に達し、残りの時間で好きなだけ頭を混乱させられてきた。これでも、終わった後は何らかの満足感は残っているのだが、どんな話か説明してと言われたら、無口になってしまう。
話についていけないので、そちらにあせってしまい、せっかくの面白い演出もなかなか味わうことができない。
今回は、その話がよく分かるので、この劇団の特殊な演出をより楽しむことが出来た気がする。

(以下、チラシレベルのあらすじはまあいいとして、舞台美術に関してキーワードを書いてしまったのでご注意ください。まあ、実際に見ないと想像は出来ないでしょうが。当日パンフレットがとても情報豊富です。始まる前に軽く読んでおくだけで、作品をより理解しながら観ることが出来ると思います。きちんと読めば10分くらいかかるので、早目に行きましょう。公演は日曜日まで)

舞台一面に竹が吊り下げられており、うっそうとした竹林をイメージする中での、因果応報が描かれる。

牡丹灯籠ってこんな話だったんだ。
恥ずかしながら、私が知ってるのはその中の一部分だけだったみたい。この歳になるまで何で知らないんだ、私は・・・
浪人、新三郎に恋して、焦がれ死にしたお露が夜な夜な新三郎の下を牡丹の灯籠を持ってカランコロンと音をたてながら訪ねてくる怪談話。
お露が死んだとは知らない新三郎は、そんなお露を受け入れ、密会を繰り返すが、やがて、お露がこの世の者でないことを知る。恐怖する新三郎はお札を家に張り巡らせてお露を家に入れないようにするが、使用人、伴藏の裏切りにより、札は剥がされ、悲劇的な結末を迎える。
私が知っている牡丹灯籠。

実際は、本当に複雑に絡み合う話の中の一部分。
お露は飯島家の娘。その飯島家の当主は、町で絡まれた男を切捨御免で殺してしまう。その男の息子、幸助を奉公人として雇うという仇討ち話。
当主の妾、お国と密通する源次郎による飯島家のお家騒動。
新三郎を裏切った伴蔵とその妻、おみねによる愛執話。
・・・
さらに、最後の方で明らかになるがお国は、幸助の実の母の再婚相手の男の実の娘だったりする。

もう嫌になるほどの因果話が渦巻き、それがどんどんと中心へと向かって行くような感じ。
中心へと収束するというか、そのまま飲み込まれてしまうような嫌な感じだ。
愛やら忠義やらが、欲やら金やら憎しみやら裏切りやらに好き放題に転換されていき、最終的に破滅のエンドへと向かって行く。人の業の深さを嫌がおうにも感じる。
そもそも起点はどこだったのか。どこかに分岐点はなかったのか。いくら考えても、人が生まれたからには、そんな因果はまとわりつくし、そこから逃れることは出来ないようなことを思わせる。
こういった因果応報物語の多くのように、やはり巡り巡る循環からは抜け出せない、蛙の子は蛙みたいな絶望的な考えに至るのはネガティブに見過ぎだろうか。
そんな中だからこそ、一時には垣間見られた愛やら忠義のかけらを大切に、善意的に捉えることに救いを求めたくなる。

目を引いた役者さんは、さすがの貫禄ある方がそろっており、みんなになってしまうので、ここでは2人だけ。

仇討ち話の幸助が赤星マサノリさん。悲しいまでに胸に秘めたる仇への思いと忠義や愛との葛藤。本当にどっかでまあいいっかみたいな感じで逃げてしまえば、こんな悲劇は生み出さないはずなのにそれが出来ない不器用さ。善人なのか悪人なのか、恐らくは自らも理解できなくなるくらいの思いつめた行動。この方のストイック的な雰囲気にぴったりはまっており、かなりの見応え、感情移入が出来る。

幸助の友人、濱本直樹さん(DanieLonely)。友人と言っても、裏切るは何を目的に生きているかは分からないはで実のところは正体不明です。先日、ブリキの骸骨の公演で作品が難し過ぎてしっかり観れてはいないのですが、目は引いており今回ちょっと注目していました。この正体不明の存在の不安感がとてもよく出ています。いったい何をしようとしているのかが見えず、それが不気味な表情にも出ていてけっこう心を奪われました。

話としては相関図が複雑ではありますが、それを断片化して見せる手法が逆に分かりやすくしているかもしれません。
だんだんと繋がっていくというよりかは、感覚的には全てが融合してしまうような感じです。それが、一つの作品のテーマに行きついているようにも思います。
有名なお話を独特の手法で楽しませてくれるような作品でした。

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