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2012年3月17日 (土)

赤壁【劇団ちゃうかちゃわん】120316

2012年03月16日 大阪大学豊中キャンパス 学生会館2階大集会室

第20期生の卒業公演。
出演者の方はうんこなまずや有馬九丁目やらでお見かけしたことのある方が多い。
なかなか顔と名前が一致はしていないが。
普通の人の中にキャラの強い人がいれば目立つ。ここはみんなキャラが立ってるので、狂人レベルでないとなかなか覚えられない。

劇団が作品を創る中で、追い詰められていく様をホラー調に緊迫する演出で描く。
卒業公演には、あまりにもふさわしくない話だが、逆に劇団の演劇に対する真剣な取り組みが浮かび上がる仕上がりになっている。
まさか、この作品のようなことはしてないだろうけど、何で演劇してるのだろうと考えたり、ぶつかり合いや自己批判はこの4年間にたくさん経験されているだろう。
この作品では追い詰められた劇団員が次々と消えていく。
しかし、ラストは残った一人を見守る人達の姿で締めくくられている。ラストシーンは単なる一人芝居には感じられない。劇団員全員を代表した演劇に対する答えみたいなものだろう。
当日チラシに書かれているように、一人も欠けずに卒業公演を迎えたことが、ご自分方をこの作品自体を超えた存在として誇りに思っていることへの表現のように感じる。
この劇団らしい卒業へのけじめとも言えよう。

劇団がその存亡をかけて雪山合宿した際の出来事がホラーチックに描かれている。
最高の作品を創り上げるために、演出は劇団員にダメ出しをする。
それはどんどんエスカレートし、作品に対するダメ出しから、演劇に携わることへのダメ出しにまで変わっていく。
その様は、まさに日本赤軍のたてこもり事件であり、総括のごとき、劇団員に自己批判させ、精神的に追いこんでいく。いい作品を創るためという大義名分を掲げて。
その行きつく先は・・・

劇団が創ろうとしている作品がなぜか闘牛士のお話なのだが、不条理な闘いや愛などを語るシーンが山小屋で起きている出来事とオーバーラップするところがあり、ちょっとしたメタフィクションのようになっている。多分・・・
劇団員は次々に消えていく。
一人残った演出が最後にする芝居が、この山小屋での出来事の真の想いを溢れんばかりに演じている。
複雑と言えば、複雑でよく分からないところもあるのだが、感覚的に何となく流れもその構成も理解できるといった感じである。

前半はそれほど緊迫感は無かった。
演出の威圧的なダメ出しもどこか楽しく対応されているところがあり、はさみこまれるダンスなども相まって楽しいとまでは言わないが、まあ気楽に観れていた。
後半はもうピリピリである。
狂気の中で追い詰められていく緊迫感は半端じゃない。
もうダンスされても、エンタメとしては見れない。
自己批判させられるシーンなどは、ちょっと目を背けたくなるくらいである。

狂気的になった演出が、田中めぐみさんと繁澤邦明さん。
田中さんはこの作品の作・演。すごいもの創るものだ。さらに演技が怖い。狂気の中に女性の要素が入り込む。言葉にすると軽くなってしまうが恋愛感情みたいなもの。赤軍事件も確かそんな要素があるんだよね。それに対する嫉妬のようなものも見え隠れするヒステリックなキレ方が非常に怖い。こうなると、カーテンコールで笑われていても何かもう怖いイメージがぬぐえない。
繁澤さんも怖い。こちらは責任感とか使命感という大義名分に洗脳されて狂気化していく様がよく表現されている。心の奥底に潜む不安を押し殺しての威圧というのがよく分かるシーンがあって、そこでは情けない姿をさらけ出す。心情変化がとても分かりやすい。

あれえ、会計と逃げ出した演出家は誰だっけ。
中根宏樹さんと秋吉慎也さん。区別つかなくなっちゃったよ。役名忘れてしまった。
どちらも共通点があって、学生とは思えない貫禄なんですよねえ。
逃げ出した演出家は後に死体で登場されるんだが、これがかなり印象的で。本当の死体みたいで気味悪かった。
会計は自己保身のためにいっぱいいっぱいになってしまう姿、殺めた劇団員の幻影に怯える姿が真に迫っていた。

う~ん、男がぐちゃぐちゃになってるなあ。よくこうなるんだよね。女性はまず覚えるんだけど。
卒業公演だから、全員にコメントとか思っていたが、当日チラシだけではよく分からん。役名をしっかり覚えてないのが災いしました。違う人のことを記しているかもしれない。申し訳ない。
北村昭彦さん。鼻毛、耳毛の人だよね。この方が普通に見える。この緊迫感の中ではオアシスみたいな感じ。
東口恭大さん、山中淳平さん。
東口さんは絶対どこかで拝見していると思ったら、2年前のスナックmanjiだあ。これ、すごく面白くて覚えていたんですねえ。今回も似た感じでいい雰囲気出されています。
山中さんはちょこちょこ入れてたセリフが面白かった。実はこの作品あまり笑えないので、こういうところは非常に助かります。

最後の方まで生き残ってヒロインといい感じなのが、祐村渥人さん。この方、DEWさんだよね。先日のDEWプロではあまり演じるのを見れなかったからなあ。ずいぶんと繊細な演技されるんだなあ。茫然としているところなど、いい表情されている。

早くに殺されてしまう、加古雅樹さん。男前ですな。小ささを活かしたネタで最初の方で笑いを取りながら、ボコボコにされたメイクで亡霊として登場。なかなかのインパクトで一番目を引いた役者さんかな。

早くから演出家と一緒に逃げてしまう片山由佳里さん。ふ~む、この色濃いキャラ揃いの劇団にも普通に可愛らしい方がいらっしゃるんだあ。この人はどうなったんだろう。

逃げ出して戻ってきたら・・・というようなヒロイン役、藤本梢子さん。作品中の関西弁丸出しの役どころはちょっと笑える。作品が作品なら、かなり面白役者さんだったのでは。その真逆に山小屋の中では怯える演技が光っている。

これで全部11人。
後は、舞台監督が宮沢友香里さん。音響・映像が藤本拓さん。
演劇関係者なら、それぞれのポジションでのご活躍にコメントできるんですけどねえ。素人なので役者さんしか見れない。その役者さんですら、上記のようにあいまいなので・・・
ただ、挿入される音楽は音響さんの仕事なのかなあ。とても雰囲気いい音楽でしたね。私は音楽聞かないのでよく分からないのですが、シーンに合ってるなあとかいうぐらいは感じれるので、その点ではとても満足。ちょっと音大き過ぎて役者さんの声が聞きとれないところがあったのはどちらが悪いのかな。
舞台監督さんは何でも屋で大変らしいですねえ。最近、お知り合いになった年配の舞台監督さんが役者さんはじめ、全てのスタッフの動きを把握した完成脚本とやらで振る舞わないといけないので全部を知る必要があるとか言われていました。舞台上の役者さんを危険から守るのも仕事らしいですが、荒くれ者が多そうなこの劇団を仕切るのは大変そう。今回もドリルとか持ち出してたし。

ここは相変わらず奇抜な発想で作品を仕上げてこられるので、完璧な把握はとても出来ませんが、感覚的に楽しめました。
演劇に今後も関わるのかどうかは知りませんが、自らの経験してきたことをベースに演劇の魅力をこの劇団のスタイルで真剣に伝えようとしている作品だったように思います。
出来ることなら、今後も大阪の小劇場の舞台に、皆さん、現れて欲しい。
まだ覚えきれていない人がたくさんいますから、私の頭にインプットされるまで、お姿を拝見し続けられればと思っています。

後、作品とは関係無い覚書き。
楽しく拝見した後、携帯見たら不在着信に留守録。
聞けば、母親からしんどい、助けてというメッセージ。
急いで帰って、救急車。初の救急車。
そうなんだよなあ。おとついの夜中に体調悪くて、夜中に急患で車で運んだのでした。
その後、まあ家で寝たきりになっているので大丈夫だろうと余裕かまして観劇していたら、このありさま。
結局、入院になって、その準備に追われる。
おかげで、この日、次の日の予約を全部キャンセル。大迷惑をかけてしまった。
毎週末は必ず観劇を数本するのですが、この週は恐らくこの1本で終了。貴重な1本になりました。
このブログは入院先の病室で暇をもてあます中で書きました。
まあ、思い出に残る作品となりました。

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コメント

こんにちは☆
卒業公演だったんですね~

うちも学生さん数人が巣立ちます(ρ_;)
またいつかどこかで出会えたらいいなと思いますね。

大変だったんですね。
そんなメッセージ入ってたら心臓が痛くなります・・・
お忙しいかと思いますが、SAISEIさんもお体に気をつけてください。

投稿: まゆ | 2012年3月17日 (土) 13時29分

>まゆさん

また会えるだろうと思って別れて、ずっと会えてない人がたくさんいるね。
卒業シーズンは、新たに別れる人と同時にそんな人のことを思い起こす時期でもありますね。

今、妹と交代で付き添いをしています。
もう疲れるわ(。>0<。)

落ち着いたら、どっか遊びに行きましょう。
本当は京都の花灯路にでもお誘いしたかったんだけどなあ(ノ_-。)

投稿: SAISEI | 2012年3月18日 (日) 11時04分

お疲れ様です。

花灯路って何でしょう???

SAISEIさんにお会いしたかったなあ(ノ_-。)
お誘い待ってます

投稿: まゆ | 2012年3月18日 (日) 21時52分

>まゆさん

知恩院の花灯路、知らない。
明日までライトアップされてて綺麗らしいんだけどね。
前に言ってた肉の懐石に一度、連れて行きたくて。

とりあえず28日の原稿締め切りが片付けばなあ。
また、連絡します。

投稿: SAISEI | 2012年3月20日 (火) 01時23分

ツイッターで見かけました!
すごくきれいでいいなぁと思ってたんですが、それだったんですね。

頑張ってください☆

投稿: まゆ | 2012年3月20日 (火) 17時51分

>まゆさん

う~ん、仕事が詰まって、とてもライトアップを楽しめるどころじゃなかったな。

早く落ち着きたいものです。
あと少し。

投稿: SAISEI | 2012年3月21日 (水) 19時11分

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