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2012年3月31日 (土)

ようこそガンダーラ温泉【かのうとおっさん】120330

2012年03月30日 インディペンデントシアター1st

面白いとかいうレベルを超えている。
かのうとおっさんの公演、そして、関西に名だたる名面白役者さんの客演。
期待しないわけにはいかず相当にハードルを上げて臨んだが、はるか上空を好きなように飛ばれていた。
とんでもなく魅力溢れる方々だった。
日本が笑いを禁じる国にでもなれば、真っ先に処刑されるだろうに。

5本の短編集だが、どれも秀逸だ。
各作品、キーになる人を中心に全員でその周囲を固めた絶妙なチームプレイで笑いをさらっていかれる。
演劇らしく、全体的な構成にまで巧妙な仕掛けをしており、公演自体のクオリティーが非常に高い。

あらすじ書いても仕方がないので、覚書と目を引いた役者さんへのコメント。
出来ることなら、面白そうだと思ってもらい足を運ぶきっかけになって欲しいが、作品の面白さを説明するのは難しそう。
何とかこの面白さが伝わらないものか。

「山田中学校青春記」
ある田舎町の中学生の様を描いた話。
今から思えば何が楽しかったのか、くだらないことをしては盛り上がる男子中学生。
恋愛話に花を咲かせる女子中学生。
そんな中学校に東京から転校生がやってくる。
平穏だった生活は脅かされ、やがて世界を変える事件へと・・・

暗転から、いきなり30オーバーの役者さんが制服を着て勢ぞろいする。
当日チラシに全員30オーバーって書いてあったけど、大西千保さんもそうなんだ。え~、何かショック。
世の30代の概念を覆すくらい可愛らしいけどな。まあ、それはいいとして、この瞬間だけでもう笑いを誘う。
いかにも中学生らしいバカなことを連発するガブリエルさん(ego-rock)、いつもながらのクネクネした愛らしい笑顔でいじめられキャラを演じる有北雅彦さん。飄々としながらダークさをほのめかす嘉納みなこさん。何の根拠があってあんなに自信満々にそびえ立たれているのか、是常祐美さん(シバイシマイ)。
ナレーションを兼ねてうまく様々な状況を笑いにもっていく山田まさゆきさんがとてもうまい。
スカートめくりやらエロ本やら、男なら誰しもが経験するバカだった中学生時代を思い出すようなエピソードがいっぱい。見どころは、この歳になってもいまだめくられたスカートの中身には必ず目が行ってしまう悲しい自分を再認識するところにある。

「恋愛ふきこぼれ注意報」
大学でエリートとして生きてきたが、妙齢になり追い出されてしまった女性の下に現れた中年男性。
妻子いると分かっていても、その優しさに惹かれていく。
不倫。その行きつく先は・・・

大沢秋生さん(ニュートラル)、遠坂百合子さん(リリーエアライン)の独断場。
実はこんな面白いことを平気でやってのけられる方だとは知っていたが、私のイメージでは、お二人とも澄んだ透明感ある作品を創られる方。
ドロドロした話の展開の中で、好き放題に振舞われるお二人の姿には圧倒される。
大沢さんは、中年男性のいやらしくも汚い様を露骨に演じる。
遠坂さんは、世間知らずの天然女性をシュールなボケを組み込みながら表現。その姿は、とてもかわいらしく見えて微笑ましい。
スーパーの店員、男の妻子など、周囲のキャラも負けじと面白いキャラとなっている。

「花のモン・パリ」
ある町にやってきた色男、ドンファン。
町中の女性を虜にするが、元々人気者だった男の嫉妬はおさまらない。
ついに決闘に・・・

ここは是常さんの独断場。
このキャラは初めて拝見したが、今までどこかでされたことがあるのだろうか。
キャラを自分のものにしてしまう貪欲さにも程がある。
これで色男キャラを今後見るときは、ドンファン基準になってしまう。
ライバルの男をナルシスト風に演じるガブリエルさんも光る。どこか、所属されているego-rockの匂いを感じさせるところも違和感がなくて見ていて安心感がある。
周囲はドンファンやライバルの男を盛り上げるダンサーとして振舞う。かのうとおっさんの十八番、ぐだぐだした面白さを逆手に取った緩いダンスが笑える。
あと、ここでも大西さんが狂おしいぐらいの可愛らしさ。

ここで、間にアドリブ芝居を入れ込むサービス。
立ち食いソバという設定だけで、5分をかのうとおっさんが演じる。
頭の中身がどうなっているのかを調べたくなるくらいの展開。
嘉納さんは間違いなく天才であり、それに完璧に答える有北さんの力も凄い。
笑いよりも、お二人のコンビが絶妙であることを知らしめる5分。

「炎のショー・ウーマン」
なぜかしゃべらない女性ダンサー。その付き人の男。
付き人はダンサーがしゃべらなくても、その心を理解する。
互いに必要とし合う仲。
ある日、男は実家に戻らないといけないことをダンサーに話す。
でも、戻りたくはない。ずっとダンサーとともにいたい。そんな気持ちも強い。
ダンサーは男に対して・・・

この作品だけ、温かい話になっている。
ダンサーの松本絵里さん(コレクトエリット)の優しい雰囲気にフィットした話。
山田さんも、他作品ではかなり軽薄でダークな男を演じるが、ここでは優しい男だ。こうなると、好青年に普通に見えるので不思議なものだ。
ダンスシーンは所属されるコレクトエリットそのものの雰囲気が醸し出る。
どう言ったら分からないが、身体全体であらゆるものを表現しようとするような神秘的な美しさが感じられるダンス。さんざん、目を引きつけておいて、すました顔で舞台を去る。
ここではコントなので笑えるが、この劇団の本公演ではこれがしゃくにさわるくらい憎らしく、幻想的な世界を創り出される。

「ようこそガンダーラ温泉」
とんでもない田舎町に存在する謎の温泉。
そんな温泉を目指してある女性が旅に出る。
そこでは・・・

話自体は、温泉地を探し出すまでに女性が様々な人と出会い、ごちゃごちゃするもの。
その温泉地に隠された謎が、前4作品全てに通じているうまい設定。
キャラもそんな作品に登場した人物が次々と登場する。
あまりにも面白くて、時間が経つのが早く感じられたのか、そんな登場人物が今や懐かしい気持ちで見る。
公演の集大成として、この作品をこんな形にするという発想は素晴らしい。
最高に満足して劇場を後にできた。

面白過ぎる公演でした。
その一言に尽きる。

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