ブサイクハニー ベイベー【ドキドキぼーいず】120315
2012年03月15日 元・立誠小学校 講堂
先日の京都学生演劇祭でも話題になっていた劇団。
残念ながら見逃したので、このドキドキぼーいずの怒狂試しと銘打つ公演を観劇。
ポップなんて言葉が似合う感じかな。
エンタメという言葉の定義が分からないが、私の中ではもう少しダンス要素が入っているなら、エンタメ作品で楽しめると記すところ。
明るく楽しくの雰囲気は抜群で、何より個性的で色濃いキャラが特徴的。
自由に舞台を駆け回る楽しい役者さん方の姿を楽しむ。
(以下、ネタバレ注意。公演が来週火曜日まで続き、かつ4月には京都芸術劇場で再演もあります。そのため、白字にすると戻すのを忘れるのでそのままにしています。お気を付け下さい)
不細工アイドルユニットの誕生から終焉までの、栄光と挫折を描いている。
名プロデューサーの下、カメラマン、AD、メイク、司会者が集まって、時代を風靡した番組。
一人のアイドルを掲げ、その番組の視聴率はとんでもない数字を叩き出す。
そんな番組も、そのアイドルが生放送中に襲われるという事件によって放送休止。
すっかり廃れてしまった。
起死回生を狙って出された案は、コンプレックスを持つ不細工な女の子を集め、アイドルを目指させるというもの。
不細工な子たちが必死に頑張る姿をお茶の間に配信して、同情に近い気持ちを揺さぶろうとする魂胆。
早速、コンプレックスをそれぞれ持っているアイドル志望の女の子6人が集められる。
そんな子たちを使って、芸人顔負けの危ないゲームをする番組は大人気に。
お茶の間の愛情を手にして輝き始める不細工アイドルたち。
しかし、それは長くは続かない。
アイドルユニットたちの間で、そのアイドルを目指す貪欲さに温度差が出始める。
それはスタッフの間でも同じ。
マンネリ化は避けられず、それを打開する案はことごとく失敗し、最後は全員を離散させるような状況にまで追い込まれる。
一世風靡したアイドルたちも、いまやそれぞれの道でそれなりの幸せを掴んでいる。
ラストはその幸せを良しとして甘んじて生きようとする姿を映し出す中、たった一人の元アイドルがその幸せに疑問を持っているのか、踊らせた私たちへの冷たい視線を見せながら栄枯盛衰の姿を見せる皮肉な終わり方である。
キャラは上述したようにかなり特徴化されている。
不細工アイドルユニット。
不細工と言っても一人を除いて、実はなかなか可愛いところはリアル感に欠けているが仕方ないか。本当に不細工を集められてもそれはそれで困るし。
お尻のでかさにコンプレックスのあるアイドル候補が福田きみどりさん。田舎から出てきてこの話にのっかって栄光を手にする。リーダー的存在であり、最後までユニットがもう一度輝くのを捨てれなかった子。無邪気にみんなで頑張ろうとユニットを盛り上げるあの明るい笑顔とラストの私たちに向ける冷たい視線は、この一連の話における自分への見つめ直しと不条理さを描き出している。
小さいのが、吉田穂さん。元グラビアアイドルからの転機として活躍。大胆な水着姿で元気に暴れまわる。芸能界の人を平気で捨てる姿を経験しているためか、シビアなふるまいである。
口が裂けてる、椎名翔一さん。まあ、女装ということであり、唯一不細工と言えばこの方が当てはまる。キャラを活かした思い切りのいい演技。
髪が長い霊感少女、中尾恵さん。おどおどして、いいように弄ばれる気弱さと憑依してキレキャラになる切り替わりは見どころの一つ。
出歯の細見祥子さん。キャラとしては一番まともな方。普通に可愛らしく、ただ流れでこの事件に巻き込まれたかのような感じで、一時の思い出ぐらいにしか打撃を受けていない。
吊り目の千代花奈さん。番組が世間を騒がしていた時に掲げれていたアイドル。その後、このユニットに自ら入る。流れに身をまかせながらも、自分の道は常に探っている。芸能界で生きるための貪欲さを描いている。相当、ガラの悪い演技も見もの。
もちろん、テレビスタッフもみんな、負けじと色濃いキャラに扮する。
プロデューサーが、本間広大さん。この方が作・演ですね。人の気持ちは二の次。目の前にある番組を成功させるためにどうすればいいかしか考えない冷徹さを醸し出す。演出だけに、劇団でも実はそんなふるまいをしていたりして(笑)
メイク、福井俊哉さん。役名がゲバラ。ずっとデバラだと思ってた。見たら分かります。なかなかのお姿で、しかもオカマキャラなので見てるだけで笑えます。
司会者、上蔀優樹さん。弾けてます。キャラも独特ですし。その姿そのままに舞台を本当に飛び跳ねています。
カメラマン、跡見賢太さん。何か笑いを誘う方でした。無駄にかっこつけるところの浅さかなあ。
AD、田中祐気さん。正論を言いながらも、周囲を変えることのできない弱さ。人をまとめるオーラの無さがうまく演じられています。
実は観ていると、途中で飽きそうになってきます。
このアイドルユニットがマンネリ化するのと同じように。
各アイドルのエピソードやテレビ番組のゲーム進行など、長時間見るとどうしても単調に見えがちなシーンが多い。これを面白キャラが補填しているのですが、それでもなかなか・・・
そのあたりで、ちょうど新たな展開を入れて、再度舞台に引きつけます。
手を加える有効な手段も限られて、もうお茶の間を惹き戻せないあたりがちょうど終演。
ちょっとした劇中劇のような状態に奇しくもなっているなあというところがあります。
ドタバタを楽しく描くという点は文句がないですが、やはり、せっかくのこんな話。もう少し、その悲哀や不条理さを浮かび上がらせてくれるとより印象に残る気がします。
ラストがそれを描いているのでしょうが、急展開で持って行き過ぎて、感じ取りにくいように思います。
噂通りのなかなか楽しい劇団でした。
もう一回ぐらい観たいけど、京都は遠いからなあ。それに劇場、寒いし。
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