箱庭円舞曲 focus#2.5 「庭」 -itinerant mix-【iakuプロデュース】120328
2012年03月28日 commoncafe
売込隊ビームの横山拓也さんが主宰のプロデュース公演。
今年6月に大阪で初公演される箱庭円舞曲のお披露目みたいな意味もあるようです。
箱庭円舞曲は以前、珍しい凡人のDVDを拝見したことがあります。
かなり重く、皮肉めいた作品です。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/dvd-e1fb.html)
横山さんもどちらかというと癖のある毒っ気の多い作品を創られる方。
3本の短編という案内でしたが、かなりきつい感じで、心がモヤモヤするんだろうなと思いながら足を運びました。
感想は、意外にもかなり軽快なタッチ。
と言っても、独特の毒っ気はあります。
かなり爽やかに面白く演じられる役者さんに救われているところがあって、話の内容だけ切り取って見ると、けっこう心苦しく、何やらつらく重い気持ちになります。
全て会話劇ですが、その会話から登場人物の心情を感じ取っていくのがとてもスムーズにできるところが、やはり凄いところなのでしょう。テンポや言葉の使い方がうまい具合に絶妙になっていて、観ている側が自然に引き込まれるようです。
3本とも結婚式に参加する男と女の微妙なやり取りが描かれています。
どこかもどかしくもあり、微笑ましくもあり、物悲しくもあり。
この繊細な男女の心理描写がとてもよく伝わってきて、魅力的な作品でした。
男の庭:須貝英(箱庭円舞曲)×津留崎夏子(ブルドッキングヘッドロック)
結婚披露宴前に女性を呼び出して、出会う男。
新郎は女性の元彼。それを知る男は、何か声をかけておくべきだろうと思ったのだろうか。
きっと女性に気もあるのだろう。
悲しい思いを少しでもさせたくない。自分は未だしがないかいしょ無しの男であるが、あなたにはいつでも幸せにいて欲しい。だから、自分が少しでも元気づけてあげたい。
そして、それをきっかけにあわよくば、付き合えればなんて。
男のぎごちない素振り・言葉が続く。
でもそんなことお構いなしに、女性はあっけらかんとしている。しかも、もう・・・
また、披露宴でと言って別れる二人。
観終えて、男によくやった、立派だったと肩を叩いてあげたい感じになります。
ちなみに、実は3話目にも会話の中で出てこられます。そこで、本当に披露宴でも頑張ったということを知り、ちょっと涙ぐみそうになりました。
ラストでもありますが、そう、こんな時は日本酒だ。しみじみと朝まで飲もうって。
この不器用に頑張る男の心情表現が抜群。須貝さん。素晴らしかったです。
対する女性のあっけらかんぶり。津留崎さん。憎めない天然さが漂っており、それがこの作品を微笑ましいものにしています。
男、悲しい。頑張れ。
女の庭:田渕法明×安元美帆子(sunday)
女に担ぎ込まれる男。
だいぶ酔っている。結婚式で飲み過ぎたみたい。
女はさらに飲ませる。男はイケメン。狙っている・・・
気づいた男と女の会話が繰り広げられる。
男は女が誰だか分からない。女も適当にごまかしているような感じ。
かみ合わない中で、女の男をものにしてやろうとする攻撃、男の本能的なかわし。男の女の正体を突き詰める鋭い攻撃、女の天然ぶった計算高いかわし。
このやり取りが、あまりもはまっており、面白くて仕方ありませんでした。
ガツガツいく女性、安元さん。食われそうになりながらも必死に逃げる、田渕さん。
何やら、野生のライオンとインパラみたいな感じ。
最後はインパラが機転を利かせて、脱出成功。
草原にたたずむライオンのように、どこか自己反省しているかのような、女性の寂しげな表情が印象的。
この顔を見せれば、男やられるのに。
こちらは、女が悲しい。頑張れ。
一人の庭:酒井善史(ヨーロッパ企画)×片桐はづき(箱庭円舞曲)
結婚式終了。
二次会は何となく嫌で、とりあえず抜け出す二人。
二人は元カップル。
とりとめない会話。何か探り合いをしているかのような微妙な雰囲気が醸し出る。
女は結婚式でブーケが必ず回ってきてしまうけど、いつまでたっても幸せを掴めていない現状を自虐的にほのめかす。
男にはもう彼女がいて、まあそれなりにうまくやってるのかな。でも、強い押しがあれば、何か変わるのかな。
結局、何か進展があるわけでもなく、二人は二次会に。
女性の心情の揺れ具合がもう絶妙。片桐さん。
男、あのさあ、気づいてないのか、気づかないふりしているのか、でも、何か言葉あるだろうなんてことを割り込んで説教してやろうかなと思わすような演技。酒井さん。
東京で観劇をされている方から、箱庭が大阪に来たら、片桐さんに注目せよと言われており、今回はDVDでは数回拝見しているものの、生では初めてなのでしっかり見ていました。
確かに魅力的な女優さんだ。
鋭く据えた目が印象的で、その中で微妙な心情を優しく崩した表情で表現される。その存在感はとても素敵。
この作品は店を去っていく二人の姿が悲しい。何かきっかけがあればなあ。うまくいかないよなあ。盛り上がる二次会の中で元気に振舞う二人の姿を想像すると、心がちょっと苦しい。
どれも非常にいい会話劇。
その心情表現を会話からだけ引き出して巧みに見せてくるのは素晴らしい。
箱庭、楽しみですねえ。
6月。6月行かなくてはなりません。
ただ、こちらの本公演はきっと重く苦しいタイプの作品のような気がする。
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